基礎知識

住宅ローンをダブルで組むときはどんなローンがいい?注意点も知ろう

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

人生100年時代の今、「マイホームは一生に一戸だけ」とは限りません。すでにマイホームがあっても、ライフスタイルの変化に合わせて「住み替え」「セカンドハウスの購入」などを考える人もいるでしょう。

とはいえ、現在住んでいるマイホームの住宅ローンがまだ残っている場合は、資金繰りが難しくなります。

住宅ローンに加えて住み替えやセカンドハウスのローンを組むさいの注意点や選択肢をご紹介します。

ダブルローンとは

住宅ローン(住宅ローンに類するローンを含む)が2本になることをダブルローンといいます。

住宅ローン返済中に、セカンドハウスの購入や住み替えでローンが2本になるケースが一般的です。

また、マイホーム購入時のローンを返済中にリフォームをし、リフォームローンを組む場合も広義のダブルローンといっていいでしょう。

ここでは主にセカンドハウスの購入時と、買い先行の住み替えについてみていきます。

住み換えの場合、従前のマイホームを先に売却する「売り先行」と、新しい住居を購入した後に従前のマイホームを売却する「買い先行」があり、ダブルローンになるのは後者のケースです。

ダブルローンを検討する場合に気を付けること

ダブルローンは、すでに住宅ローンを返済しているなかで新たにローンを組むため、審査が厳しくなります。

具体的には次のような特徴があります。

返済負担率が厳しくなる

返済負担率とは、年収に占める返済額の割合です。

例えば、年収500万円の人が年間150万円の住宅ローンを支払っていれば、返済負担率は30%150万円÷500万円)となります。

審査を通過するには、返済負担率が金融機関所定の割合以下でなくてはなりません。

返済負担率の割合は一般的に30%前後とされています。

また返済負担率の計算では、ほかの借入があればそれも加算します。

現在返済中の住宅ローンがあれば、それも加算してもなお金融機関所定の割合をクリアしなければならなりません。

先の「年収500万円で年間返済額150万円」の例では返済負担率が30%でした。

しかし、もう1本住宅ローンがあれば、30%超となってしまいます。

年収要件が高くなる

通常の住宅ローンでは、申込時の年収要件を「300万円」とする金融機関が多いです。

しかしローンが2本目の場合、年収要件を「500万円」に引き上げているケースが多いですので注意してください。

ダブルローンの落とし穴と注意点

ローン審査は年収面だけではありません。ローンを組む際は、団体信用生命保険の加入が義務付けられるのが一般的です。

今住んでいるマイホームを購入した時よりも年齢が上がっているので、健康面リスクは大きいはずです。

例え今は健康でも、数年以内に手術を受けていたり、一定規模の入院をしていたりすると加入できないことがあります。

健康面の不安がある人は金融機関に早めに相談しておきましょう。

まだ、新たなローンが組めたとしても、ローンがダブルになれば家計の負担も大きくなります。

「審査が通るかどうか」ではなく、審査が通った後に「返済していけるか」に留意して資金計画を立てましょう。

セカンドハウスのダブルローンはここに注意

税制や融資等においてマイホームは「主に生活の拠点となる場所」のことで、原則としてセカンドハウスを「マイホーム」ということはできません。

そのためセカンドハウス購入のために組むローンでは「住宅ローン」は用いないのが一般的です。

ただしその場合も「セカンドハウス専用ローン」が利用できます。

とはいえ、セカンドハウス用のローンは取り扱いが少ないうえに、金利や諸経費も高い傾向にあります。

借入当初にかかる諸経費や金利負担を十分に考慮します。

実は、住宅金融支援機構のフラット35はセカンドハウスでも申し込むことができます。

マイホームと変わらぬ金利で融資が受けられるため、検討してみるといいでしょう。

住み換えのダブルローンはここに注意

住み換えでダブルローンが問題になるのは「買い先行」の場合です。

買いを先行させる場合は最初に、今住んでいる家がどのくらいで売れるのかを査定し、売却価格を推測し住み替え先を決めます。

買い替え後に従前のマイホームを売却し、売却代金で住宅ローン完済を目指します。

買い先行のメリットは主に次の3点です。

  • 売却時期を気にしなくていいのでじっくりと新居を探すことができる
  • 新たな家に引っ越した後の売却なので、日々生活している家に内覧者が来ることがない
  • 引越し後にハウスクリーニングや修繕を行えば、想定よりも高い価格で売却できるかもしれない

ただし、売却に時間がかかることも考えられます。売却までの期間が延びることは、ローンをダブルで支払う期間も長くなるということです。

さらに、想定していたよりも売却価格が低くなる可能性もあるので、資金繰りに余裕を持っておく必要があります。

【買い先行のメリットとリスク】

メリット リスク
  • 時間的な余裕をもって新居を選ぶことができる
  • 内覧しやすい
  • メンテナンスで物件価値を上げる余地がある
  • 売却までの期間が読めない
  • 売却価格が未定の段階で家を買うことになる

住み替え専用のローンもある

売却に時間がかかってダブルローンの期間が長くなってしまうことを回避できる「住み替えローン」もあります。

住み替えローンなら、「従前の住宅ローンの返済」「新しい家の購入資金」「住み替えに関わる諸費用(登記費用等、不動産取引に係る費用)」などに対応可能です。

売却価格が従前の住宅ローン残高を下回ると、不足分を売主が補填しなければなりません。

売却価格で住宅ローンが完済できるのが理想ですが、必ずしもそうなるとは限りません。

従前の住宅ローン返済分も借入できる「住み替えローン」なら、資金繰りが安定しそうです。

自然災害でローンが2本になる「二重ローン」問題

セカンドハウスや住み換え以外にも、災害によって住宅ローンが2本になることがあります。

住宅ローン返済中に被災し、家が破損・倒壊するケースは少なくありません。

住宅ローン返済中のマイホームが破損・倒壊しても返済義務は残るため、従前の住宅ローンと新たな住宅ローン(リフォームローンも含む)を並行して返済していかなければならなくなるのです。

災害によって住宅ローンが2本になってしまうことを一般的に「二重ローン」といいます。

実はこの二重ローンは個々の家計にとって苦しいだけではありません。

災害は地域広域に被害をもたらすことが多いため、地域全体で二重ローンを抱える人が多くなり、地域経済の活力も低下してしまいます。

地域全体でマイナス影響が大きく、社会問題化しています。

自然災害による被災者の債務整理の概要

近年、自然災害が頻発しているため金融機関側も二重ローンへの救済措置を設けています。

一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関により、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が取りまとめられています。

このガイドラインは、ローン返済者自身が各自の借入先金融機関に対し、返済の免除や減額を相談するもので、次のような特徴があります。

  • 無料で弁護士など専門家の助言を受けられる
  • 金融機関に直接相談するので、個別的な対応が可能
  • 債務放棄をしても、一部の財産を残すことができる
  • 債務放棄しても信用情報は傷がつかないので、新たな借入が可能

注意したいのが、すべての災害ではなく「災害救助法」の適用を受けたもののみが対象となる点です。

また、手続きには手間もかかりますし、金融機関の判断によっては減免が認められないこともあります。

とはいえ、ローンの負担が少しでも減れば、その分生活は楽になるはずです。

万が一このような事態になった場合は、制度を前向きに活用していきたいです。

まとめ 2本目のローンは注意点を見極めて利用しよう

2本目のローンは、購入する住宅の種類によってローンの種類が変わってきます。

各ローンの特徴を知って利用しましょう。

また、家計の負担もよく考慮し、滞りなく返済していけるようにしていきましょう。

参考40年の住宅ローンを組む場合のメリット・デメリット

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