(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
「住宅ローンでは保証料がかからないものを選択するとお得らしい」と聞いたことがある人も多いかもしれません。
しかし住宅ローンの諸経費は保証料だけではないため、保証料のありなしだけでお得さは判断できません。
仮に保証料がない住宅ローンを選んでも、他の諸経費が生じる可能性があります。
保証料の概要、そしてメリットとデメリットを紹介します。
保証料とは住宅ローン諸経費の一つ
保証料とは住宅ローンにおける諸経費の一つです。
最初に諸経費を確認しておきましょう。
諸経費は大きく3種類です。
1 住宅ローンにかかる費用
- 印紙税 住宅ローン契約の「金銭消費貸借契約」にかかる
- 事務手数料 ローンを組む金融機関へ支払う手数料
- 保証会社手数料 保証会社に支払う手数料など
2 住宅ローン契約に伴う「抵当権設定登記」にかかる費用
- 登記費用 抵当権設定の登録免許税
- 司法書士への報酬など
3 その他 住宅ローン関連費用
- フラット35の適合証明書
- 新しい住宅にかかる火災保険料など
フラット35の適合証明書とはフラット35を申し込む場合に、建物がフラット35の基準を満たしていることを証明する書面。
また住宅ローンを契約する場合は原則として、対象となる家は火災保険の加入が義務付けられているため、火災保険料も発生します。
住宅購入時全体の諸経費としては新築なら購入価額の3~5%、中古なら購入価格の5~8%程度といわれます。
3000万円の家であれば、30~50万円の諸経費がかかる計算です。
小さくはない金額ですので、節約できるところは節約し、賢く住宅購入を行いたいです。
住宅ローンにおける、保証料の役割
保証料について詳しく見ていきます。
保証料とは何か
保証料とは、保証会社に保証してもらうために支払う費用です。
ここでいう「保証」とは、万が一住宅ローンを返済できなくなった場合に、代わりに住宅ローンを支払ってもらう、という意味です。
住宅ローン契約者が保証会社に「保証料」を支払うことで、保証人になってもらう制度と考えるといいでしょう。
この場合、返済不能リスクを負うのは保証会社となりますので、住宅ローン審査も保証会社が行うのが一般的です。
おおよその返済能力を計る仮審査は金融機関が行い、厳密な本審査は保証会社が行います。
保証料の仕組み
通常は保証会社に保証を依頼するために支払う「保証料」と、申込時の「保証事務手数料」があります。
保証料を支払うことで、住宅ローン契約者が返済できなくなったときは保証会社が金融機関へ支払いを行います。
しかし保証会社が支払いを行ったからと言って、住宅ローン残高がなくなるわけではありません。
住宅ローン契約者は、保証会社に向けて支払いを続けることになります。
「支払いが続く」との観点からは、保証料を支払うことによるメリットは特別ないように感じるかもしれません。
確かに保証会社とは、金融機関のリスクをヘッジする会社です。
しかし、金融機関のリスクヘッジによって、住宅ローン契約者は融資が受けやすくなるはずです。
融資が受けやすくなるため、住宅ローン契約者は間接的にメリットを受けているといえます。
保証料の金額目安と支払い方法は
保証料の支払い方法は2通りですので、順に紹介します。
保証料1 一括・外枠方式
住宅ローンの契約時に保証料を一括払いする方法です。一括払いする場合は金額が気になるところでしょう。
厳密には、住宅ローン利用者が保証会社へ支払う保証料は、住宅ローン利用者の属性、借入額、返済期間によって決まります。
ただし目安としては「借入額の2%」です。例えば3000万円の借入なら、60万円前後が目安です。
メリット
- 住宅ローンの総支払い額が、目に見える
- 借入額や返済期間などの条件が同じであれば、分割・内枠方式よりも安くなるのが一般的
- 繰上げ返済で当初の想定よりも早く住宅ローンを完済した場合は、保証料の一部が返還されることがある
デメリット
- 一括払いのため、当初の諸経費が大きくなる
- 繰り上げ返済による返還が受けられる場合も、手数料がかかる
保証料2 分割・内枠方式
住宅ローンの金利に上乗せして、保証料を毎月の返済額に含めて支払う方法です。通常の住宅ローン金利に「0.2%」程度上乗せされることが多いです。
メリット
- 住宅ローンを組む際の諸経費を抑えることができる
- 繰り上げ返済を行うと、自動的に保証料の支払いも減る
デメリット
- 毎月支払額が増える
- 総支払い額が一括払いと比べると多くなる
保証料がある場合は、自己資金の多寡や返済プランによって支払い方法を検討していくといいでしょう。
住宅ローンを組む際に自己資金を温存しておきたい人は、分割・内枠方式がいいでしょうし、その後の支払いの負担を軽くしたい人なら、一括・外枠方式が向いています。
それぞれの特徴を知って選択していきます。
「保証料なし」のメリットとデメリット
なかには住宅ローンの保証料がかからない金融機関もあります。
傾向としては店舗のある銀行では保証料がかかり、ネット銀行や住宅ローンの貸出に特化したモーゲージバンクでは保証料がないケースが多いです。
ただし同じ金融機関内で「保証料あり」「保証料なし」のタイプを双方抱えていることもあります。
一見、保証料なしの方がお得なように感じますが、必ずしも「保証料なし=良い」わけではありません。
保証料がない場合のメリットとデメリットを見ていきます。
「保証料なし」のメリット
- 住宅ローンの諸経費を減らせることがある
- 保証料を原因とした金利の上乗せがない
「保証料なし」のデメリット
- 保証料がない場合、住宅ローン審査が厳しくなる
- 保証料がない分、事務手数料がかかることが多い
保証料がないことで住宅ローン審査が厳しくなりやすいのは、保証料がない場合は保証会社を利用せず、金融機関自身が貸し倒れリスクを負うことになるからです。
金融機関自身がリスクを負う以上、保証会社があるときよりも厳正な審査の上で融資することになるのでしょう。
「保証料がない分事務手数料がかかることが多い」点に関しては、具体的な事例を次の章で見ていきます。
保証料のあり・なしによる諸費用の違い
保証料のありなしでも、事務手数料によっては諸経費に大きな違いがないケースがあります。
借入額3000万円のケースで、シミュレーションを紹介します。
事例1:保証料あり・事務手数料定額の場合
- 一括・外枠方式 目安は、借入金額の2%(3000万円×2%=60万円)
- 保証会社への事務手数料 3.3万円
- 金融機関への事務手数料 3.3万円
※分割・内枠方式を選んだ場合は金利が0.2%上乗せ
保証料と各種手数料を足した合計額 66.6万円
事例2:保証料なし・事務手数料融資割合型の場合
- 保証料なし
- 事務手数料は一律で借入金額の2.2%(3000万円×2.2%=66万円)
保証料と事務手数料を足した合計額 66万円
事例3:保証料なし・事務手数料定額型の場合
- 保証料なし
- 事務手数料 33万円
事務手数料合計額 33万円
上記の事例では1と2は保証料の有無にかかわらず、事務手数料と保証料を足した金額に大きな違いはありません。
一方、事例3は1・2と比較して保証料と事務手数料の総額が低く抑えられています。
諸経費の金額は、単純に保証料の有無で判断できないことが分かります。
なお、同一金融機関で「保証料あり」「保証料なし」双方のタイプの住宅ローンを扱っていることがあります。
その場合は、住宅ローンごとに事務手数料の額を変えているのが一般的です。
金融機関ごとではなく、個々の住宅ローンごとに諸経費を判断していきます。
なお、事務手数料は「融資手数料」「取扱手数料」などの名称で呼ばれることもあります。
住宅ローン諸経費は総合的に考えること
保証料の目安は「借入額の2%」と大きな金額です。
「節約できるのなら節約したい」と考える人は多いと思います。
しかし保証料だけに目を向けるのはあまり意味がありません。
事務手数料について失念してしまうと、結果的に諸経費の総額が節約できないケースがあるからです。
また、保証料は保証会社による保証を受けるための費用でもあります。
返済リスクの担保によって審査の厳しさも変わってきます。審査の通りやすさを重視するなら、あえて保証料のある住宅ローンを選択する手段も「あり」でしょう。
住宅ローンにおいては「お得さ」「審査の通りやすさ」など複数の要素があります。
何を優先させるのか吟味し、戦略をもってより良い住宅ローンを選択していきましょう。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所