(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅購入時に、すでにマイカーローンを抱えている人はいるでしょう。
まだマイカーを持っていない人でも、「新住まいを手に入れるこの機会に、マイカーもローンで購入しよう」と考えることがあるかもしれません。
しかしマイカーローンは住宅ローン審査に影響を与えます。
審査でチェックされる「返済比率」では、住宅ローン返済金も含めて算出されるからです。
住宅ローン審査においてマイカーローンがどのように関係するのか紹介します。
住宅ローン審査にマイカーローンが影響する理由は「返済比率」にあり
住宅ローンの審査では申込者の「返済比率」がチェックされます。返済比率の計算方法や役割について紹介します。
住返済比率にはマイカーローンも含まれる
住宅ローン審査における「返済比率(返済負担率)」とは年収に占める年間返済額の割合のことで、次のように算出します。
「返済比率(返済負担率)(%)=年間返済額÷年収×100」
上記の「年間返済額」には住宅ローン以外の借入金も含まれるため、マイカーローンがあればその分返済比率は高くなります。
金融機関ごとに返済比率の基準があり、割合が基準を超えると融資が受けられない、もしくは借入額が減額される恐れがあります。
つまり、マイカーローンがあると住宅ローンの審査が厳しくなるのです。
返済比率は重要な審査項目
金融機関の審査において返済比率はどの程度、重要視されているのでしょう。
住宅金融支援機構が金融機関に対して行った「令和2年度 住宅ローン貸出動向調査」の結果を紹介します。
住宅ローンの審査で「重視度が増している審査項目は」との問いに対する返答割合
- 返済負担率(毎月返済額/月収) 65.9%
- 職種、勤務先、雇用形態 45.3%
- 借入比率(借入額/担保価値) 39.0%
出典住宅金融支援機構 「令和2年度 住宅ローン貸出動向調査(PDF)」
「重要度が増している審査項目」として、最も割合が高かったのは返済負担率(返済比率)です。
なお、本調査では「年間の返済比率」ではなく「月の返済比率」が挙がっています。
毎月の収入の中から住宅ローンの返済をして行くことになるため、そこに無理がないかが重要視されるのでしょう。
さらに住宅金融支援機構の「2019年フラット35利用者調査」によると、「返済比率を25%以下に抑えた世帯」は全体の65%に上ります。
「返済比率を30%以下に抑えた世帯」は全体の約90%であり、返済比率が30%を超える世帯は約10%と少数派です。
返済比率に影響を与えるのはマイカーローンだけではない
返済比率は収入に占める「返済金」の割合です。そのためマイカーローン以外にも以下のようなローンがあれば影響を受けます。
- 家電ローン
- 携帯電話の端末代金の分割払い
- クレジットカードの借入れ枠
- 奨学金
家電ローンや携帯電話の端末代金については「返済金」である意識を持っていることでしょう。
しかしクレジットカードの借入れ枠や奨学金については、意識しにくいかもしれません。
クレジットカードの借入れ枠は、実際に借入れ(キャッシング機能)を利用していなくとも「借りている」とみなされる可能性があります。
クレジットカードの保有枚数が多い場合、知らずのうちに返済比率が上昇しているかもしれません。また、奨学金を返済中の人も注意が必要です。
住宅ローンを組んだら家計が苦しくなると考え、「住宅ローンを組む前に自動車を購入(マイカーローン)しておこう」と考える人もいるかもしれません。
しかしマイカーローンを組むことで住宅ローンにおいて希望借入額に届かなくなってしまっては問題です。
住宅ローン前のマイカーローンは、慎重に検討します。
マイカーローンは借入額にどの程度影響を与えるか
すでにマイカーローンを組んでしまっている人もいることでしょう。
その場合、マイカーローンは借入額にどの程度影響を与えるのでしょう。
一般的な審査の例に紹介します。
マイカーローンによる借入額の変化
既述のように、金融機関ごとに返済比率の基準が設けられています。例えば返済比率の基準が「30%」の場合で考えると、年収600万円の人の年間返済額の上限は180万円(600万円×30%)です。年間返済額に金利と返済期間を加味したうえで「融資可能枠」を逆算します。
なお、実際の適用金利が1%を切るような場合でも、そのような低い金利で「融資可能枠」が計算されるとは限りません。将来の金利上昇も見込んで、市場金利よりもやや高い金利で審査されるのが一般的だからです。適用金利によって、借入可能額は以下のように変わります。
年間返済額180万円の場合の借入可能額
適用金利3%の場合:約3897万円
適用金利2%の場合:約4528万円
※35年返済のケースです
上記のような流れで融資可能な上限枠が決まります。
ただしこれは返済金が住宅ローンだけとした場合です。
そこにマイカーローンが含まれると、年間返済額の枠がさらに圧迫されてしまいます。
なお、返済比率の計算では返済金の「金額」が重要です。
マイカーローンの残高は、審査全体では考慮されるかもしれませんが、返済比率の計算においては影響を与えません。
そのためマイカーローンの「返済期間が長い」「残高が大きい」場合でも、毎月の返済額が小さければ返済比率への影響は抑えられます。
マイカーローンの影響で借入額が下がりそうな場合の対応
マイカーローンの影響で借入額が下がりそうな場合どのようにして住宅購入を進めていけばいいでしょう。
借入額が不足する場合に備えるには
例えば「4000万円借りたいのに(マイカーローンが影響して)借り入れが下がりそう」な場合、住宅ローンの借入額を調整する方法と、マイカーローンを調整する方法に大別されます。
住宅ローンの借入額を調整するなら、「頭金を用意する」「物件価格を見直し、借入額を少なくする」などの方法があります。
マイカーローンを調整するなら、マイカーローンの繰上返済があります。
住宅ローン金利よりマイカーローンの金利が高いならば、マイカーローンを返済したほうがお得でしょう。
ただし、マイカーローンの繰上返済の手数料はマイカーローンの借入先によって異なるので注意します。
金融機関を見直す方法も
他の金融機関で審査をうけるのもひとつの手です。
ただし、住宅ローン審査の申込履歴は残ります。
あまり多くの金融機関に審査を申し込むと「ずいぶん多くの金融機関に申込をしている(=審査に落ちている)のだな」という印象を持たれる可能性があります。
そのため、複数の金融機関に申し込む場合も、申込先は厳選しましょう。
住宅ローンとマイカーローンを同時期に組むことは家計にも影響が
住宅ローン審査に影響があるなら、住宅ローンを組んだ後にマイカーを購入すれば問題ないと考える人もいるでしょう。
住宅ローン審査を通すことが目的ならばそれで良いのでしょうが、家計面の負担も考慮します。
住宅ローンを組んだ後に新たなローン(マイカーローン)が加わることは、次のような懸念が生じます。
- 返済額が増えるので、シンプルに家計の負担が増える
- 住宅購入で毎月の返済リズムが整う前にマイカーローンを組んでしまうと、「引き落とし口座の残高不足」「一時的に現金が不足する」などの事態が発生しやすくなる
- 新たに車を購入するならガソリン代、自動車保険、車検代など車周りの諸経費も増える
まとめ マイカーローンが住宅ローン審査に与える影響を理解しよう
マイカーローンをはじめとした他の返済金は、住宅ローン審査にマイナスの影響を与えます。収入に対して、希望借入額が小さければ問題は少ないでしょうが、ギリギリの人は注意が必要です。
他の返済金も考慮したうえで住宅ローンの借入額は適切かどうか考えていきます。
仮に他の返済金が住宅ローンの借入額に影響を与えそうな場合は、住宅ローンの希望借入額や他の返済金を調整して住宅ローン審査に臨むといいでしょう。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所