金利の知識

住宅ローンの変動金利、高リスクの「未払利息」はどうやって起こる?

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

変動金利は適用金利が低く、固定金利と比較して毎月返済額を安く抑えることができます。

その分金利変動の影響を受けますが、低金利が続く今、変動金利のリスクは小さいように感じます。

しかし過去の実績が将来に当てはまるとは言えません。変動金利のリスクは潜在化しているだけで、なくなったわけではないのです。

さらに、変動金利には金利が大きく上昇したさいには「未払利息」が発生する恐れもあります。

変動金利が人気の今こそ、変動金利のリスクを認識しておきましょう。

固定金利と比較して人気?変動金利

住宅ローンの金利は金利が定期的に見直される変動金地と、完済時まで金利の変わらない全期間固定金利があります。2年や3年、5年など、特定の期間だけ金利が変わらない期間固定型金利もありますが、固定期間終了後はその時点で適用金利が見直される(金利変動がある)ため、変動金利の一種と考えていいでしょう。

住宅金融支援機構の「2018年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」よると、「変動型」の利用割合が6割近くと最多を占めています。

2018年第一回調査における金利選択割合】

  • 変動金利 57%
  • 固定期間選択金利 25.3%
  • 全期間固定金利 17.7%

出典住宅金融支援機構「2018年度 民間住宅ローン利用者の実態調査【民間住宅ローン利用者編】(第1回)」(PDF

変動金利を選択する人の割合が増えている背景として、低金利が長く続いたことで金利上昇への不安が薄くなっていることがあるのではないかと推測します。

金利は経済的な影響はもちろん、日銀政策によるコントロールもある程度受けます。

日銀は当面の間、「低金利政策」を継続すると発表していますが、将来的には金利を上昇させることを容認しています。

金利上昇の容認幅は非常に小さいものです。ですが少なくとも、低金利が永遠に続くことは考えないほうがいいでしょう。

変動金利のリスクはどの程度?

現在は「超」がつくほどの低金利であるため、更なる金利低下は期待しにくく、金利が上がった場合に備えておくほうが現実的です。

もしも金利が上昇した場合の家計への影響はどの程度なのでしょう。実は変動金利は、市場金利が上がっても直ぐに返済額が増えるわけではありません。

通常、金利の見直しは半年ごとですが、見直された金利が返済額に反映されるのは5年ごとになります。

変動金における1.25倍ルールとは

変動金利で住宅ローンを組んだ後に金利が上がってしまったとしても、5年間は返済額が変わりません。

そのため、金利上昇がすぐに家計に影響を及ぼすわけではないはずです。

金利上昇が返済額に反映される前に繰上返済により元金を減らせば、金利上昇の影響を緩和できるでしょう。

また、金利が上昇して返済額が上がる場合も、1.25倍ルールがあります。

1.25倍ルールとは、金利上昇による返済額の増額を従前の1.25倍までに制限する決まりです。

例えば、当初返済額が毎月8万円の場合、6年目以降の返済額は、毎月10万円が上限となります。

借換えで金利上昇リスクを回避するときの注意点

金利が継続して上昇しそうな場合は、金利の変わらない固定金利へ借換える方法もあるとされます。

金利がその後、長期的に上がり続けるなら、早い時点で固定金利に乗り換えたほうが得になるケースも多いでしょう。

ただしその方法だと通常は、低い金利(変動金利)から高い金利(固定金利)へ乗り換えることになってしまうと考えられます。

つまり、借換えすることでかえって返済額が高くなってしまう可能性が高いのです。

固定金利への乗り換えによって金利上昇の不安からは逃れられても、毎月返済額が増えてしまうのは負担でしょう。

変動金利を選択する人で、「金利が上昇したら借換えすればいい」と考えている人は、適用金利が高くなる可能性が高い点を知っておきたいです。

変動金利の特別なリスク「未払利息」とは

変動金利では金利上昇時に返済額が急激に増加するのを避けるための規制が1.25%ルールです。

本来は返済する人を守るための決まりですが、金利が想定以上に上がると思わぬ副作用が生じることがあります。

それが冒頭でも挙げた、変動金利の「未払利息」です。

金利上昇時の返済

先ほども例を出しましたが、当初返済額が毎月8万円のケースで金利がおおきく上がったとしても、6年目以降の返済額は毎月10万円が上限です。

金利上昇時により本来の返済額が10万円を超えるにも関わらず返済額が10万円だと何が起こるのでしょう。

まず、返済額の内訳は「借入元金」とその「利息」です。もしも返済額の内訳が「利息だけで10万円」の場合は、返済しても「借入元金(=住宅ローン残高)」が減っていきません。

未払利息は返済額が利息分にも足らない状態をいいます。先の例でいうと、返済額が利息だけで「10万円超」になってしまうケースです。

この場合は住宅ローン元金が減らないだけでなく支払いきれない利息(未払利息)分も蓄積していきます。

未払利息は毎月の返済とは別に発生しますので、別途支払いをすることになります。

返済方法は金融機関によって異なりますが、住宅ローン完済時に一括返済を求められることが多いようです。

なお、一般的には未払利息に対してさらに利息がかかることはありません。

未払利息の対処法は早いほどベスト

未払利息が発生してしまうと、返済計画に狂いが生じてしまいます。

そのため、発生する前に対策を行えるように備えておきたいです。

未払利息への対処法は金利上昇時の対策とほぼ同じあり、「繰上返済」と「借換え」が主軸軸です。

未払利息発生時の繰上返済

繰上返済には「返済額軽減型」と「期間短縮型」の2つがあります。通常の繰上返済は、毎月の負担を減らす返済額軽減型が主流ですが、総返済額を減らす効果は期間短縮型よりも小さいです。

返済が苦しくないのであれば、より多く総返済額を減らせる「返済期間短縮型」を利用したいですが、金利上昇時はただでさえ返済額が増える時期です。

効果の大きさだけを重視して「期間短縮型」を選んでも、毎月の返済が苦しくなっては意味がありません。

家計が厳しければ、効果が小さくとも「返済額軽減型」がいいでしょう。家計の状況に合わせて繰上返済を行いましょう。

なお、未払利息分だけを先行して返済することで、将来の「未払利息の支払い義務」を避ける手段もあるかもしれません。

しかし金利が上昇し続けている状態では、元金を減らさない限り未払利息が発生し続ける可能性が大きいです。

そのため(一般的に利息のかからない)未払利息を返済するよりは、元金を減らせる繰上返済を検討するほうがいいでしょう。

未払利息発生時の借換え

変動金利から固定金利の借換えは既述の通り、適用金利が高くなる可能性が高いです。

今後も金利上昇が続くならば適用金利が高くなっても固定金利に借換えするメリットはあります。

ただし未払利息が発生しているときは、通常の借換え諸経費に加え、蓄積した未払利息も一括返済しますので、借換えにかかる費用をしっかりと準備していきましょう。

どうしても「固定金利に借換えたいけれど毎月の負担は増やしたくない」人は、借換えと同時に繰上返済を行う方法もありあます。

未払利息の早期発見のために

未払利息が発生するような金利上昇時には、繰上返済や借換えなどで家計への影響を抑えますが、対策は少しでも早く行いたいです。

普段から金利動向をチェックし、金利上昇の兆しがあれば繰上返済資金や借換え諸経費を確認していきましょう。

「気が付いたら未払い利息が発生していた!どうしよう!」といった状況を避けるためにも金融機関から定期的に送られてくる住宅ローンの報告書を常にチェックしましょう。

住宅ローンの報告書には返済額について「利息部分」と「元金部分」の内訳が記載されていますので、元金が着実に減っているかどうか確認します。

めったにないけれど、高リスクな「未払利息」

未払利息が発生する事態はそうそうないと思いますが、もしもそのような事態になれば返済計画に深刻な影響を及ぼします。

未払利息が発生する前に借り換えや繰上返済を行い、返済難に陥るのを防ぎましょう。

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