(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
2017年は日銀によるマイナス金利政策が導入され、住宅ローンに大きなインパクトを与えました。
住宅ローン金利はその後「超低水準」の状態を継続していますが、今後はどのような推移が考えられるのでしょうか。
これから住宅ローンを組む人も、すでに組んでいる人も、今後の住宅ローン動向は気になるところです。
住宅ローンで思わぬ損や考え違いをしないためにもトレンドや今後の動きはしっかり把握しておきたいです。
2018年以降の住宅ローン金利は
まずは2017年12月現在の住宅ローン金利をいくつか見てみましょう。
【金利例】
変動金利 |
全期間固定金利 |
|
みずほ銀行(インターネット専用含む) |
0.600% |
1.205%(35年間固定) |
楽天銀行 |
0.517% |
1.34%(35年間固定) |
イオン銀行 |
0.57% |
0.69%(10年固定) |
返送金利は05~0.6%前後、固定金利でも1.3%台となっています。メガバンク・インターネット銀行・スーパー資本系銀行、全て「超低水準」といっていいでしょう。
2018年の見通しは横ばい、もしくは微上昇?!
2017年の住宅ローン金利は、1月末のマイナス金利政策発表のあと、8月頃まで微減を続け、そのあとは多少の反発を含みながらもおおむね横ばいで推移していました。
これ以上の低金利を望むのは難しく、原則として「よくて横ばい」といえます。
金利上昇の可能性はどうでしょうか?一般的に金利が上がるためには景気が良くなる必要があるため、体感として現状ではいきなり金利が上昇する可能性はなさそうです。
ただし、長く続く「超低水準」の住宅ローン金利に銀行や住宅ローン専用金融機関が耐え切れず金利を上げる、という可能性はあります。
これから住宅ローンを組む人や、返済中の人で変動金利を選択している人は、微上昇は覚悟しておくと安心です。
金融機関にとっては、低金利の限界か?
実は、低金利の続く今、銀行にとって住宅ローンは収益性の低い商品となっています。
そのため、みずほ銀行では地方での住宅ローンの取り扱い中止を発表したほか、三菱UFJ信託銀行でも2018年4月より住宅ローン事業の新規融資をやめるとしています。
収益性が悪いと、金融機関は仮倒れリスクを許容幅が小さくなり、審査が厳しくなります。今後は審査の結果により、返済が厳しいと見込まれる場合は適用金利が高くなることも増えると考えられます。
ホームページや店頭で低水準の金利が提示されていても、それが自分に当てはまるとは限らないので注意が必要です。
なお、銀行業界では統合・再編の波も進んでいます。これから住宅ローンを組むという人は特に、業界自体の動向にも注目しておきましょう。
多様化が進む住宅ローン
住宅ローンの商品性も重要です。特に近年は金融機関ごとの差別化が進んでいるので、自分に適した住宅ローンを選びたいです。
住宅ローンにペーパーレス化の波が
以前は住宅ローンというと、店舗に行き説明を受けるのがスタンダードでした。
手続きも対面、かつ書面で行うのが一般的でしたが、近年はインターネットやマイナンバーカードを利用したペーパーレス化の波が進んでいます。
ペーパーレス化のメリットを3つご紹介します。
①住宅ローン利用者の利便性向上
インターネット上での住宅ローンの手続きが進めば、平日に有給休暇を取得する必要がなくなる、郵送にかかる時間の削減など、利用者(検討者)の利便性が向上します
②書面レスにすることで、諸経費の軽減につながる
たとえば契約書が不要になれば、契約書に必要な印紙税も不要になり、諸経費の負担が軽減します
③金融機関側の経費削減
インターネットを活用したペーパーレス化ならば、対面での対応が減る分人件費の削減につながります。
これらのメリットがありますが、デメリットもあります。それは、対面相談・申込みと違いきめ細やかな対応が望みにくいことです。
インターネット電話やチャットでのやりとりで不便を感じることもあるかもしれません。
スムーズにやり取りするためにも、事前に自分で情報を集めたり、疑問を解消するために知識をつけるようにしていきましょう。
団信のメリットを見極めよう
従来、結婚や子育てなどのライフイベントが集中する30歳代が住宅購入の主力でした。
現在でもその流れは変わっていませんが、近年は40歳代での住宅購入が増加しています。
住宅金融支援機構の『2016年度 フラット35利用者調査』によると、30歳代・40代の住宅購入の割合は以下のように増加しています。
【住宅購入者全体のうち30歳代・40歳代の占める割合】
30歳代 |
40歳代 |
|
2006年 |
59.8% |
18.6% |
2011年 |
52.1% |
21.6% |
2016年 |
44.5% |
24.6% |
住宅金融支援機構の『2016年度 フラット35利用者調査』より筆者作成
30歳代の住宅購入層が減り、その分上の世代の住宅購入が増加しています。
購入年齢が上昇すると、健康の不安も大きくなり、団体信用生命保険(以下:団信)の必要性が増します。
団信の役割とは
団信とは、住宅ローンに特化した生命保険です。
住宅ローンの返済半ばで世帯主であるローン契約者が死亡したときに、団信生命保険に加入していれば住宅ローン残高の死亡保険金が受け取れる、というものでした。
しかし今ではガン特約や特定の病気にかかった場合も保障するケースが多いです。団信の商品バリエーションはどんどん豊富になり、現在では生命保険だけでなく医療・介護・収入保障など、幅広い保険機能を備えたものが多数登場しています。
ただし、団信の保障を手厚くする特約は、金利0.2%程度の上乗せが必要です。世帯の不安要素に合わせてうまく取り入れましょう。
住宅ローンとうまく付き合うには?
住宅ローンの金利がこれ以上下がる可能性は低いです。
手続きや団信についての見る目を養って、よりメリットのある住宅ローンを選びたいです。最後に住宅ローン選びのポイントをご紹介します。
これから住宅ローンを借りるなら
金利は諸費用も含めて考える
住宅ローンを借りるときは、毎月返済額に直結する金利に目を奪われがちですが、諸経費も含めた総額で考えます。
住宅ローン借入時は、本体価格が大きいため、諸経費の額が相対的に少額に感じてしまうこともあります。
しかし、総額で数万円~十数万円にのぼる諸経費は、決して安い金額ではありません。
金利以外の費用にも着目しましょう。
不安に合わせた団信をうまく活用すること
団信は、世帯ごとに適したものがあります。
たとえば、共働きで夫婦どちらが病気になっても返済の負担が重いようならば、団信保険料(金利)が割高になっても夫婦で団信に加入しておくべきです。
逆に、十分な生命保険に加入しているので団信の必要性が低い世帯であれば、団信は節約してもいいでしょう。
世帯のリスクに沿ったた団信を選択しましょう。
住宅ローン返済中の人は
借換も積極的に検討しよう
金利水準が現在よりも高い住宅ローンを返済中の人であれば、住宅ローンの借り換えを検討してみては。
健康上の理由から団信に加入できないと場合は、団信の加入条件が緩和された住宅ローンを選ぶ方法もあります。
引受け条件が緩和された団信は多少金利上乗せ率が高くなりますが、それでもメリットがあるならば検討の余地があります。
仮に金利が0.5%違うと総返済額はどの位違ってくるのでしょう。
【条件:借入額3,000万円 返済期間 35年】
金利0.8%の場合 約3,441万円
金利1.3%の場合 約3,736万円
差額は約295万円になりました。諸経費や、場合によっては団信の金利上乗せを含めても、返済負担が減る世帯も多いはずです。実際に試算して損得を見極めます。
今後の収支の変化を確認
意外と難しいのは、今後の見通しを考えることです。「だんだん子供の教育費が増え、住宅ローンの負担が重くなってきた……。
けれど、どうしていいのかわからない」という人は多いです。
住宅費と教育費の負担が重いならば、繰上返済で毎月返済額を抑える。
ボーナス返済の休止を借入先に相談するなどの対策があります。
大切なのは、返済が遅れる前に対策を打つことです。
一度でも返済が遅れると、借入先からの信用が損なわれてしまうため、信用のあるうちに対策を講じるか、借入先に相談しましょう。
まとめ:ライフプランに沿った返済計画を
金利については、2017年現在「超低金利」状態で、2018年も大きな変化はないと見込まれます。
そのため、金利外の面の重要度が増してきます。
住宅ローンを選ぶ際の商品性のほか、世帯の将来についても考えたいです。
金利からの毎月返済額ではなく、広い目で自身に適した住宅ローンを選びましょう。
文:横山 晴美
ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。
»ライフプラン応援事務所