(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンの借り入れにおいては、勤続年数や年収などが審査されます。
また、公式サイトや審査条件に明記されているわけではありませんが、所属している会社や勤務形態も、一般的に「属性」と呼ばれ考慮されます。
どんな属性が審査に良い影響を与えるのでしょう。また逆に、注意が必要な属性もあるのでしょうか。
意外と知られていない、住宅ローン審査の「属性」要素
住宅ローン借り入れの際は、借入先金融機関の審査を受けることになります。
審査内容は金融機関ごとに異なりますし、詳細も公表されていません。
とはいえ一般的には、「年齢」「年収」「勤続年数」「健康状態」「物件の担保価値」などが審査対象なってきます。
審査に臨む人の多くが気にするのは、まず「年齢」と「年収」ではないでしょうか。
最初に、それぞれの一般的な要件を押さえておきましょう。
年齢
年齢は、より正確にいうなら「完済時年齢」といっていいでしょう。
そのため、「若ければ若いほど有利」とは限りません。
借入時の年齢が少し高めであっても、年齢に応じて返済期間を短く設定できれば不利に働くことはないでしょう。
通常は完済時年齢を「満75~80歳未満」程度と設定している金融機関が多いです。
年収
年収の要件は「300~400万円」程度のケースが多いですが、より低い年収でも借入可能な金融機関も存在します。
また、全期間固定金利のフラット35では、年収要件は設けていません。
とはいえ代わりに、返済負担率の制限がかかります。
返済負担率の基準は次の通りです。
年収に占めるすべての借入れの年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が次の基準以下であること
- 年収400万円未満 返済負担率30%以下
- 年収400万円以上 返済負担率35%以下
上記を基本としつつ、さらなる注意点として「属性」についてお伝えしていきたいと思います。
繰り返しになりますが、属性によって審査が異なることは明記されていません。
しかしサイト上では、「会社員」と「自営業者」で区別して表記している金融機関が多いです。
これは、会社員と自営業者、各自必要な書類を案内するために便宜上別々に表記せざる得ない事情もあるかと思います。


例えば、Aさんが住宅ローンの申し込みを考えているとします。
そのとき、Aさんと同じ年収のBさんが「〇×銀行」で3,000万円の住宅ローンを借りたと聞きました。
Aさんが「自分とBさんは年収が同じだから、自分も審査に通るだろう」と考えたらどうでしょう。


また、この時属性も重要な要素になってきます。
Bさんは誰もが名前を知っている大手企業に勤めていて、Bさんは地元の中小企業であるならば、金融機関の印象はだいぶ違ってくるでしょう。

そういった考えでいると思わぬ「審査落ち」を経験するかもしれませんね。

年収は住宅ローン審査で重要な要素ではありますが、それにプラスして「属性」についても知っておくことで、
より慎重に住宅ローンの申し込みができるでしょう。
公務員属性は歓迎される?
同じ会社員であれば、より規模の大きな会社がいい「属性」とされるのは想像できると思います。
会社員以外では、「公務員」が金融機関で喜ばれる属性とされています。
その理由は主に3つです。
理由1 雇用の安定性
公務員は原則として解雇や倒産リスクがありません。
また、育児休暇や介護休業などの制度も充実しているため、そういった個人事情が生じても仕事を継続しやすいです。
本人に働く意思があれば、定年まで勤めやすい環境といっていいでしょう。
理由3 給与の安定性
公務員の給与は、民間の会社のように業績によって「大きく下がる」ということは考えにくいです。
特にボーナスについては、民間の会社では景気や業績の影響を大きく受けますが、公務員では安定的に支給されます。
民間の会社員であれば、ボーナス払い利用は慎重に行わなければなりませんが、公務員ならボーナス払いが利用しやすいです。
理由2 退職金の透明性
公務員の場合は、勤続年数や職種などにより、退職金の額を早い段階で見通すことが可能です。
住宅ローンを組む段階で、退職金の額を推測して返済計画を立てることが可能です。
金融機関にしてみれば安定性が高い公務員は、優良顧客といえます。
ただし、公務員だとしても「信用情報に傷がある」、「マイカーローンや家電ローンなどその他の借り入れが多い」、といった場合には住宅ローンの借り入れが難しくなることもあります。
公務員だからといって、絶対的に有利なわけでありませんので注意しましょう。
自営業属性は注意が必要
「自営業者」については、雇用者以外の人と考えるといいでしょう。
会社に雇われるのではなく、自身で事業を行う人のことですね。例えば、個人で仕事を受注する「フリーランス」や、一人で会社を起こし、業務を行う「社長」などが自営業者に含まれます。
事業規模は、個人でできる範囲の事業を行う人もいれば、家族の協力や、外部から人を雇って事業を大きく拡大させる人もいます。
注意したいのは、雇用される側ではない社長や、場合によっては役員も自営業者のくくりに入る点です。
一般的に社長は高収入ですし、フリーランスでも大きな年収を得ている人はいます。
年収が大きければ住宅ローン融資では有利だと思われがちなのですが、そうとは限りません。
自営業者属性の人は、年収が景気や経営状況に大きく左右されがちです。
そのため、「確定申告書」「所得税納税証明書」「(法人)決算書」などの書類の提出が数年分必要です。
金融機関はそういった書類によって、年収・経営の安定を確認していくのです。
金融機関によって、経営が安定してないと判断されると審査の目は厳しくなります。
なお役員も、経営者的立場の役員であれば、自営業者のくくりに入るかもしれません。
ご自身の立場がグレーだと感じたら、どう取り扱われるのか申込金融機関に確認しておくといいでしょう。
医者属性と審査
医者も社長と同じく、一般的に高収入とされています。
しかし医者については、属性が少し複雑です。
というのも、医者には大きく「勤務医」と「開業医」に分けられます。
個別に見ていきましょう。
勤務医について
勤務医であれば、会社員属性に近いといっていいでしょう。勤務している病院の規模や環境にもよるでしょうが、勤務医であれば金融機関の評価は高いと推測します。
しかし注意点もあります。
組織に属する以上、別の病院への転勤することも考えられます。
勤続年数を「特定の病院への勤務」で数える金融機関もあるようです。
病院の意向による転勤だったとしても、住宅ローン審査場で勤続年数が最初に戻ってしまう可能性があります。
開業医について
開業医の場合、軌道に乗るまでは年収が低かったり、事業資金を借りていて多額の負債があることもあります。また、人を雇っていると人件費の向上や人手不足など、収入以外のリスクも生じます。
医院経営が安定すれば高収入を継続的に得られるでしょうが、状況によっては審査が厳しくなるかもしれません。

自分がどんな人にお金を貸したいのか、と考えると答えが見えてくるのではないでしょうか?


まとめ 属性を知り、住宅ローン審査に臨もう
明示されているわけではありませんが、属性は年収や年齢とともに重要な審査要素です。
自身の属性の強み、もしくは弱みを知っておくといいでしょう。
得に自営業者の人は、慎重に審査を進めていきたいです。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所