住宅ローンジャーナル

住宅ローンで家を買うときは生命保険も見直してみよう

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

家族と保険イメージ

一般的に、住宅を手に入れるときは生命保険を見直すべきだと言われています。

住宅ローンでは生命保険の一種である団体信用生命保険に加入すること、マイホーム購入時は家族構成が変化する時期であることなどが主な理由です。

大きな金額が動くため、基本的にどんな世帯でも見直ししておいたほうが安心です。

どのように生命保険額を考えていくべきでしょうか。

家の購入で生命保険を見直すのは

生命保険の見直しについて論じる前に、生命保険の保障額(保険金額)について確認しておきましょう。

生命保険は契約者が死亡した場合の経済危機に備えることが目的です。

家計を支える世帯主は遺された家族のために大きな額の生命保険加入する必要がありますが、保障額を大きくすると保険料も相対的に高くなってしまいます。

そのため生命保険では、必要な額に過不足なく加入するのが理想です。

この「必要な額」を「必要保障額」といいます。

住宅購入で必要保障額はこんなに変わる

必要保障額は家族構成や生活形態によって違ってきます。例えば住まいが賃貸の場合、賃料は必要保障額に含めますが、マイホームであれば賃料は不要となります。

賃貸料金が毎月10万円だとすると、10年で1,200万円、20年で2,400万円にもなりますので、大きな違いです。

また、住宅購入時期は、結婚や出産など家族関係が変化する世帯が多いです。

今後の家計が大きく変わる場合が多く、保険を見直す必要性が高まります。

住宅ローンと生命保険見直しの関係

住宅を購入すると必要保障額から賃料を差し引くことは可能なため、生命保険の保険金額を下げていいといわれます。

しかし借入れ(住宅ローン)が新たに発生するから必要保障額は減らないのでは、と感じる人もいるかもしれません。

住宅ローンを組む場合における生命保保険の見直しでは、団体信用生命の存在が重要になってきます。

住宅ローンを利用する際には生命保険の一種である団体信用生命保険(以下:団信)に加入するのが一般的です。

団信とは住宅ローンに特化した生命保険で、融資の条件として加入を義務づけている金融機関がほとんどです。

団信の保険金額は住宅ローンの残高と連動しているので、住宅ローン契約者に万が一のことがあった時は保険金で住宅ローンが完済できます。

団信に加入していれば住宅ローン契約者が死亡してしまっても、金融機関はスムーズに融資を回収することができ、遺族に住宅ローンが残ることもないのです。

団体信用生命があれば生命保険金額は少なくてもいいのか

マイホーム購入時に住宅ローンを組んだとしても、団信に加入していれば必要保障額に負債(住宅ローン)額を加算しなくていいでしょう。

ただし、団信の保障範囲が死亡(高度障害を含む)のみの場合は、ケガや病気による収入減で住宅ローンの返済が苦しくなる可能性があります。

医療保険や預貯金が心もとない場合は「団信で疾病保障の特約を付ける」、「通常の医療保険を手厚くする」などの対策をとるといいですね。

また、固定資産税や維持管理費など、住宅ローン以外にも住宅にかかる費用があります。

中古住宅を購入した人は将来建て替えや大規模リフォームが要るかもしれませんし、家を手に入れてもマイホーム関連の必要保障額がゼロになるわけではない点に注意しましょう。

団体信用生命保険に加入できないときはどうする

健康状態が悪くて住宅ローンの団信に加入するのが難しい人はどうすればいいのでしょうか。

住宅金融支援機構のフラット35など、一部の住宅ローンに関しては団信に加入しなくても申し込みが可能です。

その時は預貯金や加入済保険の保険金額などを活用し、住宅ローン契約者に万が一のことがあっても、遺された家族が住宅ローンの返済に困らないよう、特に保険について入念に考えておかなければなりません。

団信に加入できない人は、ワイド団信の加入を検討してみましょう。

ワイド団信とは、引受け条件が緩和されている団信です。加入しやすい分、がんや3大疾病、入院保障などの特約はありませんが、死亡・高度障害時には住宅ローンの残高がゼロになります。

通常「死亡・高度障害」を対象とする団信は、保険料が不要です。

しかしワイド団信では保険料がかかり、0.2~0.3%程度の金利(もしくは別途保険料)が上乗せされます。

それでも、通常の生命保険よりは加入しやすく、かつ保険料が割安な傾向です。

子供が増えた場合の必要保障額は

子供が生まれたり、増えたことで家の購入を決意する夫婦は多いものです。

そこで子供が増えた時に必要保障額をどの程度増やせばいいのか考えてみましょう。

子供が誕生すると、食費や日用品費・水道光熱費といった生活費の増加、そして教育費がかかってきます。

このうち支出の割合が大きいのは何といっても教育費でしょう。

教育費は、進学先によって大きく変わってきます。公立と私立の教育費の差額はどの位になるのでしょうか。

【子供1人あたりの年間学習費】

公立 私立
幼稚園 23.4万円 48.2万円
小学校 32.2万円 152.8万円
中学校 47.9万円 132.7万円
高等学校 45.1万円 104万円

【参考:公立と私立における教育費の差】

幼稚園3歳から高等学校三年まで全て公立に通った場合の学習費総額 540万円
幼稚園3歳から高等学校三年まで全て私立に通った場合の学習費総額 1,770万円

出典文部科学省 平成28年度子どもの学習費調査

全て公立の場合と、全て私立の場合では、学習費総額に3倍以上の差が出ることがわかります。

中学校や高等学校を公立にするか私立にするかは地域性も大きいので、家を取得するタイミングなら見通しが立てやすいはずです。

地域の学校の通いやすさや評判を吟味し「中学は私立」「高等学校まで公立」など子供の進学先を考え、必要保障額を決めていくといいですね。

大学の場合、高等学校までと比較して格段に進路の幅が大きくなります。

国公立か私立かの違いはもちろん、自宅通学か否か、どのような学部に在籍するかによってかかる費用がかなり違います。

一例として私立大学における授業料・入学金・施設設備をご紹介します。

【私立大学初年度の学生納付金】

授業料 入学金 施設設備費 合計
87.8万円 25.3万円 18.6万円 131.7万円

※千円以下四捨五入

出典文部科学 私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

子供が増えたことで生命保険を見直す夫婦は多いですが、一口に教育費に備えるといっても、進学先によって金額が変わってきます。

最低限の額でいいのか、それとも本人が望んだ場合に備えて余裕を持って準備していくのか……。

考え方に合わせて保険金額を設定していきましょう。

住宅ローンを組む場合における生命保険見直しのポイント

家の購入時は生命保険を見直すいい機会です。ただし、世帯によって増額か減額かは違います。

住宅ローンのことだけでなく、世帯の家族・資産状況、将来の支出などを包括的に考えていくことがポイントです。

必要な金額を箇条書きにして書いてみると分かりやすいのでおすすめです。

必要な金額を書き出すと金額が大きくなることが多いですが、実際には公的保障である遺族年金が受けとれますので、全額の生命保険に加入する必要はありません。

日々の生活は遺族年金をベースに、大きな支出(葬儀代や進学費用)は保険金額で用意すると考えると分かりやすいです。

家族構成が変わった世帯では、公的遺族年金の額も変わってくる可能性があります。

世帯主が亡くなったときにどのくらいの額が受給できるのかも確認しておくといいでしょう。

まとめ

住宅を購入すると必要保障額から「賃料」を除くことができますが、保険金額から賃料分を単純に引くだけでは正確な金額とは言えません。

他にも複数の要素を考える必要があります。もともと住宅ローンは借入(借金)ですので、家計を整えるべき時でもあります。

保険について見なおすのと同時に、家族や家計のこれからについても考えてみましょう。

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