住宅ローンジャーナル

2020年の住宅ローン動向振り返り 2021年の住宅ローン動向も予想

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

2020年はコロナ禍により、経済が大きな影響を受けました。

働き方が大きく変わったり、収入が変化したりした人も少なくないでしょう。

2020年、住宅ローンはどのような変化があったのか振り返るとともに、2021年の動向について考えてみたいと思います。

2020年は引き続き超低金利時代

住宅ローン全体として、超低金利時代が続いています。

変動金利には0.5%を切る商品が複数登場していますので、実際の商品をいくつか紹介します。

なお近年は金利の低さだけでなく、団信の保障を充実させて差別化を計る傾向がありますので、金利に加えで団信の保障についても見ていきます。

auじぶん銀行

金利 団信(金利上乗せなし)
変動金利 0.410% 一般団信
がん50%団信
10年固定 0.530%

参照auじぶん銀行 公式サイト

がん50%保障団信とは、がんと診断された場合に住宅ローンの残高が50%になる団信です。

さらに該当団信は、ケガや病気による入院期間が30日以上になると「毎月の住宅ローン返済額」が、入院期間が180日以上になると「住宅ローン残高」が給付金として支払われる保証も付帯しています。

なお一般団信とは、死亡や高度障害状態等に陥った場合に住宅ローン残高が0円になる団信のことで、一般的な住宅ローンには無料で付帯されています。

住信SBIネット銀行

金利 団信(金利上乗せなし)
変動金利 0.44% 一般団信
全疾病保障
ガン診断給付金特約(女性限定)

参照住信SBIネット銀行 公式サイト

全疾病保障とは、ケガや病気によって働けなくなり、その状態が12ヵ月続いた場合に住宅ローンの残高が0円になる保障です。

ガン診断給付金特約は女性限定の特約として、全疾病保障に上乗せして付帯されます。

ジャパンネット銀行

金利 団信(金利上乗せなし)
変動金利 0.380 一般団信プラス(がん先進付)
10年固定 0.530

参照ジャパンネット銀行 公式サイト

一般団信プラス(がん先進付)とは、一般団信の保障に上乗せされる保証です。

がんと診断確定されたら100万円の給付金が受け取れるほか、がんの先進医療を利用した場合、治療費を通算1000万円まで給付金を受け取ることができます。

ARUHI

金利 団信(金利上乗せなし)
全期間固定(1520年) 0.970 % 機構新団信(一般団信)
全期間固定(2135年) 1.060 %

参照ARUHI公式サイト

新機構団信とは「死亡」もしくは身体障害者福祉法に定める障害の級別が1級または2級の障害に該当し、身体障害者手帳の交付を受けたときに住宅ローン残高が0円になる団信です。

保障内容はおおむね「一般団信」と同等ですが、新機構団信に「加入しない」選択肢も取れる点が特徴です。「

健康上の理由で団信に加入できない」「十分な額の額の生命保険に加入しているので団信は不要」といった場合は団信に加入せず、金利を引き下げることも可能です。

保険料がかかるタイプの団信は、金利上乗せ型が多いです。

住宅ローン金利だけでなく団信の内容と上乗せ金利に注目することで、より満足度の高い住宅ローンを選ぶことができるできるでしょう。

2020年の住宅ローンにおける金利選択の動向

続いて、住宅金融支援機構による住宅ローン利用者の実態調査「住宅ローン利用者調査(2020年5月調査)」から2020年の住宅ローンにおける金利選択の動向を確認します。

金利は大きく「固定期間選択」「全期間固定」「変動金利」の3種類です。調査からは「固定期間選択」「全期間固定」と比較して「変動金利」を選択する人の割合が多いことが分かります。

2020年5月調査では変動金利を選択する人の割合は60.2%。

推移で見ると、一時的に変動金利の割合が下がる局面もありますが、全体として微増傾向が続いています。

低金利の時期が長く続いているため、当分金利は上昇しないと考える人が多いのでしょう。

特に新築マンション購入者で変動金利を選択する人が多く、変動金を選ぶ人の割合は70.4%です。

これは、「資金的に余裕があるので金利上昇リスクが怖くない」「仮に金利が上昇しても新築マンションなら転売が比較的容易だから」など、複数要因が考えられます。

さらに融資率ごとの金利選択では、融資率が高い「90%超100%以下」「100%超」、この上位2つの区分で変動金利の利用割合が特に高くなります。

融資率とは「建設費・購入価額」に対する借入金の割合のことです。

一般に、融資割合が高いほうが返済リスクは増すとされています。返済リスクが高いならば、金利選択は金利上昇リスクを嫌って固定金利を選択する人の割合が増えそうなものです。

ですが、それでも変動金利が多く選択されています。

理由は、統計上直接には調べがありません。

しかし、「住宅ローンを選んだ理由※」の第一位が「金利が低い」であることから、低い金利で大きく借りようと考える人が一定数いると推測できます。

※ フラット35以外の利用者

新型コロナウイルスの影響は

国土交通省の「建築着工統計調査報告」によると令和2年10月の住新設住宅着工戸数は70685戸、前年同月比8.3%減で、16か月連続の減少です。

持ち家戸数・分譲住宅戸数も減少しています。

減少の理由は主に新型コロナウイルスの影響による景気の不透明感であると考えられます。

2020年12月現在新型コロナウイルスは終息していないため、今後の見通しも不透明です。

しかし先行きが不透明であるならば、今後は「小さく借りる」方向性が強まるでしょう。

新型コロナウイルスのその他の影響として、在宅勤務が増えたことで住宅に求める「要素」が変わったとの意見があります。確かに在宅勤務を行えば、家にいる時間が多くなります。

過ごす時間が増えることで「居心地」を重視したり、家に「仕事ができる空間」を求めたりする人が増えるでしょう。

また、通勤時間を気にする必要がなくなるため、勤務地からの距離が考慮されにくくなります。

とはいえ、在宅勤務は一時的であった人や、そもそも在宅勤務に至らなかった人もいます。

賃貸は住み替えが容易であるため、景気動向や流行によって需要が動きやすい傾向にありますが、購入はより慎重な決断が必要です。

そのため、2020年現在においては、エリアや立地の需要が大きく変わるには至らないようです。

在宅勤務がコロナ禍における一時的な対策にとどまるのか、今後はスタンダードな働き方として定着するかで住宅需要が変化するかどうか変わってくるでしょう。

2021年以降は住宅ローン控除の恩恵が小さくなる見通し

現状の住宅ローン控除は、所得税と住民税の一部から「年末時点の住宅ローン残高の1%」が控除される仕組みです。

納税額以上の控除を受けることはできませんが、納税額による上限の引き下げがなければ、最大控除額40万円(認定長期優良住宅などは年50万円に拡充)の控除を原則10年間受けることができます。

しかし、近年の住宅ローンは金利が1%を切るものも複数あります。

そのため次のように、住宅ローンの控除要件を縮小しようとする動きがあります。

【住宅ローン控除の控除額】

次のいずれかのうち少ないほうにする

  • 年末時点のローン残高の1
  • その年に支払った住宅ローン利息の総額

実施時期は未定ですが、今後住宅ローンを組もうと考えている人は、動向に注意しておきたいです。

なお、縮小が実施されたとしても、すでに住宅ローン控除を受けている人の要件は継続されます。

今後のスタンダードになるか?!残価設定型の住宅ローンが登場

先行きの不透明感があるなか、残価設定型の住宅ローンが登場しました。

残価設定型の住宅ローンとは住宅購入時に、一定の「残価」を差し引いて購入できる仕組みです。残価は売主が決定します。

仮に5000万円の住宅の残価を売主が「2000万円」とすれば、3000万円のローンを組むことで住宅が購入できます。

住宅ローン契約の終了時には2000万円の「残価」が残ることになりますが、「売却」「自己資金で購入」「再度住宅ローンを組む」などの選択肢を取ることができます。

マイホームを購入したとしても、退職後はマイホームを手放して住み替える可能性がある人に向いているとされます。

また、当初の住宅ローン返済額を抑えて自己資金を貯め、住宅ローン契約終了時に購入したい人にもメリットがある仕組みでしょう。

新しい制度であるため現段階では違和感を持つ人も多いかもしれません。

ですが、新しい住宅ローンの形として定着する可能性がありますので、知っておくといいでしょう。

まとめ 住宅ニーズや購入方法の多様化が考えられる

住宅ローン控除の上限が変わったり、残価設定型の住宅ローン登場したりすることで、これまでの常識が覆るかもしれません。

新型コロナウイルスの影響で、そもそも住宅に求める要素も変わる可能性があります。

マイホームの価値観も多様化が進むと考えられるでしょう。

今後は、「何のためにマイホームを購入するのか」を明確にすることが重要でしょう。

ニーズに合わせて住宅ローンをうまく選択してご自身にとって最善のマイホーム取得を行っていきましょう。

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イオン銀行

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