住宅ローンを借りる際は、金利が返済額を大きく左右する事になります。
実際お金を借りるなら、なるべく低い金利で、さらにその金利水準が完済まで続く状態がベストですが、『金利水準が完済まで続く』という借りる側にとってプラスの条件だと、適用金利は高くなります。
『市場金利に連動して金利が変わる』といった借りる側にとってマイナスの条件だと、適用金利が非常に低くなっているのが現実です。
つまり『金利は完済まで同じだけれど多少高い』ものを選ぶか、『金利はいつ変更になるか分からないけど、今は非常に低いもの』の2択となるのが現状です。
金融機関が提供している代表的な『全期間固定金利型』、『変動金利型』、『固定期間選択型』、の3つの金利タイプを考えていきましょう。
全期間固定金利型

まず全期間固定金利型は、借り入れ時の金利が完済までずっと続くもので、金利は完済まで同額だけど多少高いというタイプです。
このタイプの最大のメリットは、金利上昇の影響を全く受けない事です。
市場金利を気にする必要がないうえに、毎月返済額も変わらないので安心して返済する事ができます。
この条件を提示しているのは、住宅金融支援機構が取り扱う「フラット35」が代表例です。民間銀行でも取り扱っています。
さらに所定の条件を満たした長期優良住宅向けの「フラット35S」なら、通常のフラット35よりも当初10年間、0.3%の優遇金利の適用が受けられるので、さらにお得で、性能の高い住宅を購入する注文住宅を建てる人などに人気です。
民間ローンでも全期間固定金利型を取り扱っていますが、金利はフラット35に比べて高めとなっているのが現状です。
全期間固定金利型は、借り入れたときの金利が完済までずっと続くため、毎月返済額は完済するまでずっと同額になります。
最初は、毎月返済額の中で利息が占める割合が多いのですが、年数が経過するごとに、元金の割合が増える仕組みとなっています。
ですので、将来的な見通しが立ち3つの金利タイプの中では、一番家計にとって安全性が高いタイプといえます。
また現在のような低金利の時に全期間固定金利型を借りれば、将来的に金利が2%、3%と上昇しても、金利が低いままで借り続けることができて非常に有利です。
将来の金利上昇が怖く、金利動向が気になる人は、全期間固定金利型を選ぶと良いでしょう。
しかしながら、デメリットとなる点もあります。
それは他の金利型と比較した時に比べ、金利が割高な事です。
全期間固定金利型の代表、フラット35の平均金利はおよそ1.7%ですが、現在銀行の変動金利型が1%を切る安さで顧客獲得競争をしているのを見ると、若干高いと思える部分もあります。
返済金額を多少無理して借りる人には、少々敷居の高いタイプに感じられると思います。
変動金利型や固定期間選択型と比較すると金利は多少高くはなりますが、現在は相対的金利水準が過去最低レベルといえるため、数あるローンの中から絞りこむ際には、まず全期間固定金利型から検討するのがおすすめです。
ポイント
金利は高めだが安全性が高い『全期間固定金利型』
変動金利型

3つの金利タイプのうち、現在最も低金利なのが変動金利型です。
世の中の金利状況によって適用金利が見直されるので、『金利はいつ変動するかは分からないけど、今は非常に低い金利』のタイプです。
その低金利さゆえに、マンションの広告などに載っている毎月返済額のイメージプラン例はこの変動金利型で試算されているものがほとんどです。
取り扱いは民間銀行で、主力商品になっています。
変動金利型は、半年ごとに金利が見直されるのですが、現在では1%を切るほど金利が低くなっています。
メリットはなんといってもその金利の低さです。
変動金利型を利用した試算では金利が低く設定されているので、見た目の毎月返済額は低くなりますが、ここに大きな落とし穴があります。
変動金利型の最大の特徴は、半年ごとに市場金利に応じて金利が変動するという点です。
借り入れた後に金利が上がれば、その分だけ利息が増え、総返済額も増えることになってしまいます。
ただし毎月返済額が急に上がると利用者の支払いが厳しくなるため、毎月返済額の見直しは5年ごとと定められている(通称5年ルール)他、その時のアップ率にも、直前の支払いの125%まで(通称125%ルール)と上限が設けられています。
そのため、すぐには返済額が変わらないので、本人は適用金利が上がっている事を知らず、気がつくと利息ばかりを支払っているという事になっているという危険性もあります。
過去には変動金利型の金利が8.5%という非常に高い金利になった事もあるため、借り入れ可能額が増やせるからといって選択してしまうと、後々後悔をする可能性もあります。
変動金利型においてリスクを回避するためには、金融機関からの借入期間をどれだけ短くするかがキーになります。
共働きで収入に余裕がある家庭や、貯蓄が十分ある等、もし金利が上がって毎月返済額がアップしたとしても対応できる事が変動金利型を利用する際の条件といえます。
金利上昇で利息が払いきれなくなるリスクもある
この仕組みには少し裏があり、半年ごとに適用金利は上がっているのに、毎月返済額が5年間は据え置きになるため、この間の金利上昇分は元金と利息の比率で調整され、毎月返済額のうちの利息の割合が増えることになります。
その影響でなかなか元金が減らない状況になってしまう場合もあります。
また急激な金利上昇が起きたときには、支払うべき利息が毎月返済額を超えてしまうという事もありえます。
この利息を「未払い利息」といいます。
金利が下がらない限りはこの未払い利息が発生し続けるため、その間は元金は全く減りません。
返済期間を終えても利息ばかりを返済していたために元金の支払いが終わらず、極端な場合は返済期間を伸ばして、元金の返済をし続ける事態も起きるのです。
このように金利が上がると利息の支払いが増える仕組みは、変動金利型最大の注意ポイントです。
とはいえ、現在1%を切る金利水準という低金利が魅力なのは確かです。
1%を切る金利であれば、急激な金利上昇さえなければ非常に少ない利息の支払いでお金を借りられる事になるため、借りる側には好都合です。
しかし、急な金利上昇になると利息ばかりを支払うという悲惨な結果になります。
この場合にどう対処するか、手を打てる自信のある人が利用するべきです金利です。
例えば、繰り上げ返済によって借入元金を減らしたり、毎月返済額を引き上げてもらい、利息だけでなく元金も返済するようにプランを変えたり、などの対策になると思います。
最初から返済期間20年など短めに借りておくことや、固定期間選択型と変動金利型を半分ずつ借りる、ミックスローンなどを利用するのもひとつの方法です。
借りる側も上手にプランを考え、利用するのが変動金利型選びのポイントです。
ポイント
金利の低さで選ぶと後悔する可能性もある『変動金利型』
固定期間選択型

1年、2年、3年、5年、10年、20年など、適用金利が一定期間固定されている『固定期間選択型』です。
全期間固定金利型と、変動金利型のちょうど中間に位置するタイプで、民間銀行であればどこでも取り扱いをしています。
前述した「変動金利型」は低金利が魅力ですが、金利が上がったときのリスクが高いです。
一方、「全期間固定金利型」は金利が上昇しても影響がないといったメリットはありますが、金利は高めです。
そこでリスクはある程度抑えながら、低金利の恩恵は受けたいといった人の選択肢のひとつとなるのが固定期間選択型といえます。
今の低金利をできるだけ上手に利用したいという人なら、全期間固定金利型よりも低金利が狙えるこの固定期間選択型を利用するのもひとつの手です。
固定期間選択型の住宅ローンは、一定期間は金利が固定され、固定期間が終了した後は、変動金利型か固定期間選択型を自身で選ぶ事になります。
固定期間終了時に何も申告しなければ、変動金利型へ自動的に移行する事になるのが主流です。
移行するのを忘れたまま変動金利型になると、もう一度固定期間選択型を選ぶという事ができない場合もあるのでかなり注意が必要です。
なお、固定期間中に変動金利型に変更したくても、基本的には不可能です。
固定されている期間は、全期間固定金利型よりも低金利ですが、固定期間が終了した時点で市場金利が上がっていれば、その金利を受け入れるしかないシステムである事には、十分注意が必要です。
しかも変動金利型と違い、毎月返済額のアップに上限(125%ルール)が決められていないため、大幅に返済期間がアップしてしまうリスクもあります。
固定期間選択型を利用するときは、金利上昇のリスクと、適用金利のバランスを考えることが大切です。
例えば、固定期間が1年や2年といった短いタイプでは、金利上昇によるリスクは変動金利型とさほど変わりません。
それならば、より金利が安い変動金利型を利用したほうが良いという考えもあります。
固定期間選択型を利用し、金利を固定する期間をなるべく長くしたい人は、10年、20年などを利用するのがおすすめです。
また最近、金融機関によっては、変動金利型よりも金利が安い3年固定期間選択型などで提示していることがあります。
そういったキャンペーン金利型をあえて利用するというのも手です。
その場合は、変動金利型と同じように注意深く計画的に利用しましょう。
子どもの教育費のピークが終わるまでの10年間だけ等、一定時期だけ返済額を固定にしておきたい人や、教育費のピークをすでに越えていて、固定期間が終了する頃には毎月返済額がアップしても対応できるといった人などは、このタイプを検討してみると良いと思います。
ポイント
低金利の恩恵を受けることもできる『固定期間選択型』
金利タイプは返済負担率を目安にして決める
3つの金利タイプを紹介しましたが、絶対にこれが正解という答えがないのが住宅ローン選びの難しいところです。
どの金利タイプが自分に合っているかを判断する基準として、返済負担率を目安にするという方法があります。
返済負担率は住宅ローンの負担の重さを表す指標で、自分の年収に対して、年間返済額が何%程度を占めるか計算した数値です。
住宅ローンの審査基準の一つとして、返済負担率を用いている金融機関は多いです。
返済負担率の求め方
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年収(額面)
自分の返済負担率ではどの金利タイプがベスト?
年収負担率別金利タイプの選び方 | |||||
---|---|---|---|---|---|
負担低め | 普通 | 負担高め | |||
返済負担率15% | 返済負担率20% | 返済負担率25% | 返済負担率30% | 返済負担率35% | |
全期間固定金利型 | △ | △ | ○ | ○ | ○ |
変動金利型 | ○ | ○ | △ | × | × |
固定期間選択型 | △ | △ | ○ | ○ | ○ |
○=利用しても良い △=条件によっては利用しても良い ×=利用しないほうが良い |
返済負担率が高めの人は安全性の高い全期間固定金利がおすすめです。
一方、返済負担率が低い人は変動金利など金利上昇で返済額がアップする金利タイプを選択しても対応できる余裕があります。
■返済負担率15%〜20%
比較的余裕をもって返済できるレベルです。
■返済負担率25%
子どもがいる家庭では25%がなんとか無理なく返済ができるレベルです。
■返済負担率30%以上
かなり返済が厳しくなると予測できるレベルです。
金利だけでなく実質的な負担で選ぶ事も必要
金利の引き下げ競争が激化している現在、少しでも低い金利を探すのも重要ですが、実質的な負担から考え選ぶことも重要です。
たとえば、フラット35は民間金融機関が個人に融資した債権を、住宅金融支援機構が買い取る「買取型」がメインです。
民間金融機関にしてみれば、住宅金融支援機構が提示する金利は、全期間固定金利型としては民間機関が自力で資金を調達して融資する金利より、かなり低いものを提示してくれます。
それが、とくに中小の金融機関には魅力的で、どうしても頼りたくなります。
しかし、一定の資金調達力のある大手銀行なら、自力で全期間固定金利型の住宅ローンを開発し、それをメインにしたいと思うはずです。
その代表格が三菱UFJ銀行です。三菱UFJ銀行はメガバンクの中で唯一フラット35を扱っていません。
単なるビジネスではなく、金融機関本来の機能である資金調達力を活かし、フラット35に対抗できるようなローンを自社で開発販売する戦略を徹底しています。
その他の要素まで加味すれば、フラット35よりかなり有利な内容になっています。
メガバンクのオリジナル住宅ローンと、フラット35では、金利だけではなく事務手数料、保証料、団体信用生命保険料などが大きく違っています。
たとえば、借入額3,000万円、元利均等、ボーナス返済なしで返済設計をした場合、同行の事務手数料は32,400円(税込)ですが、フラット35では借入額の何%といった定率制が中心です。
別のフラット35を扱っているメガバンクでは1.836%(税込)の手数料なので、計算すると借入額3,000万円では、55万円800円になります。
また、メガバンクの中でも、みずほ銀行は金利引き下げ幅が他行より大きいのが特徴です。
金利引き下げには全期間同じ幅だけ引き下げるタイプと、当初の一定期間だけ大きく引き下げ、その後の引き下げ幅は小さくなるタイプがあります。
この当初の引き下げ幅が大きいタイプは、金利が極端に低くなるために、とても魅力的に見えるのですが、逆に一定期間が過ぎると引き下げ幅が小さくなり、自動的に適用金利が上がって返済額が増えます。
金利上昇に動き出した場合には、極めて深刻な問題に発展する可能性があります。
このため、みずほ銀行では早くからこの一定期間の引き下げ幅の大きいタイプの扱いを停止し、全期間一定の引き下げ幅に統一しながら、他行より低い金利を提示しています
メガバンクはそれぞれの特徴を活かして独自の戦略を立てていますので、金利だけではなく実質的な負担から考え選ぶという視点を持つことも重要です。