(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンといえば、自宅を担保に入れて融資を受けるのが一般的なイメージです。
しかし、担保が不要の住宅ローンも存在することをご存じでしょうか。
自宅を担保に入れたくない人にとっては興味深い住宅ローンですが、通常の住宅ローンとの違いも多いですので、内容をよく知って利用することをおすすめします。
担保がいらない住宅ローンについてご紹介します。
担保がいらない住宅ローンとは
担保がいらない住宅ローンを「無担保住宅ローン」といます。
教育ローンやリフォームローンなど、担保の提供がいらない「無担保ローン」は複数あります。
通常の無担保ローンの住宅ローン版と考えるといいでしょう。
なお、無担保ローンに対し、担保が必要なローンを「有担保ローン」といいます。
住宅ローンは融資額が大きく、返済期間も長いため、返済リスクも大きくなります。
通常の住宅ローンでは、返済リスクを回避する手段として、自宅を担保に入れるのです。
自宅が担保に入っていれば、万が一返済不能に陥っても、金融機関(保証会社)は自宅を売却して住宅ローンの返済に充てることが可能です。
それができない無担保住宅ローンは、金融機関にしてみれば返済不能リスクが高いことになります。
そのため、「融資額の上限が低い」「リスクを抑えるために融資期間が短い」などの特徴を持つことになるのです。
詳しく見ていきましょう。
無担保住宅ローンのメリットとデメリット
無担保住宅ローンのメリット
メリット1 借入までのスピードが早い
通常の審査では、住宅ローンを「返済する力」とともに、物件の「担保価値」も審査されます。
しかし無担保ローンでしたら、担保価値の審査が不要となり、審査がスピーディーです。
また、抵当権の設定にかける時間も省くことができます。総合的に、借入までの期間が短くなることが期待できます。
メリット2 初期費用を抑えることが可能
抵当権の設定には住宅ローン契約書に貼付する印紙代、登記の登録免許税、司法書士報酬などの諸経費が発生します。
無担保ローンではそれらがかからないため、初期費用を抑えることが可能です。
当然、これらの手続きにかける手間も省くことができます。
メリット3 担保が不要
担保が不要なので、自宅に抵当権が設定されません。
抵当権がない分、審査において融資額や適用金利が不利になる可能性はあります。
それでも、抵当権に抵抗がある人にとっては精神上のメリットが大きいでしょう。
ただし、抵当権が設定されないからといって、必ずしも差し押さえがないわけではありません。
例えば滞納が続いたり、自己破産したりすれば、自宅が差し押さえられる可能性があります。
無担保住宅ローンのデメリット
デメリット1 取扱金融機関が少ない
担保がいらない住宅ローンを取り扱っている金融機関は少ないです。
取り扱っている金融機関を探すところから始めなければならず、ハードルが高いかもしれません。
「無担保住宅ローン」と明記されていても、融資対象が「借り換えのみ」「リフォームのみ」などの制限がある場合もあります。
取り扱いの有無だけでなく、要件も確認しておきましょう。
デメリット2 金利面の不自由さ
返済方法の選択肢が少ないです。
変動金利はおおむね取り扱いがあるようですが、所定の期間固定金利となる「期間選択型」や完済まで金利が変わらない「全期間固定金利」は選択できない金融機関があります。
また、通常の住宅ローンと比較すると金利が高い傾向にある点にも注意が必要です。
デメリット3 融資期間・融資額の枠が小さい
通常の住宅ローンは最長35年間です。
一方、無担保住宅ローンの融資期間は最長でも15年~20年程度となります。
また、融資上限も1000万円~2000万円程度と小さいケースがほとんどです。
無担保住宅ローンを見てみよう
メリットとデメリットをご紹介しましたが、あくまで一般的な特徴です。
無担保住宅ローンは商品による差が大きいため、実際の商品をいくつか挙げてみます。
【新規購入(建設)でも利用可能なタイプ】
| 東京東信用金庫 | 瀬戸信用金庫 | 東邦銀行 |
特徴 | 購入資金・リフォーム・借換など、融資対象が幅広い | 購入資金・リフォーム・借換など、融資対象が幅広い | 融資金額は取得費用の60%または1,000万円のいずれか少ないほうを上限 |
最高額 | 2000万円 | 2000万円 | 1000万円 |
最長 | 20年以内 | 20年以内 | 15年以内 |
年齢 | 満20歳以上70歳未満(最終返済時満80歳以下) | 満20歳以上満70歳未満(最終返済時満80歳未満) | 満20歳以上(最終返済時満75歳以下) |
勤続年数 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
年収要件 | 安定した継続収入 | 安定した継続収入 | 融資額に見合った安定収入 |
その他 | 営業エリア内に居住または勤務 | 解体費用のみの利用も可能(上限500万円) | リフォームは中古住宅購入と同時に行う場合に対象 |
金利 | 変動金利 期間選択型 | 変動金利 期間選択型 | 変動金利 期間選択型 全期間固定 |
公式サイト | http://www.setoshin.co.jp/kozin/kariru/kojin_loan/jutaku/mutanpojutaku.html | http://www.tohobank.co.jp/kojin/loan/reform/index.html |
新規購入(建設)の場合に利用できるほか、建て替えの場合の住宅解体費用や、新居の家具家電購入費用などに使えるものがあります。
一方、東邦銀行は「融資金額は取得費用の60%または1000万円のいずれか少ないほうが上限」「リフォームは中古住宅購入と同時に行う場合のみ」といった制限があります。
【使途に制限があるタイプ】
| 群馬銀行 | 千葉銀行 |
特徴 | 借換専用無担保ローン | 公的住宅融資の借換専用 |
最高額 | 1000万円 | 1500万円 |
最長 | 15年以内 | 20年以内 |
年齢 | 満20歳以上満65歳未満(最終返済時満81歳未満) | 満20歳以上(最終返済時満76歳以下) |
勤続年数 | 給与所得者は1年以上、会社役員・個人事業主は3年以上 | 勤続年数に記載はないが、パート・アルバイト・年金収入のみの場合は不可とのこと |
年収要件 | 融資額に見合った安定収入 | 融資額に見合った安定収入 |
その他 | リフォームは、借換と同時に行う場合に対象 | 借換融資の「残存期間+6か月以内」まで延長可能 |
金利 | 変動金利 全期間固定 | 変動金利 期間選択型 全期間固定 |
公式サイト | https://www.gunmabank.co.jp/kojin/kariru/jutaku/lineup/mutanpo/ | https://www.chibabank.co.jp/kojin/loan/housing/lineup/other/unsecured/outline.html |
※情報はすべて2019年9月17日現在のものです
こちらは借換専用の無担保住宅ローンです。特に千葉銀行は「公的住宅融資の借り換え専用」の無担保住宅ローンとなっています。
ここでご紹介した無担保住宅ローンはすべて、ローン審査における年収水準が明確にされていません。
年収要件は「安定した継続収入」もしくは「融資額に見合った安定収入」などとなっています。
担保がないので、融資額は収入額に依るところが大きいのでしょう。そのため一律で「年収〇〇万円以上」とする表記がなじまないのだと推測できます。
無担保住宅ローンが向いている人は
無担保住宅ローンは、融資枠が小さいため、新規で住宅を購入する人には不向きかもしれません。
ただし、抵当権の設定に抵抗がある人で、次のようなケースなら検討の余地があるでしょう。
- 割安な中古物件(担保評価が低い)を購入してリフォームをしたい
- 自宅をコンパクトなものに建て替えたい
中古物件の場合、担保評価が低かったり、売主が売却を急いだりするケースがあります。
そういった場合、無担保ローンなら担保評価は問題になりませんし、融資までのスピードも早いです。
また、自宅の建て替えはすでに土地を所有しているので、総額が抑えられます。
そういった場合なら融資枠の小ささは制限になりにくいでしょう。「(比較的)少額を、さっと借りて、短期間で返したい」といった人に向いていそうですね。
すでに住宅ローンを借りている人も、借換時にメリットがある場合があります。具体的には次のような場合です。
- 借換をしたいが、担保評価が低く有担保のローンでは必要な額を借りられない
- 審査の手間・諸費用をかけずに借換をしたい
無担保ローンなら、担保に対する審査がないので担保評価は問題になりません。
また、審査の手間もかなり省くことができます。抵当権の設定がない分借換費用も安く抑えることができます。
「金利が高めだから借換メリットはないのは?」と疑問に感じる人もいるでしょう。
確かに、借換をする以上、適用金利が低くならなければなりません。既述の通り、無担保住宅ローンは金利水準が高い傾向があります。
ただし、現在は住宅ローン金利が全体として低金利です。10年以上前に住宅ローンを借りた人が借換する場合は、メリットが生じるケースも少なくありません。
融資までのスピードや手間の軽減を重視する人は、検討してみてもいいでしょう。
まとめ:無担保住宅ローンの特徴を知り、賢く利用しよう
無担保住宅ローンはその数が少なく、利用を考える人はあまり多くないでしょう。
しかし早く融資を受けたい場合や、抵当権を設定されたくないといった人にとってはメリットがあります。
金利水準の高さや融資枠の小ささなどのデメリットも考慮し、利用するかどうか判断するといいでしょう。
参考【住宅ローンの選び方】初心者でも迷わないための比較ポイントと必須知識を解説!

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所