住宅ローンジャーナル

老後が不安な人へ!リバースモーゲージの条件や活用方法を知ろう

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

自宅を担保にして融資が受けられる「リバースモーゲージ」をご存じでしょうか。

毎月の返済は金利分のみなので、マイホーム所有者やマイホームの購入を検討中の人にとって気になる商品だと思います。

しかし借入である以上金利や借入要件がありますし、利用時の注意点も多いです。注目度のわりに内容が知られていないリバースモーゲージについて解説します。

リバースモーゲージが注目されるわけ

社会保障費が財政を圧迫するなか、政府は公的年金の受給年齢の更なる引き上げを検討しています。

退職後の不安が増すなか、老後の住み家としてマイホームを手に入れようと考える人は多いです。

しかし、せっかくマイホームを購入しても、住宅ローンの負担で肝心の老後資金が不足してしまうことも考えられます。

そんな人に注目されているのが、自宅を担保に融資を受けられるリバースモーゲージなのです。

リバースモーゲージのしくみ

「返済が利息分のみ」である点がクローズアップされがちなリバースモーゲージですが、最終的には金利を付けて返済するのが基本です。

くわえて、自宅の担保価値に見合った額しか借入れできません。

しかし、中には「自宅を担保提供すればいくらでも借りられる」「返済のことは考えなくてよい」など誤った認識の人もいます。

改めてリバースモーゲージのしくみを解説します。

【リバースモーゲージのしくみ】

  1. リバースモーゲージの申込・要件や借入額の審査
  2. 審査に通ると、自宅を担保に入れ、金融機関から融資を受ける
  3. 返済は利息分のみ
  4. 契約者死亡により契約終了
  5. 契約終了時、担保物件(自宅や土地)の売却により借入金を一括返済

※詳細は金融機関ごとに異なります

大まかなしくみは上記のようになります。「契約中は利息分のみ返済する」というのが大きな特徴ですね。

契約が終了(契約者の死亡)するまでは自宅に住み続けることができるので、自宅を売却することなくまとまった資金を得たい場合に有効です。

リバースモーゲージのメリット

前述のとおり、リバースモーゲージの最大のメリットは「契約中は利息分のみの返済」「自宅に住み続けることができる」の2点です。

死亡後は自宅売却によって借入金を返済することになるため、自分の死後、自宅をどうするかについて、具体的に考えられる人が向いています。

将来設計が固まってない若い人には不向きで、実際に、金融機関の多くが利用年齢を55歳~60歳以降としています。

リバースモーゲージはどう活用できる?

老後資金の不安を抱える人にとって、まとまった老後資金が借り入れできるリバースモーゲージは魅力的でしょう。

子供に自宅を遺すことはできませんが、話し合うことで互いに納得しながら話を進めることができます。

【リバースモーゲージの活用例】

  • 自宅を遺すよりも、生きているうちに結婚資金やマイホーム資金を援助したい
  • 住まいを売却することなく、自分たちの老後資金を得たい
  • 自宅のリフォーム・建て替えをしたいが、新たな住宅ローンは組みたくない
  • 退職金で住宅ローンが完済できず、このままではローンが返せそうにない

このようなときにリバースモーゲージで融資を受ければ、老後の不安が軽減し、セカンドライフの充実が図れます。

なお、夫婦で契約者が夫の場合、夫死亡時点で契約が終了してしまいます。

残された妻がいるときは、審査のうえ、妻が契約を引き継ぐこともできます。妻は自宅を売却しサービス付き高齢者向け住宅へ入居する、子供と同居する……など、複数の選択肢があります。

自宅を遺すことで生じるトラブルも?

自宅の売却が前提なので、自宅を子供に遺したい人は利用をためらうかもしれません。

しかし、子供に自宅を遺すことが最善とは限りません。例えば、子供が複数いる場合、自宅以外に財産があれば「家は兄が、現金は弟が」などとできますが、主な財産が自宅のみだと、公平に分けるのが難しいです。

土地にかかる相続時の特例が使用できないケースも

不動産を相続したら、相続税を算出するために不動産の評価額を出します。

実は、親が居住していた家屋にかかる土地については、評価額が8割減になる特例(小規模宅地の特例)があります。

しかしこの特例は、子供がすでにマイホームを所有していると受けることができません。ここでいう「所有」とは本人所有はもちろん配偶者が所有していることも含みます。

子供自身が自分(もしくは配偶者)のマイホームを持っているならば、親の家に住む可能性は低いでしょう。

しかし相続すれば相続税の減額特例は受けられないうえに、取得後の維持費は変わらずかかってきます。

もちろん、土地を引き継ぐのはお金以外の価値があるので、損得だけで判断できるものではありません。

しかし、金銭的な負担が大きいときは、あえて土地を残さない選択も視野に入れるべきではないでしょうか?土地を残さない場合には、リバースモーゲージは有力な選択肢になると考えられます。

土地をどうするのか話し合おう

リバースモーゲージのデメリットとして「子供に土地が遺せない」ことを挙げる人が多いですが、ケースバイケースで土地を残さないことがメリットになることもあるようです。

ただ、一番大切なのは本人や子供がどう考えるかです。

リバースモーゲージを検討する場合は、その前に家族間で話し合いを持つことが望ましいですね。

家族間で改めて相続の話をするのは難しいものです。「リバースモーゲージ気になる・どんなもの」くらいの、早い段階からリバースモーゲージという選択について家族と知識の共有をしておくといいでしょう。

参考相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

ここに注意!リバースモーゲージ

リバースモーゲージには利用時の注意点も多いです。自宅を抵当に入れてまで借入れするのですから、しっかり確認しておきます。

注意点1 利用できるとは限らない

実はリバースモーゲージは借入要件が厳しいです。

当然に借り入れできると考えていたら、いざ申し込んだとき融資が受けられなかった……。

そんなこともあり得ます。

融資の際は審査があり、契約者の収入や信用情報のほか、物件も調べられることに。

担保物件の売却による返済が前提となるので、担保価値が重視されます。

金融機関の多くが、融資額の上限を担保価値の50~60%と、低めにしているため、欲しい額を借りられるとは限りません。

注意点2 返済は計画も必要

基本的には、契約中の返済は利息のみです。しかし金融機関も業務ですので、融資額を回収できるかどうかはシビアに判断します。

例えば地価の下落などで担保価値が下がったと判断すれば繰り上げ返済を提案されるかもしれません。

繰り上げ返済は必ず行うものではありませんが、担保価値が下がったまま契約終了を迎えると、物件を売却してもなお債務が残ってしまうかもしれません。

金融機関ごとに契約は異なりますが、売却額が融資額を下回ったときは不足分の返済を迫られるのが一般的です。

「利息だけ返済していれば問題ない」とは考えず、契約が終了したときにきちんと返済できるよう気を配って利用しなければなりません。

注意点3 利息額に注意

契約中は元本の支払いがないので、返済の負担が軽いイメージがあるかと思います。

しかし、借入額が大きければ利息もそれなりの金額になります。リバースモーゲージの金利は2~3%程度と、住宅ローンと比較すると高めです。

仮に金利が3%だと、金利負担は以下のようになります。

  • 融資額 500万円:毎月支払利息額 12,500円
  • 融資額 1,800万円:毎月支払利息額 45,000円
    借入額が多くなると、支払利息の負担も大きくなるので注意が必要です。

上記のように、1,800万円の借入れで利息45,000円を10年間払い続けると、利息だけでも総額540万円、20年間だと1080万にも上ってしまいます。元本の返済を行い、利息の負担を減らしながら利用するほうがいいかもしれません。

リバースモーゲージを上手く活用するには

自宅を遺さないのであれば、リバースモーゲージは利用価値があります。

自宅を利用し、適切な額の融資を受けるなら、自身の老後を豊かにすることができるでしょう。

もちろん、家族が納得していることが前提ですね。

また、融資である以上、借入れの可否や融資額は審査によるので、想定通りにいくとは限りません。

借入額とそれに見合った返済プランを金融機関や家族とよく話し合い、賢く利用していきたいです。

参考住宅ローンを複数申し込み メリットと注意点を解説

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