(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンは20年や30年といった長期にわたって返済していきますが、返済期間はある程度任意に決めることができます。
「はやく返したい」と思う人もいれば「コツコツ返済していきたい」人もいるでしょう。
短く借りる場合と長く借りる場合、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分の返済プランに合わせて借りる期間を決めていきましょう。
住宅ローンの返済期間、一般的には?
金融機関の公式サイトを見ると、住宅ローンの返済期間で多いのは「35年」となっています。
ただしこれは「最長35年」ですので、35年間きっちり住宅ローンを利用しなければならないわけではありません。
借主の意向より長い、もしくは短い期間を金融機関が提示することもあるかもしれませんが、自身の希望を言うことは全く問題ありません。
ただし、借入年齢による規定を超える住宅ローン期間を設定することはできません。
例えばフラット35の場合は「借入申込時の年齢から80歳となるまでの期間」が最長の借入期間となっています。
仮に申込年齢が60歳なら最長で20年(80-60=20)となります。上限年齢は金融機関によって違いますが、80歳が最長水準と考えていいでしょう。
住宅ローンを借りる期間は何年が多い?
実際に、住宅ローンの借入期間を35年未満にしている人も多いです。
住宅金融支援機構の「2018年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」から、借入期間を利用割合の多い順にご紹介します。
借入時の住宅ローン期間
- 26年~30年以下の期間 41.9%
- 21年~25年以下の期間 21.2%
- 31年~35年以下の期間 20.8%
(上位3つ)
出典:住宅金融支援機構「2018年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」
35年未満で住宅ローンを組む人は意外と多いようです。
なお、実際に完済した年数は、上記よりもなお短く、15年以下で完済した人が39.2%を占めています。
ただし上記には、定年近くに持ち家を建て替える人や、住宅ローンを借り換える人も含まれています。
ですので、現役世代が新たにマイホームを取得するケースでは、35年かけて返済する人の割合はもっと高いでしょう。
借入期間の選択肢は「長く借りる」「短く借りつ」の双方あることを知っておくことが重要といえます。
住宅ローン、返済期間による特徴の変化
あくまで相対的なものですが、短く借りる場合と長く借りる場合のメリット・デメリットを順番に見ていきます。
住宅ローンを短く借りる場合のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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返済期間が短く、早く返済し終われば家計から「住宅ローン支出」がなくなるのでうれしいです。
また、長く返せばその分金利負担も重くなるので総返済額の点からも有利です。
さらに、返済期間が短い住宅ローンは金利の優遇があるケースもあります。金利優遇の例を、メガバンクであるみずほ銀行のケースでご紹介します。
みずほ銀行ネット専用住宅ローンの適用金利
借入期間 | 適用金利 |
11年~15年 | 1.095% |
16年~20年 | 1.145% |
21年~25年 | 1.175% |
26年~30年 | 1.205% |
31年~35年 | 1.215% |
※2019年6月
出典:みずほ銀行|みずほネット住宅ローン「全期間固定プラン」
借入期間が短いほど適用金利が低いことがわかります。
こうしてみると、借入期間が短いほうがメリットが多いと感じるかもしれませんが、毎月の負担が重くなる点には注意が必要です。
特にマイホーム購入後に子どもが増える可能性のある世帯は、教育費と両立して住宅ローンを支払っていかなければならないことを忘れないようにします。
途中で返済が苦しくなっても、返済期間を長くするのは簡単ではありません。確実に毎月返済できる額なのかどうか、シビアに見極めなければなりません。
住宅ローンを長く借りる場合のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
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毎月の返済額が抑えられれば日々のやりくりは楽になります。
返済期間が長くなる分、総返済額は多くなりますが、昨今はそもそも金利水準が低めなので、そこまで差額が大きいわけではありません。
毎月の返済を苦しくしてまで返済期間を短くする必要はないでしょう。
総返済額をどうしても抑えたい場合は、状況に応じて繰上返済するほうが堅実です。
以前は、繰上返済手数料が有料の金融機関が多かったですが、最近は無料でできる金融機関が増えています。
また、1万円程度から繰上返済できるてんも使い勝手がいいです。
「子どもが独立して生活に余裕ができた」「終身保険が満期になった」など、家計や資金に合わせて繰上返済していけるでしょう。
疾病特約のついた団信に加入している人は、返済途中で団信の適用条件を満たして返済が不要になる可能性もあります。
病気になるのはうれしいことではありませんが、加齢により罹病リスクが高くなるのは事実です。返済額を抑えた分を貯蓄に回せば、罹病時にも備えることができます。
ただし、完済年齢が定年後にかかる場合は、退職後も返済が続けられるよう留意しなければなりません。
退職後の年金だけでは住宅ローンの返済が難しい場合、退職時に一括返済をする、個人年金等でリタイア後の収入を増やすなどの対策が必要です。
返済期間を決める時のポイントは






返済負担率を25%未満にすると家計が安定するとされています。
他の借り入れがあればそれも含めて計算するので、家計の健全性を総合的に判断できます。


ご自身の家計で、返済期間ごとに返済負担率を算出するのです。
そのうえで返済負担率が低く、かつ返済期間が短い落としどころを探すのです。


まず先に、希望する返済負担率を「20%」「25%」などと大まかに決めていくといいでしょう。
返済期間ごとの、毎月返済額
返済期間によって毎月の負担はどのくらい変わるのか、年収500万円の世帯を例にして確認してみましょう。
【借り入れ条件】
- 借入額 3,000万円
- 金利1.2%(全期間固定)
- 借入期間 「25年」「30年」「35年」
- 借入年齢 35歳(定年65歳とする)
A:借入期間25年
毎月返済額 約11.6 万円
返済負担率 27.8%
完済年齢 60歳
返済負担率は25%超ですが、60歳で完済できます。
定年まで5年ありますので、老後資金が不足する場合は5年かけて積み増しが可能です。
B:借入期間30年
毎月返済額 約10万円
返済負担率 24%
完済年齢 65歳
定年できっちり完済でき、老後資金の計画を立てやすそうです。住宅ローンを毎月返済しながら老後資金も準備していけるかがカギですね。
C:借入期間35年
毎月返済額 約8.8 万円
返済負担率 21.1%
完済年齢 70歳
月々の返済額は小さくなりますが、定年後も住宅ローンの返済が続きます。
一括返済できるようこまめに繰上返済をするか、退職金や自己資金を利用して完済していかなければなりません。
借入期間により返済負担率がずいぶん変わってきます。
一般的には、年収が多い人なら返済負担率は高めでも余裕があるとされていますが、家計は人それぞれです。
ご自身の家計で住宅ローンの割合(年間負担率)をどの程度するべきか考えていくといいでしょう。
まとめ 返済期間と毎月の負担をバランスよく
返済期間を「短く」「長く」の選択はそれぞれメリットデメリットがあるため、どちらかが優れているというわけではありません。
毎月の負担も考慮したうえで、バランスのいい返済期間にすることが大切です。
自身にとってメリットがある方法を選んでいきましょう。
参考【住宅ローンの選び方】初心者でも迷わないための比較ポイントと必須知識を解説!

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所