住宅ローン選びの際には、なるべく金利の低い銀行を探そうと努力すると思います。
金利ももちろん大切ですが、それ以上に返済期間の設定も重要なボイントになります。
なぜ金利と同様に返済期間が住宅ローンにおいて重要な要素であるかを解説していきたいと思います。
住宅ローンは返済期間の設定がなぜ重要か?
金融機関のホームページや、物件広告、モデルルームなどでは、5年刻みで返済例を算出してくれる事が多く、返済期間は、20年、25年、30年、35年など5年単位だと思っている人が多いと思います。
また、住宅展示場などで不動産会社が算出してくれる返済プランでも同様に返済期間が最長の35年となっているケースが殆どです。
これを見て、住宅ローンの返済期間は35年しか組めないと思っている人も多いですが、特に決まりはなく本来は1年刻みで返済期間を設定することが可能です。
金融機関から30年、35年など5年刻みで提案されることが多いのは、金利の設定が5年程度で異なるためです。
ただし返済期間の上限は35年、年齢でいうと70歳までとしているのが一般的です。
とりあえず、35年で借りて、あとは繰り上げ返済すれば良いと思うかもしれませんが、子どもの教育費や老後のための貯蓄をしながら繰り上げ返済の資金を貯めることはなかなか難しく、借りた後に一度も繰り上げ返済ができていない人がとても多いのが実状です。
たとえば、3,000万円を金利1.5%で借りた場合、返済期間を35年にすると、単純に計算したとしても、毎月9万1,855円を返済することになります。
35歳の時に借りたとすると、60歳の時には約1,023万円も残高がある事になります。
家計の見直しをして、毎月1万円でも多く返済できるなら、それだけで返済期間は30年になり、5年間も短縮することができます。
最初の設定で、保険を見直すなどして毎月1万円でも多く支払う事で、将来的な負担をだいぶ軽減することができます。
返済額の1万円アップが難しければ、4000円アップなら対応できないでしょうか?
4,000円でもアップできれば、返済期間は同じ35年でも、60歳時の残高も利息も減らす事ができます。
60歳時の残高は約598万円と35年返済より425万円も減り、支払う利息も131万円も軽減することができます。
このように返済期間を1年単位で変えてみながら試算し、家計と照らし合わせ、返済可能な期間と額を見つけましょう。
(例)35歳/借入額:3000万円/金利1.5% | |||||
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返済期間 | 35年 | 33年 | 30年 | 28年 | 25年 |
毎月の返済額 | 9万1855円 | 9万6094円 | 10万3536円 | 10万9399円 | 11万9980円 |
支払い利息額 | 約858万円 | 約805万円 | 約727万円 | 約676万円 | 約599万円 |
25年後、60歳時の残高 | 約1023万円 | 約869万円 | 約598万円 | 約385万円 | 0 |
毎月の返済額も考慮しよう
返済期間はできるだけ短い方が、総支払額が抑えられ、お得になりますが、あまり短くローンを組み過ぎると、毎月の返済が厳しくなる場合もありますので注意が必要です。
同じ3,000万円を20年で借り入れると、毎月の返済額は14万4,780円、35年だと、毎月の返済額9万1,860円となります。
20年返済のケース:毎月の返済額 14万4,780万円
35年返済のケース:毎月の返済額 9万1,860万円
(3,000万円を金利1.5%で借入れ)
35年で借りたほうが毎月の支払いは5万円以上も安くなります。
利息負担の比較
例えば、3,000万円を金利1.5%で借り入れた場合、毎月返済額と総返済額は、返済期間が35年だと、利息負担は約858万円。
5年減らして30年の返済にすると、利息負担は約728万円と、130万円も低くなります。
35年返済のケース:利息負担 約858万円
30年返済のケース:利息負担 約728万円
(3,000万円を金利1.5%で借入れ)
完済時年齢は65歳が目安と言われる理由は?
住宅ローンを借り入れる時の理想は、定年前に住宅ローンを完済する事です。
55歳から役職定年等で年収が減る企業も増えており、さらに退職後は収入が激減しますので、現役時代と同じ返済額では生活が厳しくなります。
退職金で完済すれば良いと考える人もいるかもしれませんが、近年では退職金の支給額自体も下がっているので、あまりあてにしすぎるのは危険です。
年金に関しても同様に、年金受給年齢の引き上げられたり、受給金額が下がったりするリスクがあるため、ローン返済に回すことはせず、老後の生活費に取っておいた方が無難といえます。
例えば、現在35歳の人なら、65歳までの30年を返済期間の一つの目安にしてプランを検討すると良いでしょう。
いざ住宅を購入する事を決めて住宅ローンを検討する際、不動産会社は35年の返済プランを提示してきますが、30年と25年のプランも出してもらい比較検討するようにしましょう。
返済期間を検討するにあたり、もう一つ注意したいのが、返済期間を短くすることに気を取られ過ぎて、毎月の返済額自体を無理することです。
もし返済中にリストラや転職で給与が下がってしまい、毎月の返済が厳しくなった時の事も念頭に置いておくことは非常に重要です。
毎月返済額のゆとりを重視して、ある程度長めのスパンで借りておき、多く返せるめどが立った時に繰り上げ返済をするなどして、定年までに完済するという計画も是非考えてみてください。
借入3,000万円、金利1.5%の場合の例
返済期間 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
20年 | 14万4780円 | 3473万7200円 |
25年 | 12万円 | 3600万円 |
30年 | 10万3560円 | 3728万1600円 |
35年 | 9万1860円 | 3858万1200円 |
返済期間と住宅ローン減税の関係は?
住宅ローンは返済期間が長いほど残高の減り方が遅く、逆に返済期間が短いと残高の減り方が早くなります。
一方で、住宅ローン減税制度の控除額は、年末ローン残高の1%をもとに計算されますので、残高の減り方が遅いほど控除額が多くなります。
たとえば、借入額3,000万円、金利1%、元利均等、ボーナス返済なしで、35年返済と20年返済の控除額を比較します。
20年返済では1年目の29.3万円から、2年目は28.0万円になり、10年目には16.5万円まで減少します。
10年間の合計は230万円です。
それが35年返済になると、1年目は29.6万円、2年目は28.9万円と減少ピッチがゆるやかになり、10年目は22.6万円。
10年目になると、20年返済との控除額の差は6万円以上に開きます。
35年返済の控除額の合計は262.9万円。
20年返済の230万円よりも32.99万円も多くなります。
ローン減税の控除額だけを考えれば、返済期間が長いほど有利になるのは間違いありません。
実質的な負担は返済期間が短いほうが有利
実質的な総負担を比較すると、当初から返済期間を短くしておくほうが負担は少なくてすみます。
返済期間を短くすれば元金の減り方が早いので、それだけ利息負担が減りますから当然のことです。
35年返済の毎月返済額8万円台に対して、20年返済は14万円近くに達します。
短期間に多く返済するので、元金の減り方が早いからです。
この毎月返済額に、完済までの返済回数をかけて総返済額を算出し、そこからそれぞれの返済期間に応じた当初10年間のローン減税額を引いて、実質的な負担を比較すると、35年返済の実質的負担は約3294万円に対して、20年返済では約3081万円ですみます。
返済期間20年のほうが、トータルでは200万円以上負担が少なくなります。
いくら返済期間の長いほうがローン減税の控除額が多くなるとはいえ、当初の返済負担に無理がない範囲でできるだけ返済期間を短くするほうが得策であることは変わりません。
ただ、現実的には毎月13万円以上の返済でも問題はないという人はさほど多くはないでしょう。
できるだけゆとりをもって返済したいというのであれば、当初は返済期間を長く設定してローン減税の控除額を返済の足しにするのが良いでしょう。
通算の返済期間が10年を切るとローン減税は終了
住宅ローン減税の適用を受けているときに繰り上げ返済する場合は、次の点について注意します。
一つは、繰り上げ返済の予定があるのなら、年末に焦って実行するよりも、年初まで待ったほうがよいという点です。
ローン減税の控除額は年末ローン残高の1%ですので、仮にその年の年末残高が3,000万円だったとすれば、その1%で30万円の控除額になります。
しかし、その前に100万円繰り上げ返済すると、年末ローン残高は2,900万円ですから減税額は29万円に減少します。
200万円の繰り上げ返済なら、減税額は2万円減ってしまいます。
残高が減れば減税額も減ってしまうことになりますが、控除額の減少をできるだけ遅くするほうがいいのではないでしょうか。
もう一つは、あまり頻繁かつ多額の繰り上げ返済をすると、途中でローン減税の適用条件を満たせなくなり、その時点で減税を受けられなくなる可能性があります。
ローン減税には、返済期間10年以上という条件があります。
これは、当初に条件を満たしていれば10年間、無条件で継続できるということではありません。
繰り上げ返済で返済期間を短縮した結果、この条件を満たせなくなれば、その時点で終了してしまいます。
ただ、残りの返済期間が10年を切ればダメというわけではなく、すでに返済した期間と残りの期間の合計が10年を切った段階で終了ということです。
できるだけ早く支払いを終えたいという一心で、この点を見逃していると、住宅ローン減税の恩恵を受けられなくなって後悔することになりかねません。
十分に注意してください。