(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
全期間固定金利のフラット35は金利変動の影響を受けない所が特徴であり魅力です。
しかし近年の低金利下にともない、過去にフラット35で住宅ローンを組んだ人の中には、自身のフラット35の金利が高いと感じている人もいるかもしれません。
金利を低くしたいけれども「全期間固定金利」という安全は失いたくない人にはフラット35からフラット35への借換え。そんな選択肢があります。
フラット35からフラット35への借換えはできる
中には、フラット35からフラット35への借換えはできないと思っている人もいるかもしれませんが、フラット35からフラット35への借換えは可能です。
フラット35からフラット35への借換えるメリットは、金利変動リスクを回避したまま、より低い金利への借換えが可能な点です。
もともとフラット35を利用した人は安定志向の高い人でしょうから、金利変動リスクを避けたい場合が多いでしょう。
従前と同じ全期間固定金利でなお、月々の負担が減ればメリットが大きいでしょう。
フラット35の金利はどの程度変わっているのでしょうか。借換えを考える前に確認してみましょう。
【フラット35の金利水準】
2004年1月 2.890%
2005年1月 2.230%
2006年1月 2.521%
2007年1月 2.750%
2008年1月 2.020%
2009年1月 2.880%
2010年1月 2.570%
2011年1月 2.410%
2012年1月 2.140%
2013年1月 1.990%
2014年1月 1.810%
2015年1月 1.470%
2016年1月 1.540%
2017年1月 1.120%
2018年1月 1.360%
2018年9月 1.390%
※返済期間21年以上35年以下の場合・金利は全て「最低金利」とした
2018年9月の最低金利は「年1.390%(融資9割以下)」ですので、平成16年1月最低金利と比較すると1.5%も低くなる計算になります。
しかも、2017年10月以降は団体信用保険料が不要になります。
それまでは団体信用生命保険料別が別に必要でしたので、その分を金利メリットに換算すると金利0.2%程度になると考えられます。
これからの金利動向は?
住宅ローンの借換えでは、今後の金利動向を慎重に予想することが重要です。
もしも現在の低金利状態が継続するなら、変動金利への借換えも検討の余地があるからです。




りそな銀行は2018年8月に引き上げ済です。


いわば「下がりすぎ」状態だった金利の適正化が図られたと考えたほうがいいでしょう。長期的にどこまで金利が上がるかはわかりませんので、「金利の底は脱した」と捉えるといいかもしれませんね。


フラット35の借換えでかかる諸経費
フラット35の借換え諸経費は、借換えする金融機関によって異なります。フラット35の取り扱いが業界大出のA社を例に、諸経費主をご紹介します。
【A社借換え諸経費】
融資手数料(事務手数料)
- 融資額の2%(所定の条件を満たすと1%に引き下げ)ですが、最低事務手数料は20万円
確定日付料
- 金銭消費貸借証書への確定日付取得にかかる費用(700円)
印紙代
- 住宅ローンの契約書(金銭消費貸借証書)に貼付け
- 500万円超~1,000万円以下なら1万円、1,000万円超~5000万円以下の場合は2万円
登録免許税
- 抵当権抹消登記 一筆(または一棟)1,000円
- 抵当権設定登記 融資額×0.4%(※)
- 司法書士報酬も発生 費用は明記されていないが、2つの登記を合わせて10万円前後が目安
※新規取得の場合は、抵当権設定費用の税率は0.1%の軽減税率が適用できるが、借換えの場合、通常は本則税率(0.4%)が適用される
その他
- 従前の住宅ローンを一括繰上返済する際の繰上返済手数料
- 繰上返済にかかる利息の清算(住宅ローンの返済日から次の返済日までの間に発生する未払いの利息)
上記の例ですと、融資手数料と登記関連の金額が大きいです。仮に2,000万円の借換えを行うと2つだけで60万円近くになります。(下図参照)
【借換え手数料のうち額の大きいもの】
融資手数料 | 2,000万円×2%=40万円 |
登記関連費用 | 抵当権抹消登記 1,000円
抵当権設定登記 2,000万円=8万円 司法書士報酬 10万円とする |
合計 | 58万1,000円 |
金融機関によって諸経費は異なりますが、金融機関に確認すればわかることなので、計算できる点は安心です。
借換えする際は、総返済額の軽減額を比較することとなりますが、諸経費を計算したうえでメリットがあるかどうか判断しましょう。
金利が1.5%下がると毎月の負担はどのくらい軽くなる?
もしも、3,000万円を10年前、金利3%、返済期間35年で借りたとします。
その場合、10経過後の残高は約2,435万円となります。
この2,435万円を金利1.5%、返済期間25年で借り換ると返済額は次のように軽減します。
- 毎月返済額
金利 | 毎月返済額 | |
現状 | 3% | 115,455 円 |
借換え | 1.5% | 97,384 円 |
差額 | 18,071円 |
毎月約1万8,000円変わると年間では20万円以上の削減になります。
フラット35からフラット35への借換え メリットがあるのはどんな時?
フラット35同士の借換えを、より有効に使えるのはどんな時なのでしょう。
1:フラット35Sの適用を受けている人
フラット35Sとは、一定の技術基準をクリアした住宅に対する金利引き下げ策で、金利の引下げ幅は0.25%です。
「省エネルギー性」「バリアフリー性」「耐震性」「耐久性・可変性」の4分野で所定の条件を満たした住宅が対象となります。
金利引下げの期間は5年間、もしくは10年間です。技術はレベルは2段階あり、より厳し水準を満たすと10年間、金利引下げが適用されます。
【フラット35S の金利引き下げプラン】
- 金利Aプラン 当初10年
- 金利Bプラン 当初5年
※金利Aが、より高い技術水準となる
金利Bプランなら6年目から、金利Aプランなら11年目から金利が上がることになります。
単純に金利だけでいうと、このタイミングで金利0.25%以上低いフラット35に借り換えすると、毎月の負担が増えるのを抑えることができます。
実際には諸経費も含めてメリットを判断しますが、残りの返済期間が長いので、借換えによって総返済額が減る可能性は高いでしょう。
なお、金利引下げが終わるタイミングにこだわる必要はありません。金利プランAなら、金利引下げ期間が10年と長いため、金利が上がることを想定して10年よりも早い時期に借換えしたほうがいいケースもあります。
10年間待ったために、金利が上がってしまうこともあるからです。
2:返済額の負担が小さい人は、返済期間を短くする借換えもおすすめ
返済額を増やしても大丈夫な場合は、借換え時に返済期間を短くするのも検討するといいでしょう。
返済期間が15年以上20年以下の借入れでは「フラット20」が適用されます。このフラット20はフラット20よりも低い金利が適用されるため、金利引下げ効果が大きいのです。
まとめ フラット35同士の借換えも検討してみよう
フラット35は全期間固定金利の住宅ローンです。当初の金利が最後まで続くことを納得のうえ契約していますので借換えに消極的な方も多いかと思います。
しかし、借換えで再びフラット35を選択する方法もありますので、検討されてみてはいかがでしょうか。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所