(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
現在は金利の底と見られており、「いつか金利が上昇する」と言われています。残念ながら、その「いつか」の具体的な日時は誰にもわかりません。
しかし、住宅ローンの返済額を左右する「金利」の決定方法を知ることにより、上がるタイミングを早く知ることができるようになります。金利の仕組みからご紹介します。
金利って何?金利が上がる理由は
金利は、金融機関からお金を借りる際の「利用料」のようなものです。住宅ローンにおいても、毎月の返済に金利分を上乗せして支払っているので、同じ額を借りても金利によって返済額が変わってきます。
特に、住宅ローンの一般的な返済方法である「元利均等返済」では、返済当初は返済金に占める利息の割合が多く、金利が高いと元金の減りが遅くなってしまいます。
返済額や元金の返済速度を左右する「金利」は、多くの人にとって住宅ローン選びの重要な要素です。
各金融機関の基準金利は通常、月ごとに決定し公表されます。
変更も月ごとで、大きな経済ニュースがあっても、金利変更は次月に持ち越されるのが普通です。
住宅ローンの金利は申込時ではなく「融資実行時」の金利が適用されます。
住宅ローンの融資が次月以降になる場合は、適用金利が変わる可能性があるということです。
注文住宅や建設中の新築マンションなど、ローン契約までに時間を要するケースでは特に注意したいです。
ただし、月内に契約する見通しの場合でも、非常に大きな経済ニュースが発生することで、まれに月の途中で金利が変更されることがあります。
金利決定のルールは住宅ローンの種類によって異なる
住宅ローンの金利は大きく分けて「変動金利」「固定期間選択型」「全期間固定期間」の3種類です。
このうち、「固定期間選択型」については、変動金利がベースであるため、「変動金」「全期間固定金利」の2つについて理解しておきます。
各金利の特徴は次の通りです。
- 変動金利
当初の金利は全期間固定金利よりも低水準だが、市場動向に応じて、半年ごとに金利が見直される
- 全期間固定金利
当初の金利は変動金利よりも高い水準だが、当初の金利が返済終了時まで継続
それぞれの決まり方や指標について、順に解説していきます。
変動金利の決まり方
数ある短期金利のうち「短期プライムレート」が変動金地の指標となります。
短期プライムレートとは俗に「短プラ」と呼ばれ、貸出し期間は1年以内です。
金融機関が企業に貸し出す融資のうち、最も金利の低いもの、つまり最優良企業への貸出し金利のことです。
変動金利はこの短プラを基準にして、年2回見直されます。
単純にいえば、需要と供給によって短プラは動きます。
経済が活性化し、お金を借りたい人が多ければ金利は上がりますし、逆にお金を貸したい人が多ければ金利は下がる、といった具合です。
とはいえ実際には、経済状況や市場動向など、様々な要素によって金利が決まります。
次に述べる長期金利と比較して、政策金利の影響を受けやすいと言われています。
金融機関では、「短期プライムレート+1%」を住宅ローンの変動金利とするのが一般的です。
しかし、コストや利益など、短プラ以外の要因も含めて変動金利を決定する金融機関もあります。
普段から日銀の政策や世界経済の状況を注視しつつ、金利チェックすることで、変動金利の動きを先読みすることができるでしょう。
なお、短プラの推移は日本銀行のホームページで確認できます。同ホームページによると短プラは2009年1月以降、下げ止まりの状態です。
※最頻値について(2020年3月現在)
出典日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」
固定金利の決まり方
固定金利は「長期金利」の利回りによって決まります。
実は長期金利とは金融機関が長期(1年以上)にお金を貸出す際に適用する金利の総称です。
貸出期間が1年以上の国債や地方債、社債、預貯金など、多くの金融資産が長期金利と分類されます。
ですが一般的に長期金利というと「10年もの国債」の利回りを指します。住宅ローンの指標も同様に「10年もの国債」です。
10年もの国債の金利は、国債市場の需要と供給によって決まります。市場が国債について「利回りが低くても買い(需要高)」と判断すれば利回りは低くなりますし、
逆に「利回りが高くないと買う価値がない(需要低)」と考えれば利回りは高くなります。
ここでいう市場の判断は償還時(10年国債なので10年後)の予測や期待など、多くの要素により決定されていきます。
金融政策の影響も受けますが、短プラほどその割合は高くありません。
償還までの期間が長いため、長期的な視野で経済成長(あるいは縮小を)を見通していくことになるからです。
10年後の景気を個人が正確に見通すことは不可能ですが、国債の利回りを確認することで、市場がどう考えているかは推し量ることができます。
全期間固定金利は申込時の金利が完済まで継続するので、当初の金利が特に重要です。
住宅ローン申し込みを検討している人は、長期金利の推移を確認して動向を把握しておきます。


つまり「景気が良くなれば金利が上がり、景気が悪くなると金利が下がる」といった部分です。


逆に景気が下がれば資金需要が低下し、金利が下がる、という考え方です。


しかし短期金利は1年以内の貸出しであるため、直近の金融政策に敏感に反応するのです。
長期金利は償還日における経済成長や物価変動を予測するため、直近の金融政策の影響は小さくなります。
例えば、100万円で国債を買い、10年後に利息がついて110万円で償還されたとします。
物価が同じであれば10万円の利益となりますが、利息分以上に物価が上がっていたら、実質的には利益がありませんよね、

経済成長(物価上昇)すると考えると、それ以上の利回りじゃないと利益が出ないんですね。

住宅ローンの金利は今後上がる?
既述の通り住宅ローンの金利は、景気が良くなることで上昇するのが大原則です。
とはいえ、日本経済の状況を考えると、すぐに金利が上昇する気配は薄いです。
なくとも、急激な上昇は考えにくいです。
変動金利を選ぶ場合のポイント
金利上昇の可能性が薄いなら、住宅ローンの金利選択は金利水準の低い変動金利が有利なのかというと、そうとも限りません。
変動金利は金融政策の影響で金利が変わる可能性があるからです。
右肩上がりの金利上昇はなくとも、微上昇や変動はあると見込まれます。
住宅ローンの返済が厳しい場合、少しの金利上昇が家計に大きな打撃を与えるかもしれません。
変動金利を選ぶ場合は、返済に余裕があることが絶対条件となります。
全期間固定金利を選ぶ場合のポイント
変動金と比べると、やや金利水準が高い全期間固定金利ですが、これまでの金利推移をみると、2020年3月現在はかなりの低金利となっています。
これだけの低金利で今後の金利上昇リスクをなくすことができるなら、十分に魅力ある住宅ローンと言えるでしょう。
とはいえ、総返済額で考えると、変動金利よりも負担が重くなる可能性が高くなるのも事実です。
返済の途中で出費増加や収入減があっても返済できる額かどうか、見通しをもっておきます。
住宅ローンの金利が上がる理由は、変動金と全期間固定金利で違う!
住宅ローンの金利が上昇するのは、基本的には景気が良くなった時になります。
ただし変動金利は政策金利の影響が大きいです。
政策金利は、日本銀行の「金融政策決定会合」で話し合われます。
変動金利を選択する人は、日本銀行の会見や発表をこまめにチェックするといいでしょう。
また、全期間固定金利は10年もの国債の利回りが基準になります。
10年もの国債の利回りは、国債を取り扱う金融機関や証券会社等のホームページに掲載されています。
全期間固定金利を検討している人は、推移を注視しておくといいでしょう。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所