これから住宅を購入しようと考えている人にとって、金利がどう推移してくのかは、重要な問題です。
金利が上がっていくなら、今のうちに全期間固定金利で購入するのが賢いでしょうが、しばらく低金利が続くなら、変動金利や5年固定金利で様子を見てもいいでしょう。
また、すでに住宅ローンを返済中の人も、変動金利の人は金利動向が気になることでしょう。
そこで金利2019年を振り返りながら、2020年の住宅ローンについて解説します。
2019年の金利動向
2019年の住宅ローンは従前からの低金利路線を継続していました。
主要4行の直近金利をご紹介します。
主要4行 2019年12月金利
みずほ銀行 | 三菱UFJ銀行 | 三井住友銀行 | りそな銀行 | |
変動金利 | 0.625% | 0.625% | 0.625% | 0.470% |
3年固定 | 0.700% | 0.490% | 1.000% | 0.945% |
5年固定 | 0.700% | 1.500% | 0.700% | 0.995% |
10年固定 | 0.800% | 0.790% | 1.050% | 0.650% |
※4行の金利は優遇金利を採用
三井住友銀行の3年固定の金利が「1%」であったり、三菱UFJ銀行の5年固定の金利が「1.5%」であったり、商品によって若干1%超のケースもありますが、ほぼすべての金利が1%未満に収まっています。
続いて、フラット35の金利です。
フラット35 12月の金利(融資割合9割以下)
返済期間 | 区分 | 最頻金利 |
返済期間 | フラット35 | 1.210% |
フラット35s | 0.960% | |
返済期間 | フラット20 | 1.160% |
全期間固定金利は1%超とはいえ、それでも十分に低い金利です。また、より厳しい住宅基準を満たしたフラット35sの適用を受ければ、当初10年間(もしくは5年間)は金利を0.25%引き下げられます。全期間固定金利でありながら10年間(もしくは5年間)金利が1%以下に抑えられるのは大きな魅力でしょう。
改めて、住宅ローン全体として低金利時代が続いていることがわかりました。
消費税10%の影響は
2019年10月に、消費税が10%に増税されました。
増税が住宅ローンに与えた影響はあるのでしょうか? フラット35の金利推移でいいますと、2019年は9-10月に特に金利が下がり、11-12月は揺り戻しが見られました。
増税前の駆け込み需要を取り込むために金利を引き下げたのではないかと推測します。
住宅需要の冷え込みはどうでしょう。
一般に消費税増税前には「駆け込み需要」が、増税後には「需要の冷え込み」が生じるとされています。国土交通省の建築着工統計調査によると、新設住宅着工は2019年7月~10月まで4カ月連続で減少しました(11月29日時点)。
しかし、減少の割合は前回2014年の増税時よりは緩やかだということです。
需要の冷え込みは、想定の範囲内、もしくは想定よりも小さいといっていいようです。
低金利状態はまだ続くと推測
さらに、2020年も住宅ローンは低い金利が継続すると考えられます。その理由は主に「政策」と「景気」です。
金利が上昇するかどうか、金利変動リスクのある「変動金利」と、当初の金利が完済まで続く「固定金利」に分けて解説します。
変動金利
変動金利は短期金利の影響を受けやすい性質を持ちます。そして変動金利の短期金利は政策に左右されます。
具体的には、日本銀行が金融政策決定会合の決定に基づき、短期金利を操作するのです。
現在は金融緩和政策が実施されており、短期金利は極めて低い水準となっています。
2019年12月の金融政策決定会合では大規模な金融緩和政策の現状維持が決められる見通しとなっており、まだ低金利が続くと推測できます。
長期金利は
固定金利が影響を受ける長期金利は、原則として「需要」で金利が決まります。
需要が増える状態とは、「企業の設備投資が盛んになり融資を求める声が多い」「住宅ローンを組みたい人が増える」といった場合でしょう。
大雑把にまとめると、「需要が増える」とは景気が良くなったときとなります。
こちらも、すぐにそのような事態に至ることはなさそうです。
実は、2019年12月現在、日本銀行は長期金利についても低金利の状態を維持できるような政策を行っています。
政策は、10年物国債金利が概ね0%程度で推移するように調整することです。
政府は2%程度の物価上昇を目指しており、それが実現するまでは現状の政策が継続する見込みです。
以上の経済状況を踏まえ、金利が低い状態は続くと推測します。
ただし、これ以上金利が下がることは、考えにくいです。
現状よりも金利が下がるのは、キャンペーンなどを利用した局地的なケースや、借入条件を厳しくする場合など、限定的になると推測します。
2020年に住宅ローンを組む予定の人は、常にアンテナを立て、お得な住宅ローン情報を見逃さないようにしたいです。
なお、日本銀行が政策の路線変更することも考えられます。
日本銀行の金融政策決定会合について、留意しておくといいでしょう。
加えて、日本銀行の総裁が変わるなど、日本銀行に変化があった場合は動向を注視するべきです。
低金利をけん引するのは
低金利が続く中、金融機関における住宅ローンの利益も低くなっています。
逆境ではありますが、その中でも顧客を獲得すべく、各金融機関はさまざまな住宅ローンを世に打ち出しています。
いくつか特徴的なものをご紹介します。
ARUHI
ARYUHIの「ARUHIスーパーフラット」は、自己資金を多くすると、その分金が低くなる住宅ローンです。
また、フラット35はほとんどが買取型となりますが、ARUHIスーパーフラット保証型を用いている点も特徴です。買取型と保証型の違いは次の通りです。
- 買取型
住宅金融支援機構が民間金融機関から住宅ローン(【フラット35】)を買い取るタイプ。基本的に、住宅ローン(融資)回収リスクを負わない。
- 保証型
融資が回収不可(住宅ローンを返済できなくなった)となった場合、住宅金融支援機構が金融機関に対して保険金を支払う、「住宅融資保険」を活用
金利についてもご紹介します。
【ARUHIスーパーフラット】
商品 | 自己資金 | 当初10年 | 11年目以降 |
ARUHI | 4割 | 0.480 % | 0.730 % |
ARUHI | 3割 | 0.530 % | 0.780 % |
ARUHI | 2割 | 0.580 % | 0.830 % |
ARUHI | 1割 | 0.630 % |
※2019年 12月実行金利
※団信不加入、【フラット35】S(金利優遇10年)を適用する場合
フラット35Sを利用しているケースとはいえ、当初10年は変動金利並みの低水準を実現させています。自己資金が豊富な人は、検討の余地があるでしょう。
楽天銀行
楽天銀行の「変動金利(固定特約付き)」は金利が年0.527%(2019年12月)と低いのも魅力ですが、それだけでなく、団信の充実ぶりと借入範囲の多さが特徴です。
- 全疾病特約付き団信
楽天銀行の全疾病特約とは、就業不能保障特約のことです。その月の27日に、所定の就業不能状態が15日を超えて継続しているときは、その月の返済額を保障します。
さらに、所定の就業不能状態が1年を超えて継続すると、住宅ローンの残高が0円になります。
- 借入範囲
新規借入の場合は、物件価格のほか、登記費用・住宅ローンの融資事務手数料と印紙代・火災保険料・不動産仲介手数料・修繕積立一時金・水道負担金・引越し費用などについても融資対象となります。
また、融資事務手数料が一律33万円となっている点にも注目です。借入額が大きくなっても、事務手数料が増えることがありません。
自己資金を削りたくなく、諸経費も借入で賄いたいと考えている人にはいいかもしれません。
もちろん、借入額が大きくなるので、返済計画を立てることは必要です。
ただし借入額が大きくなっても、団信が充実してれば健康リスクについては一定の安心が得られるでしょう。
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行の「ネット専用住宅ローン」は金利の低さにくわえ、団信が充実しています。
変動金利は「0.457%」(2019年12月・通期引下げプラン)とかなりの低水準でありながら、団信に「全疾病保障」が付帯しています。
楽天銀行とほぼ同じ特徴ですが、より金利が低くなっています。
また、全疾病保障につては「待機期間」と「免責期間」があるので注意が必要です。
【全疾病保障について】
- 就業不能信用費用保険金
疾病や傷害で所定の就労不能状態になった場合、月々の返済を保障
- 債務繰上返済支援保険金
就業不能状態が12カ月継続した場合に、住宅ローン残高が0円になる
注意したいのは、後者の「債務繰上返済支援保険金」については全ての人に3カ月の待機期間がある点です。
また、所定の8大疾病以外の疾病についてはさらに「免責期間1カ月」「入院により就業不能になること」などの要件が課されます。
全体的に、店舗のある銀行は人件費やテナント料などの経費が掛かる分経営が厳しいようです。
余分なコストが少ないネット銀行やモーゲージバンクが2020年の住宅ローンをけん引しそうです。
店舗のある一般の銀行では、低金利で利益が薄い住宅ローン部門の取り扱いを見直す動きも出てくるかもしれませんので、「昔から付き合いのある地元の銀行で借りたい」といった人は、早い段階で住宅ローンの詳細を確認しておきましょう。
まとめ 低金利は続く見通しだが、油断は禁物
住宅ローンの低金利時代はまだまだ継続しそうです。
とはいえ、銀行業界はキャッシュレス化やクラウドファンディングなどの台頭により、業務の収益化が難しくなっていることも事実です。
低金利が底を打ち、若干反動することも視野に入れておくといいでしょう。
ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。
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