(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンを組んでマイホームを購入したら、住宅ローン控除の適用を受ける人も多いでしょう。
住宅ローン控除を受けるためには、住宅購入の翌年に確定申告をします。
確定申告の際に必要な書類の一つが借入先金融機関から発行される「残高証明書」です。
通常は年末や年初に、はがきで自宅に郵送されてくるため、うっかりしていると見落としてしまうかもしれません。
残高証明書の詳しい到着時期や、万が一紛失してしまった場合の手続きについて確認しましょう。
住宅ローン控除と残高証明
住宅ローン控除とは、住宅ローン残高の1%を上限に所得税の還付が受けられる制度です。
例えばその年の年末の住宅ローン残高が5,000万円ならば、1%の50万円が最大の還付額(※)です。
還付がある点については広く知られているようですが、そのための手続きである「確定申告」や、必要書類である「残高証明書」についてはご存じない人も多いでしょう。
会社員が住宅ローン控除を行うケースで、概要を紹介します。
※納税している所得税額以上の還付は受けられません。また、控除しきれない金額は住民税も一部還付を受けることが可能です。
確定申告とは
所得税は1年間の所得に対して所定の税率が課すことで税額を決定します。
そのため、前年の確定申告を翌年2~3月頃行います。
本来所得税の納税は、納税者が自ら確定申告を行いますが、会社員の場合は会社が代行します。
会社が給与所得から所得税を計算し、納税者(会社員)に代わって納税するのです。
会社員が家を購入した場合、別に確定申告を行います。そうすることで、会社を通じて納付した所得税の還付を受けることができるのです。
この仕組みを「住宅ローン控除」と呼びます。
住宅ローン控除は「年末の住宅ローン残高の1%」ですので、年末の住宅ローン残高を明らかにしなければなりません。
年末の住宅ローン残高を証明するのが借入先金融機関の発行する「残高証明書」です。その他にも次のような書類が必要です。
【確定申告(新築住宅の場合)】
- 確定申告書(A)
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 本人確認書類
- 建物・土地の登記事項証明書
- 建物・土地の不動産売買契約書、もしくは請負契約書(コピー)
- 源泉徴収票
- 住宅ローンの残高を証明する「残高証明書」
- (認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合)認定通知書の写し
適切に確定申告を行うと、約1ヶ月後に還付がうけられます。通常は指定した金融機関の口座に還付金が振り込まれます。
なお、ここでは住宅購入時における住宅ローン控除について紹介していますが、省エネ改修やバリアフリー改修など、特定のリフォーム等を行った場合でも住宅ローン控除が受けられることがあります。
2年以降は年末調整で住宅ローン控除が可能
会社員の場合2年目以降は確定申告が不要で、次に挙げる書類を会社の年末調整の際に提出すれば足ります。
- 年末調整のための住宅借入金等控除証明書
確定申告後、10月下旬頃に税務署から送られてくる
- 残高証明書
借入先金融機関から送られてくる
なお、税務署から送られてくる「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」については、今後の控除期間分がまとめて送られてきます。
翌年以降も継続して使用しますので、紛失しないようにしましょう。
残高証明書の到着時期や、紛失時の手続き
残高証明書の到着時期や、紛失時の手続きについて詳しく見てみます。
残高証明書はいつ届くのか
残高証明書は金融機関が作成し発送します。
金融機関によって差がありますが、おおむね「10月中旬頃」もしくは「翌年の1月中旬」の発想に大別されます。
【残高証明書到着時期の例(初年度)】
ケース1 住宅ローンの借り入れ時期に関わらず、一律で発送
- 一律で「翌年1月中旬頃」に発送
ケース2 借り入れ時期によって時期に差があるケース
- 8月頃までに住宅ローンを借り入れた場合は「10月中旬頃」に発送
- 9月以降に住宅ローンを借り入れた場合は「翌年1月中旬頃」
また初年度と2年目以降で到着時期が変わる金融機関もあります。
例えば9月以降に借り入れをした場合、初年度は「翌年1月中旬頃」になりますが、2年目以降は「10月中旬頃に発送される」といったケースです。
10月中旬頃に発送される場合は、年末にかけて繰上返済や金利変更を行うと、金額に誤差が生じてきます。
そういった場合の取り扱いは、繰上返済や編変更をする前に借入先金融機関に相談しましょう。
さらに、上記は新規借り入れの場合であり、借り換えのときはまた取り扱いが変わってきます。
上記以外にも様々なケースがありますので、借り入れの際に金融機関へ確認しておくのが確実です。
また、2年目以降の場合は会社に残高証明書を提出することになります。
2年目以降は会社に対して年末調整の時期や残高証明書の提出期限を確認しておきます。
ペアローンの場合は残高証明書も2通届く
夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む、いわゆる「ペアローン」の場合、住宅ローン控除もそれぞれ申告します。
そのため残高証明書も2通届きますので、取り違えることがないようにします。
なお、フラット35で収入合算を行うと「連帯債務」となります。
連帯債務は負担割合に応じて夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けることができますが、残高証明書は1通となります。
この場合住宅ローン控除申告書に記入する年末残高の金額を負担割合に応じて案分します。
残高証明書を紛失したら
「残高証明書が届いた記憶がない」「届いたが、その後見当たらない」といった場合には再発行を依頼します。
インターネット上で依頼できる場合もあれば、電話や店舗で直接依頼しなければならない金融機関もあります。
電話等で依頼する場合、確定申告間際になると問い合わせが増えて対応に時間がかかる可能性があるので注意します。
なお、住宅ローン借り入れ時後には「償還予定表」「返済予定表」などの名称で、毎月の返済日や返済金額(元本・利息の内訳)、借入金の残高が記載されている書類が送られてきます。
住宅ローンの内容を借主に伝える書類であり、確定申告で必要な「残高証明書」とは異なります。
償還予定表や返済予定表は自身の住宅ローン内容を確認する書類と考えればいいでしょう。
住宅ローン控除以外を利用しない場合も残高証明書は取っておこう
住宅ローン控除を受けないので残高証明書は不要、といった人もいるかもしれません。
もしも住宅ローン控除を受けないときでも、住宅購入の記録として保管しておくことをおすすめします。
残高証明書には下記のように、住宅取得時の情報が複数掲載されているからです。
一般的な残高証明書の記載内容
- 借り入れ者の住所・氏名
- 借入金の内訳(住宅のみ・住宅及び土地等)
- 住宅借入金の年末残高
- 住宅借入金の当初残高
- 償還期間
- 住宅取得対価等の額
マイホームは保有していれば固定資産税・都市計画税がかかります。
状況が変わって売却すれば、譲渡税の発生する可能性がありますし、将来相続が発生すれば相続税の対象です。
課取得金額や借入金について確認できる残高証明書は保管しておいて損はないはずです。
なお、借り換え時に残高証明書は必要なのでしょうか。
借入時には「残高」を明確にする必要がありますが、直近1年程度の「住宅ローンの返済(償還)予定表」のコピーがあれば足ることが多いです。
しかし念のため、残高証明書も用意しておいたほうがいいでしょう。
残高証明書の紛失に注意しよう
残高証明書は住宅ローン控除を受けるならばなくてはならないものです。
しかし、はがきでシンプルに郵送されるため、他の郵便物に紛れて捨ててしまったり、どこに置いたか忘れてしまったりする可能性もあります。
再発行は可能ですので紛失しても慌てることはありませんが、再発行の手間を考えると、届く時期には郵便物を気にして、確実に受け取りたいものです。
参考【住宅ローンの選び方】初心者でも迷わないための比較ポイントと必須知識を解説!

ライフプラン応援事務所代表
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信にも力を入れている。»ライフプラン応援事務所