住宅ローンジャーナル 税金の知識

住宅ローン控除とiDeCoは併用できる!一緒に使うときの注意点はある?

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

2017年から公務員や専業主婦でも加入できるようになり、加入資格の制限がなくなったiDeCo(個人型確定拠出年金)。

年金を自分で作ることができる制度として注目を集めています。iDeCoでは税制優遇があることも人気の理由ですが、税制優遇といえば住宅ローン控除も有名です。

もしもiDeCoに加入している人が住宅ローン控除を受けることになると、双方の取り扱いはどうなるのでしょう?

住宅ローン控除とiDeCoの概要

住宅ローン控除とiDeCoの併用について考える前に、両制度の概要をおさらいしていきましょう。

  • 住宅ローン控除

最長10年間、年末の住宅ローン残高の1%を所得税から控除できます。ただし、納税額以上の控除を受けることはできません。

また、毎年の控除限度額は40万円(条件を満たした一定の住宅の場合は50万円)となっています。なお、2019年に消費税が上がるため、増税後は控除期間が拡充されることが決定しています。

  • iDeCo

確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金です。加入者は毎月一定額を掛け金として支出し、自ら運用を行います。

運用成果に基づき将来、年金、もしくは一時金が受給できます。掛け金は所得から控除することが可能で、運用益は非課税です。

専業主婦や公務員も加入できますが、会社の年金制度によっては加入できない人がいます。

上記を見ると、どちらも所得に対する「控除」を行うようです。

そのため双方の控除が重複して、効果が限定されてしまうのではないかと懸念する声があるのです。

住宅ローン控除とiDeCoの税制優遇

確かに、住宅ローン控除とiDeCoの方法で控除することと、せっかくの控除枠が余ってしまうことはあり得ます。

ですが、双方は、控除の対象が異なっているため、完全に控除がかぶることはありません。

どういうことなのか、二つの税制優遇についてご紹介します。

住宅ローン控除とiDeCoの違い

実は、住宅ローン控除は「税額控除」で、iDeCoは「所得控除」となります。

  • 税額控除(住宅ローン控除) 所得税が控除される
  • 所得控除(iDeCo) 所得が控除される

所得税は所得に所定の税率をかける「所得×税率」で決まります。

所得とは収入から扶養家族の数に応じた扶養控除や社会保障に対する支出等を差し引いた金額のことです。

所得税を決める手順を知ると、二つの違いがよく分かる

住宅ローン控除とiDeCoによる控除、双方の差異を、所得税が決定するまでの流れで再確認します。

【適用の流れ】

  1. 所得額の決定(iDeCoによる掛金は、この時に控除)
  2. 所得額×税率=所得税額の決定
  3. 納税額から住宅ローン控除(税額控除)を行うことができる

iDeCoは「所得控除」なので、所得額から掛け金を差し引きます。

そのため「iDeCoは掛け金が課税されない」と言われるのですね。税率が同じだとすると、当然、所得の少ないほうが所得税額は小さくなります。

一方、「税額控除」である住宅ローン控除は、「所得×税率」で算出された税額から年末の住宅ローン残高の1%を差し引くことができるのです。

iDeCoは所得額が控除されるので、原則として所得がある人なら誰でも恩恵を受けることができます。しかし住宅ローン控除は差し引くべき所得税額が低く控除しきれないケースも多々あるようです。

所得税が高いほうが大きな効果を得られる制度といえます。その点も両制度は特性が異なります。

住宅ローン控除の「還付」についても理解しておこう

住宅ローン控除のことを「還付を受ける」ともいいます。これは控除した結果、受けることができる還付のことです。

会社員の場合、会社が事前に所得税の納税を代行してくれるため、所得税を払いすぎる事態が発生するのです。

所得税は本来、1年間の所得が確定しないと算出できなのですが、会社員の場合は、毎月の給与支払い時に年間の給与総額を見込んで仮払いしていきます。

さらに年末調整でその年中に納税関係を清算します。

そのため住宅ローン控除を適用する初年度は、確定申告で支払済の所得税から、住宅ローン控除適用分を取り戻すことになり、これが「還付を受ける」状態です。

なお、確定申告は初年度のみで足り、2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。

住宅ローン控除とiDeCoは併用できる

併用のデメリットとしてよく指摘される効果の相殺についてご紹介します。具体的にはiDeCoの掛け金を所得額から差し引いて所得税額が小さくなれば、税額控除できる最大額も小さくなることを指します。

住宅ローン控除は原則として、自身の納税額が上限なので、控除しきれないケースはもったいないと考えてしまいがちです。

しかし控除そのものは行っているので、損をしているわけではありません。

また住宅ローン控除は、控除しきれない分が残れば、翌年の住民税からも一部控除が可能です。

iDeCoと住宅ローン控除を目一杯活用したいときは

控除はあくまで恩恵であり、損得で判断することは避けるようにしたいです。

それでも、「せっかくだからどちらも目一杯活用したい!」人もいるでしょう。その場合は、控除の対象となる所得を増やすのが一番健全です。

とはいえ、所得は簡単に増えるものではありません。

そんなときは、iDeCoの掛け金を調整する方法があります。

住宅ローン控除の控除額は年末の住宅ローン残高×1%と決まっています。

しかしiDeCoの掛け金は年に1回なら増減させることができます。

iDeCoの掛け金を減らして住宅ローン控除の使用枠を増やすことは理論上可能です。例えば自営業者の場合、iDeCoの掛け金は最大で年間81.6万円です。

収入・その他の控除が同じ状態で掛け金を半分にすると、40.8万円掛け金が減るため、税率が10%であれば、約4万円(40.8万円×10%)税額が増える計算になります。

ただし、所得は残業の有無やボーナス額などにより若干の変化があるはずです。良かれと思ってiDeCoの掛け金を減らしても、所得そのものが減ってしまい、結局住宅ローン控除を使い切れない事態になることも考えられます。

そもそも控除できる額が増えても、iDeCoの掛け金を減らせば将来受け取れる年金額が減ってしまう可能性があります。

iDeCoの掛け金を減額するときは、メリットとリスク、手続きの手間も考慮したうえで決断しましょう。

住宅ローンの繰上返済とiDeCoの掛け金増額、どちらを選ぶべき?

資金に余裕がある場合には、繰上返済とiDeCoの掛け金増額、どちらを選択するといいのでしょう。

金銭的メリットを追求するなら繰上返済により「軽減する返済額」と、iDeCoにおける「将来の受取り見込み額の変化」を比較するといいでしょう。

ですがiDeCoは運用成績によって将来の受取額が変わるので、単純に比較することは難しいです。

そのため金銭的メリットよりも、ライフプランから見て、より有益な選択をしたいです。

住宅ローンの返済が軽くなることと、将来の老後資金の準備、どちらが重要か見極めるには、次のような点をチェックしましょう。

【住宅ローンの繰上返済を優先させるべき事項】

  • 団信の特約がなく、疾病や事故によるリスクが大きい
  • 現状で負担が重い
  • 将来、教育費との両立は厳しい
  • 定年後に住宅ローンは返済していけるか不安

【老後資金の準備を優先させるべき事項】

  • 定年後にすぐに年金はもらえない
  • 公的年金が満額受給できない
  • 公的年金以外の老後資金(金融資産・個人年金・預貯金)が不十分

借金である住宅ローンを優先的に返済していくほうががいいケースが多いです。

特に今後教育費が増え、返済の負担が増す世帯では住宅ローンの繰上返済が有効でしょう。

しかし、団信の保障が手厚く、疾病や事故などが原因で住宅ローンが0円になる可能性もある世帯なら、敢えて繰り上げ返済しない返済方法もあります。

定年後の老後資金が確実に不足する世帯でも、iDeCoで老後資金を作ることが優先されるでしょう。

まとめ

iDeCoは老後の不安を解消するための有効な手段として注目を集めています。

住宅ローン控除とiDeCoによる所得控除が両方ある世帯も多いことでしょう。

両者は基本的に特質が異なりますので、そのまま併用しても問題ありません。

ただし家計を管理・把握する観点から、どのような点が違うのか、控除の対象を知っておくことは大切でしょう。

参考住宅ローンを複数申し込み メリットと注意点を解説

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