(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
銀行以外の借入先を検討している人へノンバンクの解説。
モーゲージバンクや、証券会社など、銀行との違いやメリット・デメリットなど。
住宅ローンの借入先といえば、銀行を思い浮かべるのが一般的でしょう。
しかし、住宅ローンの借入先は銀行だけとは限りません。銀行の他にどんな選択肢があるのでしょう。
利用額が大きい機関の特徴をご紹介します。
住宅ローンの借入先
住宅ローンの借入先はどんな機関があるのでしょう。
国土交通省の「平成29年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」より新規の貸出額が多い順にご紹介します。
平成28年度新規貸出額
- 都市銀行(信託銀行含む) 75,662億円
- 地方銀行(第二地方銀行含む)62,258億円
- モーゲージバンク 19,102億円
- 信用金庫 16,720億円
- 労金 9,863億円
- 農協 3,478億円
- 信用組合 1,605億円
やはりダントツの借入先は銀行でした。とはいえ銀行以外でも、モーゲージバンクや信用金庫、労働金庫など様々な選択肢があります。
さらに、上記以外にも保険会社で住宅ローンを借りる人もいます。
ただし保険会社に関しては、「損保会社 391億円」「生命保険会社 9億円」と金額割合が小さいです。
そのため、ここでは新規貸し出し額が銀行に続いて大きい「モーゲージバンク」「信用金庫」「労金」の3つについてみていきたいと思います。
業務に公共性が求められるのが「銀行」
銀行以外の選択肢を見ていく前に、銀行がどんな存在なのか、改めて確認しておきましょう。銀行は株式会社であるため、利益を上げることを目的としています。しかし、通常の株式会社とは違った面も合わせ持ちます。どういったことでしょうか。
まず、銀行の主要な業務は次の4つとされています。
- 顧客の資金を保管・管理する「預金」
- 預かった預金を運用して利益を上げ、利息を稼ぐ「運用」
- 預金を貸し出す「融資」
- クレジットカードや公共料金の引き落としなどの「決済」
このような、経済・生活に欠かせない業務を担っています。
近年は、銀行以外にもこういった機能をもつ企業がありますが、やはりまだこれらの機能の中心は銀行です。
「預金」「(預金を活用した)運用」「融資」「決済」といった金融サービスは公共性が高いため、銀行は特に銀行法による制約を受けたり、金融庁が業務を監督したりします。
モーゲージバンク
銀行に次ぐ借入れ先が、このモーゲージバンクです。モーゲージバンクとは預金業務を行わない、住宅ローン専門会社のことです。
根拠法は「貸金業法」となります。「モーゲージ(Mortgage)」とは抵当・抵当権といった意味です。
預金業務を行わないため、銀行と比較して資金調達力が落ちる面もあります。
しかし多くのモーゲージバンクは、住宅ローンを住宅金融支援機構が買い取る「フラット35」を利用することで、資金力不足の問題をクリアしています。
このような背景により、フラット35の取り扱いは、モーゲージバンクが8割を占めるのです。
住宅ローンに特化したモーゲージバンク
銀行で住宅ローンを借りる際は、引き落とし口座が借入先の銀行でなくてはなりません。
借入先の銀行に口座がなければ、新たに口座を作る手間が生じます。
しかし預金機能のないモーゲージバンクであれば、口座の有無や開設は問題になりません。
通常は手持ちの口座をそのまま引き落とし口座に指定することがでます。
既存の口座を利用すれば、毎月の「お金の流れ」をそのまま継続可能です。
細かいことかもしれませんが、お金の流れを変えるのはストレスになりますので、意外なメリットといえるでしょう。
さらに、住宅ローンを買取するフラット35を利用しているモーゲージバンクでは、銀行より金利が低い傾向があります。
住宅ローンを証券化して機構が買い取るため、契約後の延滞リスクを考慮する必要がないのが低金利の大きな理由でしょう。
参考までに、モーゲージローン最大手ARUIの住宅ローン金利をご紹介します。
ARUHI 新規借入金利
- 頭金4割 0.820%
- 頭金3割 00.870 %
- 頭金1割 1.020 %
※フラット35sの場合の、引き下げ適用金利
※機構団信に加入
既存の口座が利用できたり、低い金利が期待できたりする半面、住宅関連の商品メニューが手薄いです。
例えば銀行であれば、フラット35だけでなく、独自の変動金利や期間固金利の住宅ローンを取り扱っているのが一般的です。
また、将来の修繕に備えたリフォームローンも取り扱っているケースが多くなります。
銀行であれば当然、住宅ローン以外に、投資や保険商品などの相談も可能ですが、モーゲージバンクではそういった対応はできません。
信用金庫
信用金庫は、「信用金庫法」が根拠法となります。
種々の金融サービスを利用者に提供する点は銀行と同じですが、経営方針や理念に違いがあります。
銀行は株式会社であり、利益を追求します。
また、方針によっては日本全国の企業・顧客と取引が可能です。
一方信用金庫は、利用者や会員(組合員)が協力して地域を活性化する、相互扶助を目的とした組織となります。
信用金庫自身が利益を上げることより「地域の発展」が優先されることになるのです。
住宅ローンを利用するのに要件がある「信用金庫」
預金は会員(組合員)でなくとも利用できますが、融資を受けるには原則として会員(組合員)にならなければなりません。
その地域での住人や、地域で働いている人たちとなります。
会員になるための基準はおおむね次の通りです。
- 営業区域内に住所がある
- 営業区域内の事業所に従事している
- 営業区域内に事業所を有している(役員含む)
※事業者については、事業規模が一定の規模以下の事業者のみ
金利は全体的にみると、銀行より高い傾向にありますが、キャンペーンや期間限定の商品など、個々の商品によっては銀行に負けないものもあります。
とはいえ、金利の低さよりも、その地域に根ざしている、もしくは根ざしていこうとする気持ちがあるかどうかが、利用の重要なポイントになりそうです。
なお、「信用組合」は信用金庫と似た借入先です。
ただし、根拠法が「中小企業等協同組合法」であり、営業区域内の事業者のための組織と考えていいでしょう。
預貯金が利用できるのも原則として組合員のみとなっており、通常の利用者にとっては融資の間口が狭いといえます。
すでに信用組合に加入しており、今後も付き合いを続けたい人は検討の余地があるでしょう。
労金(ろうきん)
労金(以下、ろうきん)は労働金庫の愛称で、労働金庫法が根拠法です。
ろうきんの業務内容は、預金や住宅ローンなど銀行とほとんど変わりありません。
利益を追求せず、利用者等が互いに助け合う組織である点は信用金庫と共通します。
ただし目的が「構成員のための運営」としているところが信用金庫と違う点です(信用金庫は地域のための組織です)。
ろうきんは、働組合・生活協同組合・その他の労働者により組織、運営される団体(共済会 ・ 互助会等)です。
それらの団体の組合員や、ろうきんの地域に住んでいる人なども構成員となることができ、同時に預金や住宅ローンを利用可能です。
ろうきんの住宅ローンには特徴的なものがある
全国に13の労働金庫があり、それぞれ提供しているサービスは異なります。
中には、近畿ろうきんの「無担保で2,000万円まで借入れ可能」なものや、東海ろうきんの「住宅ローンの返済期間が最長40年まで」など、かなり特徴的な住宅ローンもあります。
気になる人はお近くの労金の住宅ローンについて調べてみるといいでしょう。
まとめ 銀行以外にもたくさんの借入先がある
銀行以外の住宅ローンとして、金額の多い3つの機関についてご紹介しました。
それぞれ住宅ローンの商品性が異なるほか、経営理念や運営目的も違ってきます。
借入先によっては、利用対象外となる場合もありますので、銀行以外の借入先を検討しているときは、直接問い合わせて内容を確認しておくといいでしょう。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所