住宅ローンジャーナル

土地を購入して家を建てたい!資金の流れは?

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

せっかくマイホームを購入するなら、好きな土地に自由な間取りで建てることができる注文住宅がいい!という人も多いと思います。

建築様式や素材・間取りなど、こだわりの家を建てたい人にとっては魅力的な注文住宅ですが、資金面での不安も多いのではないでしょうか?

土地取得時における住宅ローン利用の可否や、決済のタイミングなどをご紹介します。

注文住宅の相場を知ろう

注文住宅は設計の自由度が高く、好みを反映させたり趣向をこらしたりして家を建てることが可能です。しかし、建売住宅に比べてやや価格帯が高い傾向があります。住宅の種類による価格の違いは次のようになります。

【住宅種類ごとの住宅取得平均額

  • 建売住宅 3337.8万円
  • 土地付注文住宅 3954.7万円(うち土地取得費は1291.4万円)

「2016年度 フラット35利用者調査」より

住宅金融支援機能のフラット35利用者調査によると、同じ一戸建てでも、建売住宅と土地付注文住宅では取得平均額が約616.9万円違うことがわかります。さらに、土地付注文住宅の場合住宅価格については、土地の取得費平均が1291.4万円となっていることにも注目したいです。

資金の流れの詳細は後述しますが、土地は家を建てる前に取得しておかなければなりません。土地の取得費平均が1291.4万円と総額の約3割を占めることを頭に入れておくといいでしょう。

注文住宅の相場が高いわけは?

注文住宅と建売住宅の差は約616.9万円ですが、どうして注文住宅のほうが高い価格帯となるのでしょう。分譲住宅は程度の数をまとめて建てるので、材料調達のコストダウン、工程や人件費の効率化を計ることが可能です。しかし、注文住宅の場合は一棟ごとの建設なので割高になりがちです。さらに施主ごとの好みやこだわりを反映した建築様式・間取りにすることも多く、どうしても価格帯が高くなりがちです。

なお、家の価格というと通常は坪単価をベースとした建築費用を指すことが多いですが、注文住宅の費用は大きく分けて「本体工事費用・別途工事費用」の2になります。本体工事費用は先に挙げた建築費用と同義で、別途工事費用は建物以外にかかるもので、家の照明・空調工事・ガス管やや水道管の引き込み工事、駐車場や庭の外構など、家回りと周辺の環境を整えるための様々な費用です。

注文住宅の特徴

注文住宅では購入の過程が複雑で、スケジュールが過密になるのも大きな特徴です。土地探し・購入の後は、予算に合わせて注文住宅の設計も考えなければなりません。その手間こそが楽しいところではあるのですが、入居を急ぐ場合や、忙しい人には障害になるため注意したいです。

注文住宅の一般的な流れ

建売住宅や分譲マンションは、家の引渡し時に代金を支払います。一般的な住宅購入ではローンを利用するため、代金支払いと住宅ローン契約は同時です。一方、注文住宅は土地を先に取得します。土地取得費の平均は既述の通り『1291.4万円』で、この水準の金額を住宅ローン借入れ前に用意しなければなりません。しかし実は、土地代金以外にも支払うことになる費用があります。注文住宅におけるお金の流れを見てみましょう。

【注文住宅(土地先行取得)の大まかなスケジュール】

⒈土地の売買契約
主な必要資金:土地の手付金

⒉土地の決済・引渡し
主な必要資金:土地代金

⒊建物建設
主な必要資金:建設設計料・工事着手金・建物中間金など。設計料金やデザイン料の支払い割合は請負会社による

⒋中間金
建設費用の中間金で、工期中に通常1.2回発生

⒌建物竣工・決済・引渡し
主な必要資金:設計料や建設費などの残金を清算

建売住宅やマンションの場合、引渡前に必要なのは手付金程度で済みますが、注文住宅の場合は土地や工事着手金など、事前に複数の支払いが発生します。

注文住宅における「お金」の特徴

住宅ローンは住宅及び土地を担保に融資を受けるため、原則として建物竣工前に組むことはできません。しかし土地を先行取得して注文住宅を建設する場合は、竣工前に多くの支払いが必要になります。それらは本来ならば自己資金で賄うのが理想です。

自己資金が足りない場合はどうすればいいのか

事前の支払いを自己資金で行うのが理想ですが、そうはいかないことも多いです。自己資金が足りない場合は、「つなぎ融資」や「分割融資」によって借入をすることができます。双方とも、住宅の竣工前に融資を受けられる点は同じですが、内容に若干の差異があります。

注文住宅における分割融資とは

分割融資は、住宅ローン契約の一部として先行して住宅ローン融資を受けるものです。住宅ローンの一部とされるため、低水準である住宅ローン金利の適用が可能となります。先行融資額は、住宅ローンの融資時に精算・一本化が可能です。住宅ローンの借入れを複数回に分けて行う構図になるため「分割融資」と呼ばれます。

分割融資イメージ図

分割融資のメリット・デメリット

住宅ローン契約の締結前は金利のみの支払いで済むほか、低水準の住宅ローン金利が適用されます。しかし、融資時の抵当権設定費用が高めになるので注意が必要です。
住宅を建てる際は登録免許税の軽減税率を受けることができます。しかし、分割融資時の登記では、住宅を建てる前に土地の抵当権設定登記をすることになるため、本特例を受けることができません。登記費用は自己資金からの支出ですので、現金を確保しておかなければなりません。また、分割融資は取り扱いがない金融機関もあるため、事前に確認が必要です。

注文住宅におけるつなぎ融資とは

住宅ローン融資を受けられるまで「つなぎ」として融資を受けます。つなぎ融資は事前融資のことで、分割融資と異なり別のローンを組むことになるので、つなぎ融資の手数料が別途必要です。

つなぎ融資のメリット・デメリット

2本立ての借入となるのでローン手数料は2つ分です。また、借入金利も住宅ローン金利よりも高いことが多いです。住宅ローンの借入金つなぎ融資の借入金を組みこむことができるので、高めの金利が適用されるのはそう長い期間ではありませんが、自己資金が豊富であれば借入額を抑えたほうがいいでしょう。

金利は高めかもしれませんが、宅ローンで利用する金融機関以外での借入れが可能なのは大きなメリットです。住宅ローンとは別の借入なので、住ノンバンクでの借入れもできますし、基本的には担保が不要なので抵当権の設定も要りません。住宅ローンで利用したい金融機関が決まっているが、該当金融機関で分割融資の取り扱いがない場合にはありがたいですね。

分割・つなぎ融資の注意点

分割融資やつなぎ融資は預貯金がない、あっても温存したいときには心強い存在です。しかしどのような借入になるのかは事前にしっかり確認しておきましょう。融資利用の条件や借入回数・金額制限など使い勝手だけでなく、抵当権や諸経費の有無など、総合的な費用も把握しなければなりません。

自己資金をどの程度あればいい?

事前の融資の使い勝手が悪い、手数料も高いなどの理由から、自己資金を支出しすぎてしまう人もいます。
しかし自己資金はある程度残しておかないと、後の住宅ローン手数料や引越し・家具購入費などが不足する恐れもあります。また、入院や失業といった不測の事態のためにも、半年~1年分の生活費は確保しておきましょう。

それでも注文住宅の魅力は高い

建売住宅と比較して価格帯は高くなりがちで、自己資金や資金繰りに注意が必要なのが注文住宅です。ですが、好みに合わせて家を建てることができるのは大きな魅力です。

建築の過程を最初からチェックできるため、住宅に対する安心感も大きいですし、家造りそのものを楽しめるのもメリットですね。

自己資金が不足している人も、事前の融資を活用すれば注文住宅が建てることができるかもしれません。思い切って注文住宅の購入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考住宅ローンを複数申し込み メリットと注意点を解説

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