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個人事業主の住宅ローン審査は厳しい?理由と注意点を紹介

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

個人事業主の住宅ローン審査は厳しい?理由と注意点を紹介

様々な働き方が認知されている現在、個人事業主として収入を得ている人は少なくありません。

しかし住宅ローンの審査に関しては個人事業主であることが不利になるとも言われています。

なかには「個人事業主は住宅ローンが組めない」と思っている人もいるかもしれません。

条件が厳しくなる傾向にあるのは事実ですが、注意点を知ることで審査を通りやすくすることは可能です。

個人事業主が住宅ローンを組みたい場合に知っておきたいことを紹介します。

個人事業主の住宅ローンを組むのが難しい理由

個人事業主の住宅ローン審査が厳しいとされる理由は次の通りです。

1:会社員と比較して収入の安定性が乏しい

住宅ローンの審査では収入の多さも大切ですが、同時に収入の「安定性」も重要視されます。

会社員なら、勤めていれば会社から給与が支払われるため、一定の収入が得られるはずです。

しかし個人事業主は事業環境の変化に応じて収入が変動しやすく、前年の所得(収入)が大きい場合でも「一時的なものではないか」と厳しく見られてしまう可能性があります。

2:事業継続の難易度が高い

また、経営の「安定性」からいっても組織が大きい「会社」の方が高いといえます。

個人事業主の事業は個人の力量によるところが大きいので、本人が何らかの病気やケガで働けない、といった事態に陥ると事業継続に大きく関わるでしょう。

さらに、有給や産休制度などの制度面でも会社のほうが有利です。

制度は直接的に収入に結びつくわけではありませんが、継続して働きやすくなり、結果的に収入の継続性につながります。

3:「所得」で審査をされる

会社員の場合は社会保険料や所得税などを差し引く前の年収で審査されますが、個人事業主は売上(収入)から経費を差し引いた「所得」で審査されます。

さらに前値所得だけでなく、直近の3期の所得を総合して審査する金融機関が多いです。

3期連続して安定した所得を得ていることが重要ですので、「たまたま去年は設備投資が重なって赤字になってしまった」といったイレギュラーなケースでも審査に通らない可能性があります。

なお、ここでいう個人事業主と会社員は次のような者と考えます。

  • 個人事業主:法人成りはしておらず、個人で確定申告をしている事業主
  • 会社員:給与収入のみを得ている者で、役員等ではない

個人事業主でも、住宅ローンが「借りられない」わけではない

住宅ローン審査が難しい傾向にある個人事業主ですが、住宅ローンが組めないわけではありません。

個人事業主と比較すると住宅ローンを利用しやすい会社員といえども審査はありますし、審査において留意したい基本項目は会社員でも個人事業主でも共通です。

住宅ローン審査前に考えたい基本項目を3つ紹介します。

なお、会社員の場合は「収入」で審査されますが、ここでは「所得」と記載していきます。

1:返済負担率は適切か

所得(会社員の場合は「収入」以下同じ)に対する返済金の割合は適切か考慮します。希望借入額の年間返済額をシミュレーションして年収に対する割合を確認します。なお、住宅ローン以外にも返済金がある場合は加味して計算します。
例えばフラット35の場合返済負担率の基準を次のように挙げています。

年収400万円未満 30%以下
年収400万円以上 35%以下

※フラット35「【フラット35】ご利用条件」より

個人事業主の場合は所得で上記の水準に収まるかを確認します。

ただし、上記はあくまで基準ですので、個別の審査ではより厳しくなることも考えられます。

そのためギリギリではなく、余裕があることが望ましいです。

2:返済プランに無理はないか

返済負担率だけでなく、返済プランの健全性にも留意します。例えば完済時の年齢です。

個人事業主は定年年齢が決まっていないため、「完済年齢を高くても大丈夫」と考える人がいるかもしれません。

しかし会社員と同じように、完済年齢が高いと不利になりがちです。

返済プランの健全性を上げたい場合は、頭金もあるほうが望ましいです。特に借入額が大きくなるときは、頭金の無いフルローンは「自己資金が不足しているのか」と、心証が悪くなる懸念があります。

3:健康面に問題はないか

ほとんどの住宅ローンでは借入の際に、団信に加入することが求められます。

しかし団信は生命保険の一種ですので、健康でなくては加入できません。

引き受け条件を緩和している「ワイド団信」もありますが、団信保険料が割高です。

金利上乗せの場合、年0.3%程度上乗せされることが多くその分返済の負担が増します。

その分返済額を圧縮して審査希望を出せるといいでしょう。

審査前に、自身にとってワイド団信が必要かどうか確認しておきましょう。

一部には、団信に加入しなくとも利用可能な住宅ローンがあります。

しかし団信未加入で住宅ローンを組んでもいいのは、団信に加入しなくとも問題ないだけの自己資金を持っている、

すでに十分な保険に加入している、といった条件を満たす人のみです。

以上の3つ考慮し、必要に応じて自ら調整を行うことで住宅ローン審査に備えましょう。

個人事業主が住宅ローンを借りる場合の注意点

注意点の多くは会社員と変わりはありません、いくつか個人事業主特有の注意点もあります。

経費の見極めが甘くないか

個人事業主は経費を計上することで自身の所得を圧縮することができます。

所得を圧縮ことで納税額も抑えることができると考えられるため節税面ではメリットがあります。

しかし住宅ローン審査においては所得を抑えることはデメリットです。

必要な経費を削ることは事業運営上よくありませんが、経費の要、不要を確認することは必要でしょう。

忙しさに忘れて納税手続きを忘れていないか

個人事業主は国民年金保険料や国民健康保険など社会保険料の他、事業内容に応じて事業税や消費税等を自ら納めなければなりません。

仮に支払いが遅れて滞納してしまうと審査に悪い影響を与えます。

「続きが煩雑」「忙しさにまぎれてうっかり期限に遅れてしまった」といったことが無いようにします。

事業所と自宅を兼ねる場合の面積割合は適切か

個人事業主の場合、自宅に店舗や事業所を併設するケースもあるでしょう。

その場合、住宅ローンが適用されない金融機関もあるので注意します。

事業用ローンしか使えないときは、適用金利が高くなる可能性がありますし、住宅ローン控除も対象外です。

例えばフラット35では、自宅の床面積割合が1/2以上であるほか、「自宅」と「店舗・事業所部分」を一つの建物として登記することなど所定の要件を満たすことで融資対象となります。

金融機関ごとの要件をよく確認しておきます。

個人事業主に厳しい金融機関を選んでいないか

審査は金融機関ごとに基準や新方法が異なります、しかしネット銀行は審査が厳しい傾向にあるといわれます。

これは条件ごとの基準に沿って定型的に審査しているからとでしょう。

案件ごとに条件や個別要件を考慮しながら審査するよりもスピード感をもって審査が可能ですし、審査コストがスリム化できるメリットがあります。

反面、柔軟性がなく所定の「基準」で厳しく審査されることになります。

ネット銀行の金利の低さは魅力かもしれませんが、審査に通ることが先行します。

個人事業主は、金利よりも審査を個別に判断してくれる金融機関の方が向いているでしょう。

個人事業主が住宅ローンを借りる方法

審査が厳しい傾向の個人事業主が住宅ローンを借りるためには、次のような住宅ローン、もしくは金融機関を選ぶといいとされています。

方法1 フラット35を選ぶ

フラット35は、耐震性や床面積など物件要件は厳しいですが、人的基準は緩やかな面があります。

例えば所得を証明する書類は申し込みをする年の「前年」と「前々年」、つまり2期分です。一般的には3期分の書類が必要な金融機関が多いことと比較すると大きな違いです。

また、事業を始めてから3年経過していない個人事業主にとってもメリットがあるでしょう。

方法2 付き合いのある金融機関で相談する

個人事業主として付き合いのある金融機関があれば、そこで住宅ローンを検討するのも一つの方法です。

積み重ねた信頼関係のある金融機関であれば、書類上の所得だけで判断するのではなく、事業内容や世帯で保有している資産状態などを含めた総合的な審査が期待できます。

「去年は新規事業の準備金が多く赤字になってしまった。

今期に入って赤字はほぼ回収できている」といったケースでも、状況を考慮してもらいやすいはずです。

まとめ 個人事業主でも住宅ローンは借りられる

個人事業主は、審査条件が厳しい傾向にあるのは事実です。

しかし、必ずしも審査に通らないわけではありませんし、審査に通りやすくなるよう、工夫できることも複数あります。

属性だけで諦めず、出来ることを行った上で審査に望みましょう。

参考住宅ローン審査で重要な「属性」とは

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