(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンを申し込む際に、保証人が必要かどうか気にする人は意外と多いようです。
原則として住宅ローンの借入において保証人は不要とされます。
ですが、借入れ形態や審査によっては必要な場合があります。
保証人とは何で、どんな役割なのか。
また、どんな時に必要なのか。
保証人と関係の深いペアローンや収入合算についてもご紹介します。
住宅ローンでは保証会社の保証を受けるのが一般的?
住宅ローン契約時、通常は金融機関が指定する保証会社の保証を受けます。
保証会社は、住宅ローンの返済が滞ったとき借入者に代わって返済をしてくれる会社です。
住宅ローン返済が滞り保証会社が返済を代行した場合、借入者は金融機関ではなく保証会社に返済していく義務を負います。
金融機関はこの仕組みを利用すれば住宅ローンの回収不能リスクを回避できます。
そのためほとんどの金融機関が保証会社の利用を貸出しの必須要件としています。
なお、保証会社に保証を求める場合は住宅ローン契約者が保証料を負担します。


保証料が無料の場合もありますが、有料の場合は借入額や返済期間に応じて金額が分かります。
支払い方法も、住宅ローン契約時に一括で支払う方法や、金利に上乗せされ毎月の返済額に加算して支払う方法などがあります。
ただし、保証料を不要する金融機関もありますので、住宅ローンを申し込む際は諸経費をしっかり確認しておきましょう。

でも、返済が免除されるわけではなく、今度は保証会社へ返済の責任が生じるのですよね。
一体何のための保証なのでしょう。

金融機関側にとってメリットのある仕組みなのです。


また、保証会社の保証をうけることで、親類や家族など個人の保証人を探す必要性が低くなります。スムーズに融資を受けやすくなるメリットがありますね。

保証会社の保証を受ければ家族や親類などの人的保証人は不要なのが原則です。
しかし近年は夫婦間で互いに連帯保証人になるケースが増えてきています。
人的保証の種類や増加の背景はどういったものなのでしょう。
住宅ローンの保証人とは
住宅ローン契約における保証人は特に「連帯保証人」といいます。
また、フラット35や一部の金融機関では連帯保証人ではなく「連帯債務者」が必要な場合があります。
どちらも借入額全体に対して返済責任を負う点は同じですが、責任の定義や取り扱いが若干異なります。
両者の相違や特徴を、夫婦のうち夫が住宅ローン契約者(主債務者)で妻が「連帯債務」、もしくは「連帯保証人」となった場合で考えてみましょう。
【連帯債務者】
フラット35では、収入合算者は連帯債務者となることが求められます。
連帯債務者は借入金全額に対して返済の義務を負います。
「主たる債務者(※)と同じ債務を負い、協力して返済していく義務がある」とされます。
連帯債務者がいても住宅ローンの契約は1件分です。
にもかかわらず、住宅ローン控除は夫婦ともに受けられるのが大きな特徴です。
団体信用生命保険は主たる債務者のみが対象です。
ただしフラット35利用者の場合、夫婦間であれば夫婦連生団信が利用できます。
通常の団体信用生命保険と比較して金利が0.18%上乗せされますが、団信の保障範囲が夫婦2人に拡大されます。
※主たる債務者=住宅ローンの契約者
【連帯保証人】
ほとんどの金融機関で取り扱いがあります。連帯保証人とは、主たる債務者と連帯して債務の保証をする人です。
民間金融機関では夫婦それぞれが借入れをするペアローンを利用する場合は互いに連帯保証人になるのが一般的になります。
単なる「保証人」との違いは「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」がないことです。
・催告の抗弁権
支払いの請求が主たる債務者を飛ばして先に連帯保証人に来た場合に、『まず主たる債権者に請求してください』という権利
・検索の抗弁権
主たる債務者に財産があるのに連帯保証人に請求が来た場合に、『主たる債務者の財産から支払いを受けてください』という権利
上の2つの権利がないということは、主たる債務者に財産があっても、いきなり連帯保証人に請求が来ることがあります。
そしてそれに文句をいう権利がないのです。そう考えると、連帯保証人とはかなり重い責任を担っているといえそうです。
重い責任がある連帯保証人ですが、住宅ローン控除は受けることができません。
また連帯債務者と同じく、通常の団体信用生命保険ですと連帯保証人は対象外です。
連帯保証人も保障の対象とできる団信もありますが、全ての金融機関で取り扱いがあるわけではありません。
収入合算とペアローンが増えている背景は
近年、夫婦間で収入合算やペアローンを活用する世帯が増えています。
共働きの増加にともない「2人で借りて、2人で返済していく」意識が高まっているのでしょう。
厚生労働省によると、共働き世帯数は1,114世帯で、専業主婦世帯687世帯の倍近く(平成26年)になっています。
この数だけ見ても、もはや世帯主だけが住宅ローン返済の責任を負う時代ではないといえるでしょう。
連帯保証人、および連帯債務者と関係が深い「収入合算」と「ペアローン」ですが、両者のどちらを選ぶかで、借入方法や返済が大きく変わります。
こちらも夫婦を例にして特色をご紹介しましょう。
【収入合算】
審査の際、住宅ローン契約者(ここでは夫とする)の収入に妻の収入を上乗せして申し込むことをいいます。
妻の収入全額を合算できるとは限らず、「妻の収入の半分まで」「夫の収入の半分まで」などの上限を設けている金融機関も多いです。
また、「妻が正社員の場合」「妻が勤続〇年以上の場合」などの条件が課されていることもあります。
この例では住宅ローンの契約者は夫のみです。
しかし、夫婦双方の収入を前提に融資を受けるため、収入合算者に対し連帯債務者や連帯保証人になることを求める金融機関が多いです。
【ペアローン】
夫婦それぞれがローンを組む借入れ方法です。
ローンは2本組むことになるので、事務手数料も2本分必要になす。そのままだと、それぞれのローンに対する返済責任のみ負うことになります。
例えば4,000万円の住宅に対し、各々2,000万円ずつ借入れするなら、自己の借入額である2,000万円に対してのみ責任を負います。
そのため互いの債務に対して連帯保証人になるのが通常です。
たとえ互いに連帯保証人になったとしても、住宅ローン控除はそれぞれの借入額を上限に適用されます。
審査で連帯保証人を求められるケースとは
主に共働きを前提に見てきましたが、収入がなくとも連帯保証人になることを求められることはあります。
専業主婦だから「連帯保証人になれない」「保証人になる必要性がない」とは限りません。
審査を通して、金融機関がどう考えるかが最終的な結論になります。
連帯保証人になることが求められるのは、年収や勤続年数の条件が厳しいときや、団信に加入できない場合などとなります。
仮に審査によって連帯保証人になることを求められても、慌てることはありません。
夫婦間に関しては共働き・片働きを問わず2人で協力して住宅ローンを返済していく考えを持っているのが普通だからです。
連帯保証契約によって責任は増しますが、ベースになるのは通常の考え方である「夫婦間の協力」です。
ただし、万が一離婚や別居することになったときには注意が必要です。
もしも離婚や別居により連帯保証人である妻が引っ越したとしても、住宅ローンが残っていれば連帯保証人としての責任も有するからです。
離婚や別居を理由に連帯保証契約を解除するのは難しいのが現状となります。
家を購入する際に離婚や別居の可能性を考える夫婦は少ないと思いますが、知識として知っておくことは必要でしょう。
まとめ
原則として連帯保証人は不要といえますが、ローンの組み方や借り方によっては必要になってきます。
ローン申し込み前に自分たちの借り方だと連帯保証人や連帯債務が必要なのかどうか、確認しておくと安心です。
もし「ローン契約者は夫のみで、専業主婦の妻を連帯保証人にしたくない」といったケースでは、借入額や返済期間を無理のない範囲にしておくといいですね。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所