基礎知識

住宅ローンの返済年数は35年が普通?返済期間を短くするメリットとデメリットは

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

一般的に、長期の住宅ローンといえば「35年ローン」を指すことが多いですが、必ず35年間でローンを組まなければならないわけではありません。

早めに返済を終わらせたいと希望する人もいれば、35年かけてコツコツ返済したい人もいるでしょう。

住宅ローンの年数によって生じるメリットと注意点を見ていきます。

住宅ローンの年数 平均年数は?

住宅ローンは最初に「金銭消費貸借契約(住宅ローン契約)」によって返済年数を定めます。

住宅ローン契約で定めた年数を「契約年数」といいますが、この「契約年数」と住宅ローン完済までの実年数は同じとは限りません。

統計における両者の年数を確認してみましょう。

住宅金融支援機構の「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」から見た住宅ローンの年数

住宅金融支援機構の「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」から、「約定貸出期間(契約年数)」と、住宅ローンを完済するまでに要した「平均経過期間(返済年数)」を紹介します。

【約定貸出期間(契約期間)】

30年以下 39.7%
35年以下 23.4%
25年以下 20.9%

返済年数の単純平均は26.7年です。

傾向として、返済年数は長くなってきています。

例えば「35年以下」の割合は、2015年は9.6%と10%に満たなかったのですが、2018年度には23.4%に増加しています。

【平均経過期間(返済年数)】

30年以下 41.4%
10年以下 22.2%
25年以下 16.0%

完済までの平均経過期間の単純平均は15.7年です。

繰り上げ返済等によって、契約期間よりも早めに返済を終わらせる人が多いようです。

ただし、こちらも傾向として年数が延びています。

2015年度には10年以下で完済する人の割合が37.3%でしたが、2018年度には22.2%に減っています。

住宅ローンの年数はここ数年長くなる傾向に

住宅ローンの返済年数が伸びているのは金利が低くなったことが大きな要因でしょう。

また団信の保障が充実してきたことで、完済年齢が遅くなることによる返済不能リスクも低くなったのではないかと推測します。

もしくは、退職金や自己資金を住宅ローン返済に回すよりも、運用や温存するほうがメリットは大きいと判断する人が増えたのかもしれません。

人生100年時代と言われる昨今、「自己資金を確保しておきたい」と考える人が増えるのは自然な流れでしょう。

なお、同統計によると、住宅ローンの約定貸出期間が「35年以上」とした人の割合は0.4%と少数でした。

しかし2018年度以前は「35年以上」の割合は統計に上がっていることから、35年以上かけて返済する人の数も増えていることが分かります。

今後は35年以上かけて返済する人の割合も増えていくと推測されます。

出典住宅金融支援機構「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向(PDF)」

住宅ローンの年数を短くする場合のメリットと注意点

返済年数は長くなる傾向にあるといっても、住宅ローン返済年数の単純平均は26.7年です。

そこで住宅ローンの年数を35年よりも短くすることで得られるメリットと注意点を見ていきます。

住宅ローンの年数を短くする場合のメリット

メリット1 住宅ローンの返済年齢が早くなる

通常の年数住宅ローン年数だと定年後も長く返済が続く人にとって、住宅ローンの返済が早くに終わるプランは魅力的でしょう。

退職金を切り崩したくない人にとっても、そのまま返済すれば定年前に完済できる返済プランは有益です。

メリット2 金利が低くなることもある

返済年数を短くすると、住宅ローンの適用金利が低くなるケースがあります。

金融機関にしてみれば、早期に返済するほうが、融資回収の確実性が増すからです。

適用金利が低くなれば返済額も抑えることができます。

住宅ローンの年数を短くする場合の注意点

住宅ローンの年数を短くした場合の注意点は、毎月返済額の負担が重くなることです。

住宅ローン契約時は無理なく返済できる金額でも、収入減や支出増によって将来は支払いが難しくなる可能性があります。

具体的には次のようなケースが考えられます。

  • 共働き世帯の妻が出産を機に時短勤務や退職を選択し、収入が減った
  • 子どもの成長に合わせて教育費が増大し負担が重くなった
  • ボーナス払いをしていたが、会社の業績悪化でボーナスが減った

返済年数を短くする場合は、ライフプランを立てて将来の支出の変化を確認しておくことが重要です。

ただしそれでも想定外の収入減や支出増が発生してしまうかもしれません。

返済の途中で負担が重くなり「やっぱり返済期間を伸ばしたい」と思っても、対応してもらえない可能性が高いです。

天災や世界規模の不況など、特別な事情がない限り一度決めた住宅ローンの年数を伸ばすことは難しいでしょう。

その意味では、35年で住宅ローンを組んでおいて、繰り上げ返済で柔軟に対応するほうが安全といえます。

住宅ローン契約時から返済年数を短くしたい場合は、返済の年数を慎重に判断しましょう。

住宅ローンの年数と住宅ローン控除

住宅ローンの年数を短くする場合は、住宅ローン控除の要件についても確認しておきます。

住宅ローン控除は年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が所得税額から控除されるものです。

この制度は原則として10年間適用され、最大で400万円分の控除を受けることが可能です(※)。

住宅ローン控除には要件がいくつかありますが、その中には「住宅ローンの返済期間が10年以上であること」との要件もあります。

10年前後での住宅ローン契約を検討している人は、住宅ローン控除の適用も年数を決める際の判断材料にしてください。

※消費税率10%が適用される住宅の取得をして、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に入居した場合の控除期間は「13年間」です。

その場合は控除額の上限も引き上がります。

住宅ローンの年数を35年とする場合のメリットと注意点

一方、35年かけてコツコツ返済する選択肢もあります。

その場合のメリットと注意点も見ていきましょう。

住宅ローンを35年かけて返済するメリット

メリット1 自己資金が温存できる

35年ローンを組んで35年返済していくなら、自己資金を温存しやすいです。

退職後は住宅ローン返済のために自己資金を切り崩すこともあるでしょうが、一括繰上返済のように大きく自己資金を減らすことはありません。

自己資金を温存することで退職後の生活を楽しむゆとりが生じやすいです。

もしも退職後、思ったよりも住宅ローンの返済が苦しいときは、返済額軽減型の一部繰り上げ返済で返済額を調整していくこともできます。

自己資金の「温存」と「活用」を調整しながら老後の資金計画を組み立てたい人におすすめです。

メリット2 団信を活用できる余地が多くなる

年齢が上がっていくと病気のリスクが高まるため返済に不安を感じるかもしれません。

しかし団信の保障を充実させておくことで、ある程度リスクを抑えることができます。

長期返済を前提とする場合は、保障の手厚い団信に加入しておきましょう。

また既述の通り住宅ローンの年数を長くするのは難しいです。

しかし年数を短くするのは、資金さえあれば問題ありませんので、当初は35年のローンを組んでおくほうが返済計画の幅は広がります。

住宅ローンを35年かけて返済する場合の注意点

年数をかけて返済を希望する場合に注意したいのは、金利選択です。変動金利を選択していた場合、収入が少なくなる定年後に金利が上昇すると返済計画が大きく狂う可能性があります。

最初から返済額を固定化させたい場合はフラット35に代表される全期間固定金利を選択しましょう。

変動金利を選ぶときは金利動向を注意深く見守ります。

金利が上昇すると見込まれる場合や、実際に金利が上がり返済が苦しくなった場合は、返済額軽減型の繰上返済を検討します。

また想定よりも退職年齢が早まったり、退職金の金額が少なかったりすることで、コツコツ返済する計画が狂ってしまう可能性がありますので、自己資金を確実に準備していきます。

完済時年齢の壁にも注意

ただし、35年返済をしたいと思っていても、完済時年齢を超えてしまう場合は希望が叶いません。

金融機関によって完済年齢は異なりますが一般的には80歳程度です。

例えば50歳で住宅ローンを組むなら、最長年数は30年となることが多いです。

また、中古物件を購入する場合は物件の築年数にも注意します。

築年数に応じて返済期間を制限する金融機関もあるからです。

ライフプランを立て住宅ローンの年数を考えよう

住宅ローンの年数を35年とする場合と、より短くする場合、それぞれにメリットとデメリットがあります。

早く完済したい場合は最初から短くする手もありますが、一部繰り上げ返済で返済額を調整していくのもおすすめです。

様々な可能性を考慮して、住宅ローンの年数を考えていきましょう。

参考【住宅ローンの選び方】初心者でも迷わないための比較ポイントと必須知識を解説!

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