住宅ローンジャーナル

公務員の住宅ローンは有利なこともあるが、注意すべき点も

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

公務員の住宅ローンは有利なこともあるが、注意すべき点も

実は住宅購入とそれに伴う住宅ローン審査において、公務員は有利であると言われています。

さらに、公務員は公務員な向けの共済ローンもあるため、住宅ローン選択の幅が広いメリットもあります。

住宅ローンにおける公務員の優位性の理由や特徴、さらに注意点も紹介します。

住宅ローンにおける公務員の優位性

公務員が住宅ローン審査において有利と言われているのは、次の3つの優位性があるからです。優位性の内容と理由を解説します。

1 雇用と収入が安定している

公務員は失業のリスクが低いです。

解雇の可能性が全くないとはいえませんが、犯罪行為や業務上重大なミスを起こす、などの特別な事例でない限り失業する恐れはありません。

収入が景気に左右されにくい点もメリットです。

民間企業であれば、経済状況や企業業績によって給与が変動します。

また本人の能力や実績によって収入がどうなるかは未知数です。

一方公務員であれば経済状況や業績は基本的に関係ありませんし、給与も年齢や役職に応じて段階的に引き上げられていきます。

住宅ローン審査においては収入の安定性が重視されるため、収入が途切れにくく、収入額も見通せる公務員は歓迎されるのです。

厳密に言うと公務員の給与は、民間企業の給与水準を参考に決定されるため、経済状況の影響を全く受けないわけではありません。

しかし、仮に給与が下がる場合でも世間の景気水準と連動しているため極端に下がることは考えにくいです。

2 退職金制度がしっかりしている

民間企業の場合退職金制度は企業ごとの規定になるため、退職金の有無や金額はまちまちです。

しかし公務員の場合法律で「退職手当制度」が規定されているため退職金額もかなり正確に見通すことが可能です。

例えば民間企業の会社員が、退職金で退職時に住宅ローンの一括返済をしようと考えたとしても、退職金の確実性が担保されないため、退職金額を少なく見積もる、想定よりも退職金が少なくなる可能性を考慮して自己資金を用意するなどの対策が必要ですが、公務員ならばそのような懸念は少ないです。

3 福利厚生が充実している

公務員は各種手当や休暇制度が充実しています。

例えば育児休業は最長3年間取得がで可能なため子育てによる退職リスクが少ないです。

例えば、共働き世帯が夫婦で働き続けることを前提に住宅ローンを組む場合、子育てと仕事の両立が前提になります。

しかしながら子育てと仕事の両立は簡単ではありませんので、勤務先の育児休業制度が整っているかどうかは重要です。

全体として、公務員は国が押し進める「働き方改革」の恩恵を受けやすいです。

働き方改革は長時間労働の是正や育児・介護と仕事の両立など、様々な労働者にとって働きやすい環境を構築することを目的とした改革です。

そのため公務員は、総合的にワークライフバランスがとりやすく、仕事を継続しやすいといえます。

公務員が住宅ローンを借りるときの注意点

公務員は住宅ローン審査において優位性がありますが、注意点もあります。

公務員は返済計画が一層重要

公務員は収入が安定している代わりに、大きな年収アップも考えにくいです。

また働き方の柔軟性も少なく、仮に支出が増えて生活が苦しい場合に「夜にダブルワークをする」「週末に副業を行う」「残業を引き受けて一時的に収入を上げる」などといった対策も取りにくいです。

収入を見通したうえで無理ない返済計画を練ることが重要でしょう。

一般に住宅ローンにおいては借りられる額ではなく返済できる額を借りることが大切ですが、公務員の場合は特にその姿勢を忘れないようにします。

返済計画を練る際は、毎月の返済額だけでなく固定資産税やメンテナンス費用も考慮します。

メンテナンス費用はマンションであれば管理費や修繕積立金、一戸建てであれば将来の外壁塗装費用やリフォーム費用などが該当します。

マンションにおける修繕積立金は将来値上がりの可能性があるので注意が必要です。

また、外壁塗装やリフォーム費用は一回当たりの金額が大きいですので、早い時期から準備しておきたいです。

返済計画のシミュレーション

返済計画を考える際には定年時の住宅ローン残高を把握しておくことも重要です。

次の「35歳時/3500万円」「40歳時/3000万円」2つの要件で、60歳時の住宅ローン残高を確認してみます。

【シミュレーション1】
借入額:3500万円
申込者年齢:35歳

毎月返済額 102,095円
60歳時点残高 約1154万円
総返済額 約4288万円
完済年齢 70歳

【シミュレーション2】
借入額:3000万円
申込者年齢:40歳

毎月返済額 87,510円
60歳時点残高 約1440万円
総返済額 約3675万円
完済年齢 75歳

【住宅ローン共通条件】
※住宅ローンは全期間固定型、金利1.2%
※返済期間35年

上記のシミュレーションでは、借入年齢は「35歳時」「40歳時」です。

年齢が遅くなると返済リスクが上がるため、40歳時は500万円借入額を少なくしました。

その結果、毎月返済額は1万円以上少なくなりました。

申込み年齢や借入金額で毎月返済額や60歳時点の住宅ローン残高が大きく異なることが分かります。

返済が可能かどうか、自身のケースでシミュレーションすることが大切です。

公務員でも審査が厳しいケースがある

優位性のある公務員ですが、必ずしも審査に通るとは限りません。

公務員でも、次のようなケースでは審査が厳しいでしょう。

ケース1:信用情報に傷がある

信用情報とはクレジットカードやカードローンその他の借入れなどにおける契約内容、返済・支払い状況、利用残高などといった取引実績や取引履歴を記録した情報です。

延滞した場合も記録に残り、それを俗に「信用情報に傷がつく」と表現します。

住宅ローン審査においては信用情報を確認されます。

そのため公務員といえども、クレジットカードやカードローンにおける延滞があると住宅ローン審査を通るのは難しいです。

そのような場合は延滞履歴が削除されるまで待って住宅ローンを申し込みます。延滞の記録は数年間で削除されます。

ケース2:健康状態が悪い

健康状態に問題があり団信に加入できないケースも住宅ローンを組むのは難しいです。

多くの住宅ローンでは、契約において団信加入が義務付けられているからです。

フラット35保証型など一部の住宅ローンでは団信未加入でもローンが組めるものがありますが、健康状態に不安がある状態で団信未加入の住宅ローンを組むのはリスクが高いです。

その場合は団信の加入要件が緩和されている「ワイド団信」を検討してみるといいでしょう。

公務員が利用できる共済貸付とは

公務員が家を購入する場合には、民間の住宅ローン以外に所属する共済組合のローンも利用可能です。

例えば次のような共済組合があります。

国家公務員の共済:各省庁の組合や裁判所共済組合、日本郵政共済組合など

地方公務員の共済:公立学校共済組合、警察共済組合、全国市町村職員共済組合など

共済組合ごとに詳細は異なりますので、ここでは地方職員共済組合の「住宅貸付」を紹介します。

【地方職員共済組合「住宅貸付」】

利用条件

  • 組合員期間:1年以上
  • 対象:自己の居住の用に供する住宅の新築、増築、購入、住宅敷地の取得等のための資金
  • 貸付額:組合員の月給与と勤続年数に応じて貸付額が決定(限度額1800万円)
  • 返済期間:30年以内
  • 貸付金利率:年1.26%(在宅介護対応住宅に係る加算部分は1.00%)

上記の例では、借入額(貸付額)は月給与と勤続年数の縛りを受けるうえに、限度額が1800万円とやや少ないです。

また返済期間も30年と、通常の民間ローンと比較すると短いです。

金利も民間の住宅ローンよりもやや高めの水準となっています。

しかし勤務先から住宅ローンを借りられるのはある種の安心があるでしょう。

共済組合の住宅貸付だけに頼るのではなく、共済の住宅貸付と民間の住宅ローンを併用する方法もあります。

例えば、共済組合の住宅貸付で頭金を準備し、残りの金額を民間の住宅ローンで借りる方法もあります。

このように選択肢の幅が広い点も公務員のメリットです。

出典地方職員共済組合「貸付事業の詳細

公務員の住宅ローン メリットと注意点を知って賢く利用しよう

公務員の住宅ローンは審査における優位性がありますが、やはり返済がある以上慎重に利用しなければなりません。

また、信用情報や健康状態によっては審査が厳しくなる点も通常の借入れと同様です。

とはいえ、公務員は雇用や収入の安定性が高いので、返済できる額を見極めればスムーズな借入れと返済が叶うでしょう。

返済計画をしっかりと立てて、安心できる住宅購入をしてください。

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