金利の知識

住宅ローン金利を左右する短期プライムレートや長期金利とは?住宅ローンへの影響を紹介します

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

住宅ローン金利を左右する短期プライムレートや長期金利とは?住宅ローンへの影響を紹介します

住宅ローンを組むにあたり、返済額に影響を与える金利は気になるところでしょう。

しかし、金利がどう決まっていくのかはよくわからない、という人も多いと推測します。

適用金利は返済額にダイレクトに影響するため、固定金利、変動金利に関わらず金利の決まり方は知っておきたいです。

また、金利の決まり方を知ることで、固定金利と変動金利のメリットとデメリットをより深く理解することが可能です。

住宅ローンにおける固定金利と変動金利

住宅ローンの金利の決まり方は、その種類によっても異なります。

そのため最初に、住宅ローンの金利について確認しましょう。

大きく「固定金利」と「変動金利」に分けて紹介します。

固定金利

固定金利とは適用金利が変わらない住宅ローンです。

借入時から返済額が変わらない安心感がありますし、安定した返済計画を立てやすいです。

一方で金利水準は変動金利よりも高めです。

変動金利

変動金利は市場動向に応じて金利が変動する住宅ローンです。

金利上昇リスクとともに、金利が下がる可能性もあります。

また、金利水準が固定金利よりも低めです。

固定金利は安心感がある一方で金利が高めです。

変動金利は当初の適用金利が低めである分金利上昇リスクがあり、どちらも一長一短があります。

両者を正確に比較するためには変動金利の「リスク」がどんなものなのかを知っておくことが必要でしょう。

そこで変動金利への影響が大きいプライムレートについて紹介します。

変動金利の金利を決めるプライムレートとは?

変動金利の金利変動に影響を与える「プライムレート」

そのプライムレートには大きく短期プライムレートと長期プライムレートがあり、そのうち変動金利に影響を与えるのは短期プライムレートです。

略して「短プラ」と呼ばれることもあります。

短期プライムレートとは

「プライムレート」とは、金融機関が優良企業に融資を行う際の優遇金利のことです。

貸出期間1年未満のレートが「短期プライムレート」、1年以上が「長期プライムレート」。

融資先が優良企業であるため、返済不能リスクは小さいです。

また一般に、融資期間が長いほど返済不能リスクは高くなるため、短期プライムレートは「返済不能リスクが小さい=金利が低い」レートといえます。

短期プライムレートは、にほぼ連動しています。

日銀の政策金利とは金融市場・経済・物価情勢などを総合的に見て金利の方向性を決定するものです。

経済情勢や景気の影響は受けますが、日銀の政策金利によって金利はある程度コントロールされているのです。

短期プライムレートと変動金利

短期プライムレートは経済情勢や景気の影響を受けますが、日銀の政策金利によってある程度コントロールされていることもり、急激な変動はしにくいです。

仮に大きな経済ニュースが生じた場合でも、短期プライムレートへの反映はやや時間がかかるでしょう。

そもそも変動金利には「1.25倍ルール」と「5年ルール」があります。

5年ルール

変動金利の金利見直しは半年に一度だが、金利が変更した場合も金利が上昇していても、5年間は返済額が変割らないとのルール

1.25倍ルール

金利が上昇して返済額が多くなる場合も、その返済額が従前の住宅ローンの1.25倍以上となってはならない、とのルールのこと

上記のルールがあるため返済価額が一気に25%以上増えることはありません。ただし、このルールが適用される場合、本来金利上昇によって支払うべき返済金が免除されるわけでありません。

支払いは猶予されるだけですので、猶予された返済額は住宅ローン完済時に清算することになります。

また上記のルールが適用されるような急激な上昇ではなく、「緩やかに上昇し続ける」ケースがあります。

そのような場合少しずつ返済額が増えていくことが懸念され、長期的には返済額は借り入れ当初と比較すると大きく膨らんでしまいます。

変動金利はこのような短期プライムレートに連動する金利上昇リスクがありますが、金利上昇局面に至った場合も、金利上昇を早めに察知しておけば備えることができるはずです。

例えば金利が上昇する前に繰り上げ返済を行って返済額を圧縮しておくことや、長期金利への借り換えなどが該当します。

ただし長期金利は変動金利に先立って上昇するため、長期金利への借り換えを行う場合は迅速に動く必要があります。

なお、金利が上昇する場合にも、必ずしも手を打たなければならないわけではありません。

借入時から金利上昇リスクを見込んでいれば、「想定内の上昇なので問題ない」と判断することもできます。

逆に金利上昇時と子供の教育費のピークが重なるような家計の場合は、少しの金利上昇が重い負担になる可能性があります。

自身の家計状況に応じて対応策を取っていくといいでしょう。

固定金利の金利を決める長期金利

続いて固定金利に影響を与える「長期金利」についても紹介します。

固定金利の住宅ローンは「融資実行時」の金利が住宅ローン金として適用されることが多いです。

申し込みから融資実行時まではやや時間が空くため、適用金利が決定するまでに金利が動く可能性があります。

そのため金利がどう決まるのかは知っておきたいです。

前提として、固定金利の金利は「長期金利」の影響を受けます。長期金利は主に債券の相場によって決まり、代表的な長期金利が「新発10年国債利回り」です。

長期金利は市場の材料に対し反応し、短期プライムレートよりも金利への反映が早いため注意したいです。

住宅ローンは仮審査、申込、本審査……といくつかの手順を踏んでから融資実行に至ります。そのため既述の通り、「融資実行時」の金利が適用されるタイプの住宅ローンでは、融資が実行されるまで間に金利が上昇する可能性があります。

さらに注文住宅やマンションを購入する場合は建物が完成するまでのタイムラグがあるため、金利動向に注意しつつ最終的な金利選択をするといいでしょう。

なお固定金利の住宅ローンの中には、原則として「融資実行時の金利が適用される」としつつ、「申込み後6ヶ月以内に借入れする場合は、申込み時または融資実行時のいずれか低い金利を適用する」としている商品もあります。

金利選択を考えるときは、併せて金利適用の時期についても確認しておきましょう。

変動金利と固定金利で迷ったら

変動金利と固定金利、どちらの金利で住宅ローンを組むか迷ったら、両者の特徴から自身にとってのメリットとデメリットを見極めるといいでしょう。

変動金利と固定金利の特徴
変動金利 固定金利
金利決定の要因 短期プライムレートに連動 長期金利(代表は新発10年国債利回り)に連動
金利変動時の動き 長期金利(固定金利)と比較して遅行傾向 変動金利に先行して上昇

変動金利は多少金利が上昇しても問題ないような、返済額に余裕がある人が向いています。

もしくは、上昇リスクに対応できる資金を確保できる人が向いているでしょう。

逆に支出の変動要因が多い人は、返済額が一定の固定金利をおすすめしたいです。

特に家計の内で住宅ローン割合が高い人については、金利上昇リスクに弱いので固定金利で安定した返済を検討したいです。

家族構成やライフプランにもよりますが、住宅ローンの家計に占める割合が25%を超える場合は住宅ローン割合が高いといっていいでしょう。

住宅ローンのミックスローンとは

なお、金利選択に迷ったらミックスローンを組む手もあります。

ミックスローンとは2つの金利タイプを組み合わせて住宅ローンを借りる方法です。

例えば4000万円の住宅ローンについて「変動金利2000万円」「固定金利2000万円」などとします。

2つの金利をミックスすることで、ぞれぞれのメリットは活かし、デメリットを抑えることができます。

先の例でいえば、「金利上昇時には変動金利を繰り上げ返済」、金利が変わらない、もしくはより低くなるケースでは「返済額の大きい固定金利を繰り上げ返済する」など、状況に応じて住宅ローンを返済していけます。

なお、通常は返済割合が一定でなくとも構いません。

また返済期間を分けられるミックスローンもあります。

固定金利は35年返済年として、金利上昇のリスクがある変動金利は返済期間を短くする方法や、変動金利を2つミックスして、片方の返済期間を短くすることでリスクを抑える方法があります。

変動金利と固定金利どちらかに決める方法ではなく、より柔軟な住宅ローンを組みたい場合は検討してみるといいでしょう。

住宅ローン選択時には金利の決まり方も考慮しよう

住宅ローンの金利には大きく「変動金利」と「固定金利」があります。

超低金利時代である今は、金利差が小さく、金利だけでは違いを見極めにくいです。

そのため変動金利のメリットとデメリット判断するのに、金利の決まり方も含めてリスクを判断してみるといいでしょう。

変動金利と固定金利双方のメリットとデメリットをうまく活用したい場合は、ミックスローンを選択する手もあります。

金利の正しい知識を持ち、複数の選択肢の中からよりニーズにあった物を選んでいきましょう。

参考住宅ローンの適用金利は人によって違う

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