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住宅ローンの審査で契約社員は不利になることも?どこに注意すればいい?

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

住宅ローンの審査で契約社員は不利になることも?どこに注意すればいい?

さまざまな働き方がある現在、契約社員として収入を得ている人は少なくありません。

正社員以外の働き方も、社会を支える重要な労働力です。

しかし「マイホーム購入」となると話は少し違ってくるかもしれません。

というのも、住宅ローンの審査においては申込者の属性が重要視されるからです。

属性とは年収や勤続年数のことで、雇用形態も含まれます。

契約社員であることが住宅ローン審査に与える影響や、契約社員が住宅ローンを組む場合の注意点を紹介します。

契約社員とは?正社員と比較した場合の違い

住宅ローン審査において一般的には契約社員であることは不利だとされます。

その理由を理解するには、契約社員と正社員の「契約上の違い」を知るといいです。

契約社員とは

契約社員と正社員との違いとして大きいのは「雇用期間」です。正社員は雇用期間の定めがない「無期雇用」ですが、契約社員は契約期間が決まっている「有期雇用」となるのが一般的です。

契約期間は契約によって異なりますが、契約終了後に再契約がなされないリスクを含んでいます。

なお「契約社員」とは法律上の雇用区分ではありません。そのため、「パートナー社員」「準社員」など企業独自の名称で呼ばれることもあります。

総務省「労働力調査詳細集計」によると、雇用者全体のうちで、契約期限に定めのある「有期雇用者」の割合は38%に上ります。

有期雇用者のうち最も多いのは「パート」で、次いで「アルバイト」「契約社員」「派遣社員」と続きます。

ここ10年の推移を見ると、有期雇用者は全体として増加傾向です。有期雇用者の存在感は増しているといえます。

割合こそ増えたものの、契約期間が定められているため勤労の継続性は保障されず、収入の安定性は欠けます。

また契約社員は正社員と比較して「勤続時間が短い」「転勤がない」ことが多いです。

勤労における自由度は高いですが、その分収入面の条件は落ちるのが一般的です。

そのような背景もあり、住宅ローン審査では正社員と比較すると不利に働く恐れがあるのです。

なお、契約社員も所定の条件を満たすことで正社員と同じ無期雇用に転換することが可能です。

しかし、勤続年数や雇用主への申し出などのハードルがあるため、ここでは契約社員は「有期雇用」であるとの考えをベースにしていきます。

住宅ローン審査における契約社員

国土交通省の「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、金融機関が審査時に雇用形態を重視すると答えた割合は76.6%です。

「完済時年齢」や「健康状態」と比較すると割合は低くなりますが、前回、前々回の調査と比較すると徐々に割合が高くなっています。

住宅ローン審査で重視されるのは安定性

住宅ローン審査においては、将来にわたって継続して返済し続けることができるかが重視されます。

生活基盤である「住宅」は、返済の優先順位としては高いので、一定の収入があれば返済しようと努力する人が多いと考えられます。

そのため安定した収入があることが、そのまま返済への信用を高めるのです。

収入の継続性と言い換えてもいいでしょう。

なかには、安定性よりも年収額が重要なのでは、と思う人もいるかもしれません。

そういった人は「契約社員なので年収が低い」ことを不安に感じていることでしょう。

年収も重要ではありますが、借入額とのバランスで評価をよくすることができます。

年収の低さを心配している場合は、収入に見合った借入額を設定することである程度審査を通りやすくすることが可能です。

住宅ローン審査で有利な属性は

「属性」とは、返済能力の信用度を図る項目と考えるといいでしょう。冒頭で触れたように、「勤続年数」「年収」「年齢」など申込者の信用情報を包括的に指すこともあれば、「勤務先属性」のように所定の項目をさすこともあります。

「雇用形態の属性」でいえば、有利なのは正社員です。

正社員は「無期雇用」ですので解雇のリスクが低く、勤め先企業が倒産するような深刻な事態でなければ雇用は守られるでしょう。

さらに公務員の場合、雇用主が国になりますので、解雇や倒産は原則ないと考えていいでしょう。

解雇の可能性はゼロではありませんが、横領や犯罪など特別なケースになるため、安全性が非常に高い雇用形態といえます。

以上の理由により、契約社員は正社員と比較すると審査が厳しくなります。

しかし契約社員だからといって、審査に通らないと決まったわけではありません。

多くの金融機関では属性要件を「安定した収入が見込める者」としています。

審査基準は公にはなっていませんが、雇用形態だけでなく属性全体を総合的に見て融資判断する金融機関が多いと推測できます。

契約社員が住宅ローンを申し込む場合の注意点

正社員と比較すると審査が厳しい傾向にある契約社員。

住宅ローンを申し込む時にやってしまいがちなのが「審査落ちを警戒して多くの金融機関に審査を申し込む」ことです。

複数の金融機関に同時申し込みをしてそのうち一つでも審査が通れば問題ありません。

しかし個人信用情報には「住宅ローン審査の申込みをした」と一定期間記録が残ります。仮に審査にすべて落ちてしまうと、再度チャレンジする場合に「ずいぶん審査に落ちているけれども、大丈夫だろうか」と、その記録が不利に働く恐れがあります。

金融機関は数件まで絞り込んだうえで申し込みむといいでしょう。

また、金利を重視しすぎることも避けたいです。

低い金利の方が返済の負担は楽になるでしょうが、金利の低い住宅ローンは審査が厳しい可能性があるからです。

金利水準よりも、審査基準を重視して住宅ローン選びをします。

いくら金利が低くとも申込要件に「正社員」と明記しているような金融機関は避けなければなりません。

審査を通りやすくするための対策

契約社員の人向けに、ここでは3つの対策を紹介します。

1 キャリアの見直し

正社員へ登用できる道があるか確認します。それが難しい場合は「無期雇用者」を目指す方法があります。

有期雇用の契約社員は「無期転換ルール」を活用すれば「無期雇用」への転換が可能です。

無期転換ルールとは企業との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合に、その契約が期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールです。

契約社員等が企業に対して無期転換の申込みをした場合、企業側は断わることができない決まりになっています。

ただし、処遇の改善まで求めるルールではありません。ボーナスや給与水準などについて正社員と差があったとしても、その点はこのルールではカバーしません。

とはいえ、雇用の継続性が保たれる点は大きなメリットです。

なお、転職は勤続年数がリセットされてしまうので慎重に行わなければなりません。

2 返済プランの再考

借入額を減らすことで、返済の確実性が高まります。そのため「頭金の積み増し」「物件価格の見直し」などが有効です。

借入額を減らすことが出来た場合は、返済期間の短縮も併せて検討するといいでしょう。

夫婦であれば、ペアローンや収入合算も返済の安定性を高めます。

しかし、ペアローンや収入合算で世帯年収を増やした分、借入額も一緒に膨らまないよう注意します。

3 フラット35を活用する

変動金利には金利上昇リスクがあります。

フラット35なら金利上昇リスクを避けられるため、審査で有利に働く可能性があります。

また独立行政法人が行うフラット35は省エネ住宅などの良質住宅の普及を推進しているため、人に関する審査は緩い傾向です。

まとめ 契約社員でも住宅ローンは組める

契約社員は無期雇用の正社員と比較すると、雇用の継続性が不安定です。

そのため住宅ローン審査も厳しくなりがちです。

ただし、「厳しい=審査に通らない」わけではありません。

借入額や返済プランを見直したり、自身のキャリアをブラッシュアップしたりすることで審査を通りやすくしていきましょう。

参考住宅ローン審査で重要な「属性」とは

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