住宅ローンジャーナル

住宅ローンの借り換え 借り換えが難しいケースやできないケースについて知ろう

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

借り換えでは諸経費かかりますし、用意する書類も少なくありません。しかし、住宅ローンの金利はここ数年、かなりの低金利を維持しています。

諸経費と手間を考えてこれまで踏ん切りが付かなかったけれども、思い切って借り換えをしたいと考える人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、借り換えは必ずしもできるわけではありません。借り換えを検討している人のために、借り換えが難しい、もしくはできないケースを紹介します。

住宅ローンの借り換えができないケース3つ

住宅ローンの借り換えについては、個々の事情に関わりなく借り換えができないケースがいくつかあります。代表的なケースを3つ紹介します。

ケース1 同じ金融機関内での借り換え

同一金融機関でローンを借り換えることは原則としてできません。

同一金融機関内の借り換えでは顧客数や貸付残高に変化がなく、融資元としてのメリットがないからです。

ただし現在の住宅ローンのまま、金利見直しの交渉する選択肢があります。

交渉が成立するかは金融機関次第ですし、借り換えのように多くの住宅ローンの中から最適の商品を選ぶことはできませんが、2つのメリットがあります。

第一のメリットが、効果が分かりやすい点です。

通常の借り換えでは金利の引き下げによる返済額の減額分から、借り換えでかかる事務手数料や保証料などの諸経費を差し引いて「借換効果」を分析します。

しかし同じ同じ金融機関での金利引き下げならば、借り換えにかかる諸経費が不要なため、金利引き下げ効果と返済額の減少が直結します。

第二のメリットが、借り換えに伴う事務手続きが軽減される点です。通常の借り換えは借り換え先金融機関による新たな融資となるため、審査書類の準備や抵当権名義変更の手続きが必要です。

金利引き下げ交渉であれば、これらの手間を軽減できます。借り換えを検討している人は、現状借り入れしている金融機関への交渉も選択肢に入れておくといいでしょう。

なお、複数の住宅ローンを展開している金融機関の場合、違った住宅ローンへの借り換えができる可能性はあります。ただし、商品性に大きな差がないと借換効果を感じにくいです。

ケース2 財形住宅融資への借り換えはできない

公的住宅ローンである財形住宅融資への借り換えはできません。

財形住宅融資が気になっている人は、最初から申し込むようにします。

独立行政法人である住宅金融支援機構の「フラット35」は、借り換えに対応しています。

民間金融機関からフラット35に借り換えることが可能ですし、フラット35からフラット35への借り換えもできます。

ただし、「フラット35」から「フラット35S」への借り換えはできません。

「フラット35S」とは一定の要件を満たした住宅が、当初10年(もしくは5年)の金利優遇が適用される住宅ローンです。

逆に、「フラット35S」から「フラット35」へ借り換えることは問題ありません。

「フラット35S」の金利優遇期間が終了した時点で、適用金利が高い場合は「フラット35」に借り換える、といった使い方が可能です。

全期間固定金利に魅力を感じる人にとっては朗報でしょう。

ケース3 健康状態が悪く団信に加入できない

多くの住宅ローンでは団体信用生命保険(以下、団信)の加入が必須です。

団信は、住宅ローン返済中に死亡や、高度障害状態等に陥った場合に住宅ローン残高と同額の保険金が支払われる生命保険です。

住宅ローン契約者にとっては、万が一の場合に住宅ローンの返済額がゼロになりますし、金融機関にとっても返済不能リスクを抑えるメリットがあります。

借り換え時には当初の住宅ローン借り入れ時よりも年齢が上がっているため、持病を抱えている割合が高いです。

健康状態によって団信に加入できず、借り換えをあきらめる人も少なくありません。

加入要件が緩和されている「ワイド団信」を利用して借り換えする方法もありますが、団信保険料が割高です。

ワイド団信保険料を金利換算すると「年利0.3%程度」ですので、借り換え時にはその分の金利を上乗せしてメリットを考えなければなりません。

なかには、借り換えメリットが相殺されてしまう人もあるでしょうし、従前に加入していた団信の方が、保障が手厚いケースもあるので注意が必要です。

以上は、住宅ローンの借り換えができないケースです。

同一金融機関での借り換えについては代替え案もありますし、団信も選択肢がないわけではありません。

ただし、同一金融機関での交渉はうまくいくとは限らず、団信もメリットがあるかどうか見極める必要があります。

借入時と状況が変化していると借り換えが難しいことがある

借入時と比較して収入や資産価値などの状況が変わり、借り換えが難しくなっているケースもあります。

借り換えが難しくなりがちな事例を紹介します。

勤務状況が変わった

転職により勤続年数が変わった人や、独立により個人事業主や会社社長になった人は、借り換えが厳しいことがあります。

住宅ローン審査では1~3年の勤続年数を必要としている金融機関が多いためです。

住宅ローン返済中でも、職業が変わった場合は申告を求められるのが通常です。

特に独立した人は審査が厳しい傾向にあります。

というのも、独立後数年は経営が安定しないのが一般的だからです。

転職・独立と住宅ローン借り換えの双方を検討しているなら、まずは借り換えを済ませるのがベターでしょう。

もしも、すでに転職・独立してしまっている場合は、申し込み要件における「勤続年数」が短い金融機関を選びます。

さらに、キャリアアップの転職・独立であることを強調できるといいです。

独立した人であれば前職の経験が役に立つ業界で独立しているのでリスクが少ないこと、転職者であれば収入が上がっていることなどをアピールできると審査に響きにくいでしょう。

世帯収入が変わった

会社の経営状態が悪化したり、転職したり収入が下がることがあります。

また、ペアローンや収入がっさにより借り入れを行った夫婦の場合、子どもが生まれることで世帯収入が下がることは少なくありません。

世帯収入が下がれば借り入れ上限も下がりますので、借り換え先が見つからない恐れがあります。

世帯年収が下がったときは「現在の年収でいくら借りられるのか」の視点を持ちましょう。

もしも現在の年収の借り入れ上限よりも住宅ローン残高が大きいと感じたときは、一部繰り上げ返済で借入額を小さくするといった対策をとっていきます。

住宅ローン以外の借り入れが増えた

住宅ローンを組んだ後に、マイカーローンや家電ローンなどほかの借り入れをすると、審査が厳しくなります。

というのは、住宅ローン審査では「返済負担率」が考慮されるからです。

返済負担率とは、年収に占める返済金の年間返済額の割合のことで、返済金には住宅ローン以外の借り入れも含まれます。

他の借り入れはないと思っている人も、クレジットカードのリボ払いが盲点になっているかもしれません。

クレジットカードのリボ払いも「その他の借り入れ」とみなされるので、あわせて把握しておきます。

担保評価が低くなっている

住宅ローン審査では物件の価値も重要です。ここでいう物件の価値は一般に「担保評価」と呼ばれるもので、融資額と同様の価値が、その物件にあるかを審査するものです。

金融機関は抵当権を設定する以上、返済が滞った場合に物件を売却して返済金を回収する権利を持ちます。

せっかくの抵当権も、物件の価値がなければ意義が半減してしまうため、担保価値を重視するのです。

注意したいのは、返済当初は利子が大きいため、元本の減りがおそい点です。

担保評価が半分以下になっているのに、住宅ローン残高は半分に達していない……といった場合も考えられます。

担保評価が住宅ローン残高を下回ることを担保割れといい、担保割れの度合いが激しいと、借り換えが難しくなります。

延滞の過去がある人は要注意

信用情報に延滞の記録が残っている人は借り換えが難しいです。

信用情報とは、クレジットやローン等の申し込みや契約に関する情報です。

クレジットの申込内容や契約内容、支払状況、残高などと同時に、支払いの遅延も記録されます。

遅延情報がある場合は、原則として新たな借り換えはできません。

遅延情報の履歴は5年程度で消えるとされていますが、「延滞から5年経過したから大丈夫」などと自己判断せず、自身の信用情報を確認したうえで借り換えを行いましょう。

借り換えは状況を整えて実行しよう

借り換えは住宅ローンの返済実績を積んだうえで行うものですので、新規借り入れよりは審査が通りやすいと言われています。

しかしながら、健康状態や状況の変化によって借り換えが難しいケースもあります。

勤務年数や住宅ローン以外の借り入れなど、自身で調整することが可能な項目もありますので、要件を確認しながら借り換えを検討していきましょう。

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