(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンの金利選択は悩ましいものです。
変動金利は金利上昇のリスクがありますし、全期間固定金利は金利が高めなのが気になるところです。
そんなときに選びがちなのは、一定期間金利が固定される「○年固定金利(期間固定型)」です。
とはいえ期間固定型でも所定の年数が過ぎると、再び金利選択と向き合わなければなりません。
期間固定型における、固定金利期間が終わった場合の対応についてご紹介します。
固定金利期間が終了すると、住宅ローンはどうなる
期間固定型は、ベースが変動金利となります。変動金利ではあるけれども、一定期間のみ金利が固定される住宅ローンと考えるといいでしょう。
固定金利の期間は2年、3年、5年、10年など多くのバリエーションがありますが、実際のメニューは金融機関ごとになります。
一般的には固定金利期間が短いほど当初の金利が低くなりますが、中には年数が長いほうが金利の低いものもあります。
例えば10年固定を期間固定型の目玉商品としている金融機関では、3年固定型や5年固定型などよりも10年固定型の方が金利の低いことがあります。
期間固定型の住宅ローンで注意したいのが、一般的には当初の金利が優遇される点です。
当初金利が優遇されるという事は、固定金利期間後の金利優遇が小さくなることになります。
そのため、固定金利期間が終了すると、金利が大きく上昇する可能性があるのです。
金利優遇には「当初優遇タイプ」「全期間優遇タイプ」などがありますので、優遇幅と期間を確認し、借り入れ当初から全返済期間を通じた金利コストを意識しておくことが大切です。
固定金利期間終了後の注意点
期間固定型は固定金利期間が終了すると、その時点で改めて「変動金利」や「固定金利期間」を選ぶことができます。
ただ、金利選択の際に手数料が発生することがありますし、稀にですが再度固定金利期間を選ぶことができないケースもあります。
トータルコストとともに固定期間終了後の取り扱いについても、あらかじめ確認しておきます。
固定金利期間が終了し、再度「変動金利」と「固定金利期間」を選ぶ際は、その時の市場金利による金利が適用されます。
ここ数年は超低金利時代となっていますので、大幅に金利が下がることは考えにくいです。
さらに、期間固定型は当初の金利優遇が大きいものが多いので、固定金利期間が終了すると、金利が上がるケースが多いといえます。
有力な選択肢の「借り換え」
固定金利期間終了後に金利が上がってしまう場合、異なる金融機関への借り換えも選択の余地があるでしょう。
低い金利で借り換えすることができれば、返済の負担が増えることを回避できます。
ただし、借り換えでは次のような借り換え諸費用がかかります。
【借り換え時の主な諸経費】
- 事務手数料や保証料
- 印紙税
- 登記費用・司法書士への報酬
借り換えで諸費用以上の金利メリットを得るには、次のような条件を満たす必要があるとされています。
【借り換えメリットのある住宅ローン】
- 住宅ローン残高が1,000万円以上
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 金利が0.5%以上引き下がること
「住宅ローン残高」と「返済期間」はある程度見通すことができます。
金利については常に変動していますので、固定金利期間の終了が近くなったら、優遇金利を確認し、適用金利を推測しておきます。
実際の金利を、当初優遇型の10年固定金利でご紹介します。
りそな銀行 【はじめがお得!当初型※1】
固定10年 | 固定期間中 | 固定期間終了後 | 金利差 |
最大引き下げ金利 | ▲2.055~3.300% | ▲1.655% | 1.645% |
※1 融資手数料型の場合
ジャパンネット銀行
固定10年 | 固定期間中 | 固定期間終了後 | 金利差 |
最大引き下げ金利 | ▲1.900% | (変動金利選択)▲1.400% | 0.5% |
(期間固定金利選択)▲1.100% | 0.8% |
どちらも2020年2月金利
上記が「固定金利の期間中」と「終了後」の金利です。
りそな銀行については当初の引き下げ幅が特に大きい『はじめがお得!当初型』であるため、特に金利の差が大きいです。
ここで挙げたのは2行のみですが、金融機関ごとの差はもちろん、同一金融機関内でも当初金利引き下げが大きいタイプ、全期間にわたって長く金利が引き下げられるタイプなど多くの種類があります。
固定金利期間終了後の金利が「高い」と判断したら、借り換えを検討していきましょう。
固定金利期間終了後、何もしないと変動金利が適用
固定金利期間終了後に特に手続きをしなかった場合、通常は変動金利が適用されるようになります。
「適用金利は上がるけれど、そう高くない」、もしくは「金利水準は高くなるけれど借り換えメリットがない」、という場合は変動金利を選択してもいいでしょう。
もちろん中には「借り換えをしたいけれども転職したばかりで借り換えできない」といったパターンもあることでしょう。
借り換えをしたいけれどもメリットがない・できない、といった理由で変動金利を選択する場合、毎月の返済をもう少し楽にしたい、と考える人も多いと思います。
そういったときは繰上返済を検討してみましょう。
「返済額軽減型」の繰上返済なら、毎月返済額を圧縮することができます。繰上返済には「返済期間短縮型」もあり、総返済額を減らす効果は後者のほうが高くなります。
しかし、毎月の返済を楽にすることが目的であれば「返済額軽減型」を選んでいきましょう。




しかし現在は金利水準が低いので、無理に繰上返済する必要はありません。
完済まで低金利が続けば、繰上返済資金は温存できるため、老後資金やメンテナンス費用に振り替えることが可能です。

再び期間固定金利を選ぶのはあり?
借り換えメリットない人や変動金利のリスクはとりたくない、といった人には、再度固定金利を選ぶことになるでしょう。
たたし、変動金利を選択したとしても、5年間は返済額が変わりません。
通常変動金利の金利は、半年ごとに見直され、実際の返済額に反映されるのが5年後となるしくみからだからです。
さらに変動金利には「1.25倍ルール」があります。これは、金利上昇により返済額が上増える場合にも、返済額は従前の返済額の1.25倍が上限となる決まりです。
仮に「子どもの大学進学が控えている」「転職を考えている」などの理由で数年は返済額を固定させたいと考えている人は、変動金利も視野に入れていいかもしれません。
ご自身の金利を固定させたい期間が5年以内なら、変動金利も有効でしょう。
ただし、変動金利における1.25倍ルールでは、仮に金利が急上昇して、実際の返済額が従前の1.25倍を超えてしまうと、毎月の返済額が利息を超えてしまう可能性があります。
現状の金利推移であれば可能性は低いですが、そのようなリスクがあることは知っておくべきでしょう。
まとめ 結局、固定金利の期間が終わったらどうすればいいのか
結論として、金利を重視するならば、検討すべきは借り換えです。ただし、諸経費まで含めて借り換えメリットを見極めることが大切です。
借り換えメリットがない、もしくは借り換えをしたいができない、といった場合には、変動金利に移行するか、再度固定金利を選択するかになります。
ここに関しては、「金利上昇が怖くないなら変動金利」、「金利固定させたいなら固定金利」と使い分けていくといいでしょう。
ただ、変動金利でも5年間は返済額が変わらないため、固定金利期間を5年以内で考えるなら、変動金利の方がおすすめです。
もちもちろんご自身の「適用金利」で、返済の見通しを立てたることも重要です。
推定される返済額を比較しながら考えていくと、後悔しない選択ができるでしょう。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所