基礎知識

住宅ローンで無理の無い返済額はいくら?返済比率や将来の支出から考えよう

住宅ローンで無理の無い返済額はいくら? 返済比率や将来の支出から考えよう

マイホーム購入にあたり、無理の無い返済額で住宅ローンを組むことは重要です。

毎月の返済において負担が大きいと、せっかくの新居を楽しむゆとりもなくなってしまうかもしれません。

無理の無い返済額を検討する場合に役立てたいのが家計を見通す力です。

どのように家計を見通していくべきか、やり方とポイントを紹介します。

住宅ローンの「返済比率」で無理のない返済額を見つけよう

家計を見通す場合に、よく利用されるのがシミュレーションです。しかし住宅ローンで作成されるシミュレーションは30年や35年といった長期的な視野で作成することが多いです。

また毎年の収支は、物価変動や生活費や収入の増減、住宅費に関わる固定資産税や防アリ・外壁塗装などのメンテナンス費など、多くの要素を考慮しなければなりません。

ここでは住宅ローン返済の安全を計ることができる「返済比率」を利用して、簡易的に無理のない返済額を確認していきます。

住宅ローンの返済比率とは

「返済比率」とは無理の無い返済額を数値化したもので、年収における返済金の割合のことです。計算式は次のとおりです。

返済比率(返済負担率)(%)=年間返済額÷年収×100

年収500万円の世帯を例にすると、

住宅ローンの年間返済額が120万円の場合
120万円÷500万円×100=24%

住宅ローンの年間返済額が150万円の場合
150万円÷500万円×100=30%

なお、年間返済額は住宅ローンの返済金だけとは限りません。

マイカーローンや家電ローンなどの返済金があればそれらも含めて計算します。

一般的に、住居費は収入の3割以内が適切と言われています。

しかし、マイホームは購入後にもメンテナンス費や固定資産税などが発生するため、返済比率の割合は20~25%程度に抑えておきたいです。

返済比率の数値を参考にすることで、住宅ローン返済額のリスクを客観的に判断することができます。

しかし返済比率は現在の家計状況をベースにしたものですので、将来の家計を見通すにはやや情報が足りません。

例えば、購入時の返済比率を20~25%程度と低く抑えたとしても、今後支出が増えれば返済が苦しくなる可能性があります。

そこで次章から、家計への影響が大きい「教育費」と「老後資金」について紹介します。

教育費から考える無理の無い返済額

子育て世帯の多くは、子どもが小さいうちにマイホーム取得を検討します。

子どもにかかる教育費は、子の成長とともに負担が大きくなる傾向にあるため、将来の教育費を見据えて住宅ローンの妥当性を判断するといいです。

教育費ピーク時の返済比率

無理のない返済額を見極めるために、教育費が大きい時期の「教育費+住宅ローン」の金額を確認しておきます。

文部科学省の調査による、1年あたりの教育費は次のとおりです。

小学校

公立

私立

32万円

159万円

中学校

公立

私立

48万円

140万円

高等学校

公立

私立

45万円

96万円

私立大学(初年度)

授業料

入学金

施設設備費

合計

91万円

24万円

18万円

134万円

出典文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について(PDF)」

出典文部科学省「私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」

※万円以下切り捨て

※高校等については「高等学校等就学支援金制度」が、大学・短大等については「高等教育の無償化」の教育費支援があります。それぞれ異なる所得制限がありますが、適用の有無で教育費は大きく変わります。上記の教育費は目安とお考え下さい

これだけの負担が増えることを考慮したうえで住宅ローンの返済額が妥当かどうかを見極めていきます。

例えば、公立中学校は年間で50万円程度かかります。

年収500万円の家計で考えると、年収における教育費の負担は10%です。

住宅ローンの返済比率が25%の場合、両者合わせて35%です。収入の3割以上が教育費と住宅ローンに回るため、残りの金額で生活が回せるか検討します。

返済が苦しい時期がある場合

教育費のピーク時は家計が苦しい場合、返済に不安が生じることもあるでしょう。

その場合は教育費資金を準備していくことで、ピーク時の負担を減らすことも考えていきます。

例えば、大学入学時の費用が苦しい場合は大学入学時までに資金を積み立てていきます。

文部科学省の調査によると私立大学(初年度)に必要な額は「134万円」となっています。

子どもの大学入学までに15年あるとしたら、「134万円÷15年=約8.9万円」。

つまり、大学入学時期を乗り越えるために積み立てるのは「月当たり7~8千円」です。この積み立てを住宅ローン返済と同時並行で支出できれば、教育費との両立が可能になります。

具体的数字を確認しながら、住宅ローン返済のリスクとなる支出の増加に備えていきましょう。

老後資金から考える無理の無い返済額

住宅ローンを返済しても、老後資金が不足してしまっては問題です。

そのため本当の意味で「無理の無い返済額」を見極めるためには、老後資金も算出する必要があります。

とはいえ老後資金を算出するためには多くの情報が必要になります。

住宅購入時に将来の老後の生活を具体的にイメージできる人はまれだと思いますし、ここでは定年時の「住宅ローン残高」に絞って紹介します。

定年時の住宅ローン残高が重要な理由

定年時の住宅ローン残高に注目するのは、その金額によって老後の生活が大きく変わるからです。

通常老後は公的年金を受給できますし、ご自身で個人年金や終身保険に加入している人もいるでしょう。

しかし住宅ローン残高が大きいと、それらの資金計画が大きく狂ってしまうかもしれません。

住宅ローンの残高を把握して準備おけば、公的人金や個人年金・終身保険等を老後の生活費に回すことが可能です。

定年時の住宅ローン残高はどの程度か

住宅ローン残高は借入額によって異なりますので、いくつか例を紹介します。

【前提条件】
住宅ローン借入時 35歳
金利 全期間固定金利 金利1.5%

  1. 借入額3000万円ならば、65歳時の住宅ローン残高 約530万円
  2. 借入額4000万円ならば、65歳時の住宅ローン残高 約700万円
  3. 借入額5000万円ならば、65歳時の住宅ローン残高 約880万円

借入れ額によって65歳時の残高に差があります。

退職金がある人は「退職金で足りるかどうか」を、退職金を温存しておきたい人は「逆算していくら貯めていけばいいのか」を考えます。

なお、定年が60歳である場合や、早期リタイヤを希望している人は、自身のケースで必要な住宅ローン額を確認します。

実際には、定年後も住宅ローンをコツコツ返済してきたいと考える人もいると思います。

コツコツ返済を選択する場合は、毎月返済額を支出できるか公的年金や個人年金の金額を算出しで、現実味があるか見極めます。

住宅ローンの返済が厳しい場合の選択肢

既述のとおり、「住宅ローンの返済比率」「教育費の負担」「定年時の住宅ローン残高」を確認することで、住宅ローンの借りすぎを防止することができます。それぞれの活用法をまとめたのが次の表です。

「無理の無い返済額と思っていたが、教育費も含めて考えると難しい」「定年時の残高が思ったよりも大きい」といった場合には、住宅ローン借り入れ額の見直しを検討することをおすすめします。

もしもすでに住宅を購入した後ならば、住宅ローンの繰上返済や借り換えを検討しします。

繰上返済は利息軽減効果が得られますし、金利の低い住宅ローンへ借り換えすれば返済額を抑えることができるからです。

また住宅購入後の場合は、マイホームを売却する選択肢もあります。

自宅の資産価値があることが前提となりますが、定年後や子どもが独立したタイミングで住宅ローン残高以上の価格でマイホームが売却できれば資産状況が好転します。

資産価値が住宅ローン残高を割り込む場合は取れない手法ですが、選択肢の一つとして知っておくといいでしょう。

内容

算出・確認

活用法

1

住宅ローンの返済比率

返済比率(返済負担率)(%)=年間返済額÷年収×100で算出

年収における負担割合を、数値で「見える化」できる

2

教育費の負担

統計上の教育費を確認

住宅ローンと教育費を合わせた負担感を見極めることができる

3

定年時の住宅ローン残高

住宅ローンの借入条件から算出

定年時に必要な住宅費が分かる(定年時一括返済の場合)

まとめ 無理の無い返済額は総合的に判断する

住宅ローンの無理の無い返済額を考えたとき、数値で家計への影響が見える返済比率は分かりやすい水準です。

しかし現状の家計ベースの返済比率だけで住宅ローン金額の妥当性を判断できるわけではありません。

将来の教育費や、定年時の住宅ローンの残高なども考慮したうえで安全性の高い住宅ローンを組んでいきましょう。

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