金利の知識

住宅ローンの適用金利は人によって違う

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

住宅ローンの金利は金融機関の店頭やホームページで確認することができます。

しかし、それらの数字がすべての人に適用されるわけではありません。

また、一見金利が低く感じても、返済期間全体で考えると、実はお得ではないケースもあります。

店頭金利や適用金利についてご紹介します。

適用金利は人によって違う

住宅ローン適用金利は人によって異なります。

各金融機関は独自の判断で基準金利(店頭金利)を決定していますが、その金利がそのまま貸出し金利になるわけではありません。

基準金利から貸出人の年齢や信用度、返済期間などを考慮したうえで案件ごとに金利が決まります。

案件によって金利が異なるのは、別途個人のリスクが上乗せされるからです。貸出し先が会社の例でいうと、業績良好で財務も健全な「優良企業」が相手ならば、リスク分の上乗せをせず基準金利そのままで貸出しをします。

住宅ローンでも同様です。

金融機関は住宅ローンを確実に返してくれる人に貸したいため、「この人は信用できる」と判断すれば、適用金利は低くなります。

反対に返済の信用度が低いとされる人については、返済不能リスクに備えて金利が高めになります。

こういった返済の信用を見極めるのが住宅ローン審査と考えるといいでしょう。

「基準金利=平均金利」と考えていたり、「基準金利=すべての人への適用金利」などと誤解したりしないよう注意してください。

住宅ローンの金利は、主に3種類

住宅ローンの種類によっても金利水準は違います。

「変動金利」「固定期間選択型」「全期間固定金利」の3つについて、金利の特徴をご紹介します。

変動金利型

貸手の金利上昇リスクがない分、他の2つよりも金利水準低いです。

金利は、短期プライムレートを基準として各金融機関が決定します。

通常金利の見直しは半年ごとに行われますが、返済額への反映は5年ごととなります。

固定金利期間選択型

変動金利の一種ですが、一定期間は金利を固定できる「特約」が付帯可能です。

特約の期間や種類は金融機関によって異なります。原則として固定金利期間が長いほど金利水準は高めです。

ただし、金融機関によっては人気の期間の金利を特に低く設定していることもあります。

全期間固定型金利

10年もの国債の金利を基準として各金融機関が金利を決定します。

当初の金利が完済まで変わりません。

金利リスクを貸手が受け持つため金利水準は他の2つよりも高いです。

店頭表示の読み方も重要!

金融機関なホームページを見ると、金利に「店頭金利より▲2%」「最大引き下げ率2.05%」……などのような注釈が記載されています。

これらの表記を解説します。

基準金利・店頭金利

基準金利と店頭金利は同意語で、金融機関ごとの「基準の金利」です。

どちらの表記を使用するかも金融機関ごとに異なりますが、ここでは「基準金利」で統一します。

なお、基準年利・店頭年利といった表記の場合もありますが、通常金利は年利ですので意味は同じになります。

「店頭金利より▲〇%」「引き下げ率〇%」

「基準金利より▲2%」とあるときは、住宅ローン金利を基準金利よりも2%引き下げる、との意味になります。

『▲』はマイナスのことです。

「引き下げ率2%」「割引率2%」などといった表記もありますが、内容は変わりません。

複数の表記がありますが、表示されている数字が「最大のマイナス幅」となるのは共通です。

審査によって引き下げ率が異なりますので、注意が必要です。

優遇金利

基準金利から引き下げや割引を受けた後の金利のことです。

適用金利

実際に住宅ローン契約者に適用される金利のことです。

適用金利は最大引き下げ幅を下限とし、住宅ローン案件ごとに異なります。

住宅ローン金利は優遇のタイプにも注意

金利の種類は3種類に分けられますが、優遇金利ではさらに「当初タイプ」と「全期間タイプ」があります。それぞれの特徴は次の通りです。

当初タイプ

当初数年は金利引き下げ幅が大きいですが、所定の期間経過後の引き下げ幅は小さくなります。

当初タイプは固定金利期間選択型に多く見られます。

例えば「2年固定」において「当初2年」、「3年固定」において「当初3年」の引き下げ幅を大きくするような商品です。

全期間タイプ

借入期間中、同じ金利引き下げ幅となります。

変動金利では、所定の期間の引き下げ幅を特に大きくする当初タイプと、全期間同率の金利引き下げを受けられる全期間タイプがあります。

どちらかのみのタイプを取り扱っている場合もありますし、双方のタイプから選択できる金融機関もあります。

また、固定金利選択型の期間や変動金利かどうかで、引き下げ幅が異なるケースもあるので、情報をよく読み込むことが重要です。

なお、フラット35も金利優遇があることをご存知でしょうか。

実はフラット35では、一定の住宅基準を満たせば5年、もしくは10年間の金利優遇が受けられるのです。

フラット35における金利優遇の種類はいくつかありますが、新築であれば「フラット35S」が最も優遇を受けやすいでしょう。

フラット35Sの金利優遇は「引き下げ幅0.25%」。

優遇される期間はプランAが10年間、プランBが5年間です。

0.25%の金利優遇が10年間受けられれば、返済額に大きく影響しますので、全期間固定金利を検討している場合はフラット35Sについても知っておくといいでしょう。

【フラット35S】

プラン

金利引き下げ期間

金利引き下げ幅

0.25

金利プランA

当初10年間

金利プランB

当初5年間

(出典 住宅金融支援機構「フラット35S」

住宅ローン選びのステップ

住宅ローンで金利を重視する場合、まずは金利の種類を決め、そののちに優遇金利のタイプで最終選択をしていくことをおすすめします。

【住宅ローン選びのステップ】

1.金利種類の選択

「変動金利」「固定金利期間選択型」「全期間固定金利」

2.優遇タイプの選択

「当初タイプ」「全期間タイプ」

「多少の金利が上昇しても変動金利のほうがお得だと思うので、変動金利がいい」「勤務先の状況によってはお給料が減るかもしれないから、全期間固金利で返済額を固定させたい」などの需要に沿って、まずは金利種類を決めます。

金利タイプを決めておくことで、住宅ローン選びが正しい方向で進めるはずです。

いわば最初の金利選択は最初の指針となります。

そこがあいまいなまま住宅ローン選びをしてしまうと、住宅ローン選びが迷走しがちです。

適用金利が低くなる人の特徴は?

適用金利が低くなる人は、返済の信用力が高い人や、物件の価値が高い場合です。金融機関ごとに異なりますが、概ね次のようなケースです。

  • 大きな企業や公務員などに勤めていて、安定した給料が見込める
  • 年収が高く、勤続年数も長い
  • 物件の担保価値が高く、万が一返済が滞った場合にも資金回収が容易と判断される

逆に信用力が欠けると判断されてしまうのは、消費者金融からの借り入れがあったり、(消費者金融でなくとも)他のローンがあったりするような場合とされます。

好材料を新たにそろえるのは難しいでしょうから、悪材料をなくすことで適用金利を低くできるよう心がけましょう。

金利の決まり方を知り、ニーズに合った住宅ローンを選ぼう

住宅ローンの適用金利が人によって違うことをご紹介しました。

また、金利の表示は様々ですので、正確に知らないまま住宅ローン選びをしている人も少なくありません。

しかし、適用金利や優遇金利などを誤って認識したまま住宅ローンを選んでしまうと、希望に沿わない住宅ローンを契約してしまう可能性があります。

住宅ローンの適用金利は人によって異なる点、そして住宅ローンの金利表示についても正しく理解しておきましょう。

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