(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅を購入するには通常ローンを組みます。
ローンでは返済金利が発生しますが、「金利は低いほうがいい」と考えるのが普通でしょう。
実は住宅ローンは持ち家の購入を保護する観点から、非常に金利が低く設定されています。
それは住宅ローンの金利が低いのは生活の基盤である「持ち家」を保護するためです。そのため、原則として「住まない」家には住宅ローンが利用できません。
もしも「住まない」家を住宅ローンで購入してしまうとどんなペナルティがあるのでしょう。
また、事情が変わってマイホームに住めなくなってしまった場合の対処法について解説します。
住宅の目的によって申し込むローンは異なる
同じ「住宅」でも、使用目的によって利用するローンは異なります。住宅を購入するときに使えるローンを3種類ご紹介します。
1 住宅ローン
住宅ローンは生活の拠点となる、「マイホーム」専用のローンです。
特徴は金利が非常に低い点で、住宅要件や返済期間などの条件を満たせば住宅ローン控除の対象となる点も大きな魅力です。
さらに、金利が低いにもかかわらず、返済期間中金利が変わらないフラット35を活用すれば、金利上昇リスクも回避できます。
なお、フラット35を要する住宅金融支援機構は、経営理念のひとつに、「マイホーム購入における安定的な資金提供」を挙げていますます。
そのような経営理念から、フラット35は比較的融資がおりやすいローンとなっています。
2 セカンドハウスローン
セカンドハウスはマイホームとは別に、別荘や週末のみ利用する自己所有の家を指します。
多くは住宅ローンを利用することができず、セカンドハウス専用のローンを活用します。
セカンドハウスの特徴は、金利が住宅ローンよりも高いこと、そして比較的審査が厳しいことの2点です。また、住宅ローン控除も活用できません。
なお、フラット35はセカンドハウスに対応しています。セカンドハウスの借り入れにフラット35を利用する場合はマイホームと同じ審査・融資条件が適用可能です。
3 不動産投資ローン
投資物件用の購入時に利用するローンが不動産投資ローンです。
事業用ローンの一種で、金利は高く借入額も大きいケースが多いです。投資物件への融資となりますので、物件に関する審査が幅広く行われます。
住宅ローンであれば、返済する人の返済能力が重視されますが、不動産投資ローンの場合は家賃収入による返済が前提となるからです。
そのため、返済者の信用力とともに、物件の立地や担保価値などが厳しく審査されます。
「住まない」家の購入に住宅ローンを利用した場合のペナルティ
住宅ローンは原則としてマイホームを購入するときのみに利用できるローンです。
しかし、住宅ローンの低い金利を目当てに、不動産投資用の物件をマイホームと偽って審査を申し込む事例もありました。
住宅ローンを悪用する事例は、近年多発し話題になったので、記憶している人もいるでしょう。
住宅ローンの悪用が発覚すると、金融機関から借入金の一括返済を求められる可能性が高いです。
もしも、住宅ローンがマイホーム専用のローンであることを知らずに、投資用物件で住宅ローンを利用してしまうとどうなるのでしょう。
たとえ知らなかったのだとしても、それを証明することは難しいため、一括返済を迫られる可能性は高いです。
うっかりでは住まない金額ですので、十分に注意します。
特殊な住宅の場合はどんなローンを使えばいい?
既述の通り、マイホーム以外に住宅ローンは利用できません。
しかし建物の用途が一つではないケースではどうなるのでしょう。
マイホーム以外の用途がある場合
「自宅兼店舗」「自宅の一室を事務所として利用している」「賃貸併用住宅」など、マイホームとマイホーム以外の用途が混同している住宅では住宅ローンは利用できるのでしょうか。
結論としては、金融機関により取り扱いは異なります。主に2つの取り扱いをご紹介します。
なお、ここでは住むための部分を「住宅部分」、店舗や事務所など事業目的に部分を「事業用部分」と呼んで区別していきます。
1 住宅部分に該当する金額のみ住宅ローンが利用可能
まずは、住宅部分は「住宅ローン」、事業用部分は「事業資金融資」を受ける方法です。住宅部分だけでも住宅ローンが利用できれば返済の負担は大分違ってくるでしょう。
ただし、住宅ローンと事業用融資を別々の金融機関で借り入れると借入時期のすり合わせが必要になります。
どちらのローンもきめ細やかな対応をしてくれる金融機関を選びましょう。
なかには、住宅ローンと事業用融資が一緒に受けられると金融機関もあります。同じ金融機関で融資を受ければ、手続きの煩雑さはかなり軽減できるでしょう。
2「住宅部分が半分以上」などの条件を満たせば住宅ローンが利用できることも
「建物全体の面積のうち自宅部分が半分以上」「事業用部分も自己使用」など、一定の条件を満たせば、建物全体に住宅ローンを適用できる住宅ローンもあります。
個々の状況や金融機関の方針により変わってきますが、ここではフラット35の要件を抜粋してご紹介します。
- 住宅部分の床面積が全体の1/2以上であること
- 店舗や事務所の部分は、住宅ローン申込者(もしくはその同居者)が生計を営むために自己使用するものであること
- 「住宅部分」と「事業用部分」との間が壁や建具などで分かれた設計になっており、原則として相互に行き来できること
- 「住宅部分」と「事業用部分」を一つの建物として登記(一体登記)できること
参考フラット35「一部分を店舗や事務所として利用するような住宅(内部で行き来できるもの)は融資の対象になりますか。」
詳細要件は金融機関ごとに異なります。上記のように、間取りや床面積で住宅ローン融資が受けられるか変わってくることがありますので、設計段階から要件を確認しておきましょう。
なお、「あと少し住宅部分が多ければ建物全体が住宅ローンの対象となる」という場合、本来は店舗や事務所部分である箇所を自宅と偽る例があるそうです。
当然そのようなことはやってはいけません。発覚すればペナルティとして一括返済が求められる可能性があります。
二世帯住宅の住宅ローン
二世帯住宅は、世帯ごとに住宅部分が分離しています。完全分離の場合、一方の世帯にとって「住まない」部分が生じますが、住宅ローンの取り扱いはどのようになるのでしょう。
ここでもフラット35を例に挙げると、「別々の住宅ローンを申し込む」「1本の住宅ローンを申し込む」の2通りとなります。
具体的には次のように分けられます。
- 登記が別々で互いの世帯が分離した設計になっている場合
別々に住宅ローンを申し込み
- 登記が一体となっており、互いの家が内部で行き来できるようになっている場合
1本のローンで申し込みが可能
ただし登記は住宅ローン以外の側面も含めて検討することが必要です。
例えば二世帯子の単独の所有として登記するしたにもかかわらず、工事費用を親が負担すると贈与税の対象になることがあります。
登記は相続にも関係してくるため、将来のことも踏まえて慎重に行いましょう。
状況の変化にはどう対応するのか
購入時とマイホームの状態が変わってしまった場合についても見ていきます。
多く耳にするのは、転勤でマイホームが空き家になってしまった場合です。
さらに、転勤によって空き家になったマイホームを賃貸に出したときは住宅ローンのペナルティは発生するのでしょうか。
このケースも最終的には金融機関により取り扱いが異なります。ただし、これまでもご紹介してきたフラット35については転勤ややむを得ない事情であれば、「住まない」家に対しても住宅ローンの適用が可能です。
さらに、いずれマイホームに戻ることを前提としていれば、空き家になる家を賃貸に出すことも可能です。
ただし、事前に金融機関に相談することが必要です。
フラット35以外の住宅ローンの場合も、まずは金融機関に相談してみるのがいいでしょう。
まとめ 住宅ローンはマイホームのためのローン
住宅ローンにおける「住宅」は自己所有で、かつ生活の基盤となる建物を指すなど、定義が厳しいです。
もしもセカンドハウスを、住宅ローン金利を想定して購入してしまうと大変です。
実際にはセカンドローンが適用され、返済時の負担が予想外に大きくなってしまうかもしれないからです。
「住まない」建物を購入するときは、どの種類のローンを利用するかにも留意しておきましょう。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所