(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローン金利が下がったため住宅ローンを見直し、借換えをする人が増加しました。
住宅ローンの残高が大きければ、借換えで何十万円も返済額が減ることもありえます。
返済額が減るだけでなく、見直しによって返済が安定するケースもあります。
見直しの意義や、どのようなとき行うといいのか解説します。
住宅ローンの見直しとは?
住宅ローンの見直しとは、一般的に金利がより有利な金融機関への借換えを指します。
しかしここでは、幅広く住宅ローンを考えるために、同一金融機関で金利交渉をすることも広義の借換えと捉えてていきます。
借換えのメリットは何といっても返済負担の軽減です。
低い金利で返済できれば、総返済額を抑えることができますが、1~2%金利が低くなると、総返済額はどの程度変わってくるのでしょうか。
3,000万円を金利3%で借入れして、10年後に借換えるというケースで検証してみたいと思います。
【前提条件:当初借入時】
- 借入額 3,000万円
- 金利 3%(全期間固定金利)
- 10年後の住宅ローン残高 24,346,689円
(※借換時の借入額は2,430万円とする)
当初借入時の住宅ローン |
|||
年間返済額(毎月返済額) |
10年間の総返済額 |
35年間の総返済額 |
|
金額 |
138.5万円(11.54万円) |
1,385万円 |
4,849万円 |
【前提条件:借換え】
- 借入額 2,430万円
- 返済期間 25年
- 金利 2%、もしくは1%
※当初借入時・借換時、どちらも「全期間固定金利」「ボーナス返済なし」とする
【金利2%の場合】
年間返済額(毎月返済額) |
総返済額 |
|
金額 |
123.6万円(10.3万円) |
3,090万円 |
【金利1%の場合】
年間返済額(毎月返済額) |
総返済額 |
|
金額 |
110.4万円(9.2万円) |
2,748万円 |
※シミュレーションは簡易的なものです
【総返済額を比較したもの】
金利 |
3% |
2% |
1% |
総返済額 |
4,849万円 |
<3,090万円 |
2,748万円 |
借換えせずにそのまま返済を続けていた場合と、2%ないしは1%の住宅ローンに借り換えた場合の総返済額には大きな差があります。
毎月返済額で考えると、金利3%から1%への借換えで毎月2.34万円の削減になります。2万円以上安くなれば、月のやりくりがぐっと楽になるでしょう。
なお、負担軽減分は、生活費や教育費など、支出にまわしてしまうケースが多いです。
日々の生活が苦しいから見直しを検討するのでしょうから、生活費にまわってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。
しかし一定額でも貯蓄しておくと不測の出費に備えることもでき、より家計の安定感が増すでしょう。
住宅ローン見直しのポイント
前述のシミュレーションは、借換えにかかる事務手数料や諸経費を考慮していません。
他の金融機関で、借換える場合、新たに借り換え先の事務手数料や保証料がかかります。
抵当権者(借入れ先金融機関)も変わるので新たに抵当権の設定登記も行わなければなりません。
当然、登記手数料が発生しますね。諸経費分も含めてメリットがあるのか考えるのが見直しのポイントです。
諸経費も節約したいなら、同一金融機関での金利見直しの交渉をするのもいいでしょう。
交渉によって金利が引き下げられれば、借換えの手間も借換え諸経費もなしに返済負担が軽減します。
交渉できるかどうかは金融機関によりけりですが、トライする価値はあるはずです。
住宅ローンは定期的に見直ししよう
実は借換えの有無にかかわらず、定期的に現在の住宅ローンが最適かどうか、確認するのが理想です。
いわば定期的に住宅ローンのメンテナンスを行うのです。
定期的に見直ししてほしい理由は、住宅ローンの返済期間は長期間にわたるからです。
購入時に住宅ローンの返済プランを立てたとしても、途中で家計状況が変化することが考えられます。たとえ借換えをしない場合も、見直しすることで返済プランも確認することができます。
なお、住宅ローンの見直しは専門家に頼むことが必須ではありません。
まずは、ご自身でこのまま返済を続けるとどうなるのかを考えてみてください。
返済に大きな不安があり、解決の方法が見つからない場合は、金融機関や専門家に相談するといいでしょう。
直しの必要性が高いとされるのは、次のようなケースです。
- 住宅ローンを前倒しで返済したい
- 近々転職・企業などで世帯収入が変わる可能性がある
- 子供の教育費の負担が大きい
- 建て替えで新たな借入れを検討している
- 退職後も返済が続くが、老後資金が十分ではない
なお転職については、たとえ収入が上がるとしても見直ししておくと安心です。
それは、転職後数年は勤続年数が短いため住宅ローンの借換えができなくなるからです。
転職前の借換えできるうちに借換えしたほうがいいのか検討するといいでしょう。
住宅ローンを見直しするならば、早いほうが良い
見直しの必要性が高いなら、早く動きましょう。通常、住宅ローンの見直しは家計を楽にするため、もしくは返済の不安が大きいときに行います。
返済への不安があるときは、不安が現実になる前に見直しをして返済を楽にしなければなりません。
万が一不安が現実になり、返済が滞ってしまっては借換え自体ができなくなると考えてください。
というのも、借換えは審査があるからです。延滞してしまうと借換えの審査が通らなくなるでしょう。ただでさえ借換え先の検討・申込には一定の時間がかかるので、不安があるなら早めに動くのが鉄則です。
目的をもって住宅ローンの借換えをしよう
返済額に着目してきましたが、借換えによって、よりお得な住宅ローンで返済できるかもしれません。
実は近年住宅ローンの商品性が多様化しています。例えば次のようなものがあります。
- 団体信用生命保険(団信)
無料で付帯できる手厚い団信が登場しています。無料で付帯されている団信は支払い要件が厳しいケースもありますが、返済額を抑えたい人にとっては魅力的です。
- 特典の付加
住宅ローンの契約者には金融機関独自の特典がある場合が。
グループ会社での買い物で割り引きが受けられる、ATMの利用手数料や振込み手数料が毎月数回無料になる、銀行独自のポイントサービスにおいて、会員ランクやポイント獲得倍率が上がるなどです。
借団信が充実していれば、生命保険や医療保険を見直して保険料の削減ができるかもしれません。
また、独自の特典やサービスも、その銀行やグループ会社を頻繁に利用するユーザーにとってはメリットが大きいのではないでしょうか。
返済額が軽減しない見直しもある
実行する人は少ないですが、返済額が軽減しない見直しもあります。
代表的なのが変動金利から固定金利へ借換えするケースで、この場合金利が変わらないこともありえます。
諸経費を含めたら総返済額は借換え前よりも増えるかもしれません。それでも今後教育費が増える世帯にとっては金利が上昇しない住宅ローンへの借換えは意義のあることでしょう。
「直近の返済の負担感を減らす」、「商品性や特典を含めてお得な住宅ローンがいい」「返済リスクを抑えたい」などなど、目的によって借換えの方向性は変わってきます。自分にとって必要な借換えをしてきましょう。
住宅ローン、見直し以外の手段も視野に入れて
住宅ローンの見直しによって返済負担が軽減したり、よりメリットの大きい住宅ローンに仮換えができたりする可能性があります。
しかし、借換えの際は審査もあるので借換えができないことも。また残念ながら、審査の結果想定以上の金利が適用されることも考えられます。
毎月の返済負担を減らすことが主な目的ならば、借換えだけでなく繰上返済も有効です。
資金を貯めるのが難しいときは少額をこまめに繰り上げ返済井する方法もあります。
従来繰り上げ返済は手数料がかかるのが通常でしたが最近は手数料無料で、しかも最低繰上返済額が低額化してきています。
このように借換え以外の方法も検討しながら見直ししてみてください。
まとめ 総合的な視野で住宅ローンを見直そう
借換えの際は、「返済額重視」「返済の安定性重視」など目的をはっきりさせて行いましょう。
また、見直し以外にも「金融機関への交渉」「住宅ローン借換え」「繰上返済」などの選択肢があります。
自分にとって最善の方法で住宅ローンを返済していきたいですね。

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所