基礎知識

40年の住宅ローンを組む場合のメリット・デメリット

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

住宅ローンの返済期間は「最長35年」との設定が一般的です。

しかし中には35年超の住宅ローンも存在します。住宅ローンは借金ですので、「一日でも早く返したい」と考える人も多く、そういった人にとっては40年、場合によってはそれ以上の期間の住宅ローンを組むことが理解しにくいかもしれません。

あえて長い住宅ローンを選ぶメリットは何なのでしょう?注意点もあわせてご紹介します。

借入期間35年以上の住宅ローンがある金融機関

実際に金融機関で取り扱っている35年以上の住宅ローンはどんなものなのでしょう。いくつかご紹介します。

第三銀行「住宅ローン(スタンダード型)

借入金額 100万円以上1億円以内(10万円単位)
借入期間 3年以上40年以内(1年単位)

※中古の場合は35年以内

主な利用条件 安定した年収が200万円以上

会社員の場合勤続年数が1年以上

金利タイプ 固定金利選択型(3年・5年・10年型)

変動金利型

保証料 あり
事務手数料 保証料全額一括払の場合:54,000円(消費税込)

保証料分割払の場合:75,600円(消費税込)

繰上返済手数料 あり(一部無料のケースもあり)

参照:第三銀行|住宅ローン

関西みらい銀行「50年返済型住宅ローン」

借入金額 50万円以上5,000万円以内(10万円単位)

※ただし、購入物件価格の90%以内

借入期間 36年以上50年以内(1年単位)
主な利用条件 前年の税込年収が100万円以上

原則1年以上継続して同一勤務先に勤務されている給与所得者

取扱店の営業区域内に居住または勤務

金利タイプ 固定金利選択型(3年・5年・7年・10年)

変動金利

保証料 あり
事務手数料 54,000円(消費税等込み)
繰上返済手数料 一部繰上返済は無料

全額繰上返済は有料(一部無料のケースもあり)

参照 関西みらい銀行|50年返済型住宅ローン

東海ろうきん

借入金額 1億円以内
借入期間 40年以内
主な利用条件 対応地域に居住、または勤務している

前年の年収が150慢円以上で、今後も安定した収入が見込まれる

金利タイプ 全期間固定金利

固定金利選択型(3年・5年・10年型)

変動金利

保証料 無料
事務手数料 21,600円(組合員でない場合は43,200円)
繰上返済手数料 無料

参照 東海ろうきん|住宅ローン

ここで挙げた3つは、住宅ローンの借入期間が「35年以上」である点は共通していますが、借入金額や保証料事務手数料などは異なります。

利用の際は、返済期間だけでなく、保証料や繰上返済手数料なども確認しましょう。

なお、3つ目に東海ろうきんをご紹介していますが、「中国ろうきん」や「北海道ろうきん」でも住宅ローンを「最長40年」としています。

ただし、同じろうきんでも詳細は異なるので注意してください。

40年の住宅ローン、そのメリットとデメリットは?

返済期間の長い住宅ローンにはメリット・デメリットの双方があります。

ここでは借入期間を「40年」と仮定したうえで、メリット・デメリットをご紹介します。

40年の住宅ローンメリット

40年の住宅ローンの一番のメリットは「毎月返済額を抑えることができる」点です。

返済期間にが長くなると毎月返済額はどのくらい変わってくるのか、「借入額3,000万円」のケースで見てみます。

【前提条件】

  • 借入額 3,000万円
  • 金利 1.5%(全期間固定)
毎月返済額 総返済額
返済期間30 10.4万円 3,728万円
返済期間35 9.2万円 3,858万円
返済期間40 8.4万円 3,992万円

返済期間が長くなるほど、毎月返済額は小さくなりますね。

返済額がギリギリの人にとっては数千円でも毎月の返済が減ればうれしいでしょう。

35年ローンだと、返済に余裕がない」といった場合には検討の余地があります。

また、住宅ローンの利用条件が緩い傾向にあるようです。

先ほど挙げた金融機関では、年収要件が100万円~200万円となっていました。

通常の年収要件は「300万円~」ですので、その差は大きいです。

条件が緩和される理由は、毎月返済額が小さくなるので、家計における返済リスクが減るからだと考えられます。

例えば、同じ年収のA世帯、B世帯が同じ額を借りたとします。

この場合、返済期間が長いと毎月返済額が小さくなり、日々の負担は軽減します。

一方で、40年の住宅ローンは完済年齢も高くなります。

「かえってリスクは高くなるのでは」といった見方もあるでしょう。ただ、リスクは申込者ごとに、総合的な審査をされることになります。

ここでは、住宅ローンの入口である利用条件のハードルが低い傾向にある点を知っておくといいでしょう。

40年の住宅ローンデメリット

40年の住宅ローンを組む一番のデメリットは、「取り扱い金融機関が少ない」ことでしょう。

取り扱いが少なければ、興味を持っていても利用できないかもしれません。

また、「今口座のある銀行で借りたい」「団体信用生命保険は手厚いものに加入したい」「金利タイプは全期間固定金利がいい」など希望が明確な人は要注意です。せっかく見つけても、希望条件と40年住宅ローンの要件が合わない可能性があります。

返済期間が長くなるため「返済期間が長くなる」「総返済額が多くなる」ことにも注意が必要です。

ただし、「返済期間が長くなる」のは40年住宅ローンの特徴ですので、そこをデメリットと感じる人は、そもそも利用しないと推測します。

また、返済期間が長くなれば総返済額が大きくなるのも当たり前のことです。

「総返済額の大きさ」と「返済期間の長さ」は、どちらを重要視するか、優先順位の問題であるといえます。

なお、返済期間が40年となっていても「完済年齢」の上限によっては40年の住宅ローンを組むことはできません。

完済年齢の上限は7580歳程度が一般的です。

40年の住宅ローンが向いているケースを解説

40年の住宅ローンをうまく活用できるのはどんなケースでしょうか、3つご紹介します。

ケース1 支出ピーク時以外は繰上返済が可能な世帯

40年の住宅ローンは毎月の負担を抑えることができます。

35年ローンでもおおむね返済できるが、教育費の負担が大きい時期には返済が苦しい、といったケースに向いています。

返済期間を35年から40年にすることで支出のピークに問題なく返済できる返済額に調整できるでしょう。

ピーク時以外は余裕ができるため繰上返済をしていけば、最終的な返済期間も短縮させることができます。

ケース2 若い世代

返済期間が長いので、比較的若い世代向けになります。

例えば25歳で40年の住宅ローンを組めば、そのまま返済していっても完済年齢は65歳です。

若い世代なら、繰上返済を考慮せずとも住宅ローンを返済することができます。

ケース3 リフォームの必要性が低い人

40年の住宅ローンだと、返済の途中でリフォームや建て替えが必要になるかもしれません。

住宅ローンが終わる前に大きな出費が生じることは避けたいため、耐久性の高い建物のほうが適しているでしょう。

同じ理由で、一定期間後に売却を考えている世帯も向いているかもしれません。

ただ、売却する場合は、売却価格が住宅ローン残高を下回ってしまうと差額を自己資金で補填しなければならないので注意が必要です。

全期間固定金利のフラット50は最長50

最後に、住宅金融支援機構のフラット50をご紹介します、フラット50は最長50年の全期間固定金利住宅ローンです。

対象が長期優良住宅であることや、フラット35の技術基準に適応することなどが求められますが、返済期間が50年間で、しかも全期間固定金利であるのは大きな魅力です。

さらにフラット50では、途中売却にも有利です。フラット50の返済中に物件を売却する場合、その物件を購入する人がフラット50の返済を引き継ぐことができる「金利引継特約」があります。

仮に30年返済が終わってる時点で売却するならば、新たに購入した人は残り20年、従前と同じ金利条件で返済を続けることになります。

現在の住宅ローンは低金利状態であるため、この金利水準を維持したまま売却できるのは大いに武器になるはずです。

長期の住宅ローンを検討している人で、購入物件が基準を満たすなら、フラット50を検討してみてはどうでしょう。

まとめ 40年の住宅ローンにはメリット・デメリットがある

40年の住宅ローンには返済の負担が減るメリットがありますが、取り扱いの少なさや総返済額が大きくなる注意点もあります。

特徴を知り、向き不向きを判断したて利用しましょう。

参考【住宅ローンの選び方】初心者でも迷わないための比較ポイントと必須知識を解説!

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