住宅ローンジャーナル

4,000万円の住宅ローンは高望み?毎月の返済負担額や総返済額は

(構成・文=横山 晴美/ファイナンシャルプランナー)

マイホームを購入するときは、選ぶ楽しさや新居への期待感にあふれていることと思います。

しかし住宅ローンへの不安から、喜びよりも心配する気持ちのほうが大きい人も少なくないようです。

住宅ローン返済の不安を少しでも軽減するために、住宅ローン返済における毎月の負担や総返済額などを具体的にご紹介します。

ここでは4,000万円の住宅ローンを組むケースについて見ていきたいと思います。

4,000万円の住宅ローンが妥当な世帯とは?

よく、年収を基準にいくらの住宅ローンが組めるのかを判断しようとする人がいます。

しかし残念ながら、住宅ローンの返済では収入と支出のバランスが大切ですので、「年収が〇〇円あれば4,000万円のローンも大丈夫」と断定することはできません。

ただし、年収を基準とした「年収倍率」を物件価格の参考にすることは有効です。年収倍率とは、家の価格が年収の何倍だったのかを示す数値のこと。

例えば、年収500万円の世帯が4,000万円の家を購入したら、年収倍率は「4,000万円÷500万円=8倍」となります。

住宅金融支援機構の「2017年度 フラット35利用者調査」によれば新築物件の年収倍率は物件の種類によって多少の差はありますが、約7倍となっています。このデータから逆算すると、年収571.4万円であれば4,000万円の物件が購入できることになります。

しかし、同じ年収の世帯が同じ4,000万円の家を購入したとしても、自己資金の多寡や住宅ローンの組み方で毎月の負担や返済までの道のりは変わります。

4,000万円借り入れた場合について複数のパターンをご紹介します。

出典 住宅金融支援機構「2017年度 フラット35利用者調査」

4,000万円の住宅ローン 30代の場合

30代前半で住宅ローンを組めば35年ローンを組んで、漫然と返済しても定年までに住宅ローンが完済できる人も多いでしょう。

しかし30代後半となると、繰上返済をしないと定年までの完済は難しいかもしれません。

そこで世帯主の年齢を中間である35歳とし、「35年ローン」「30年ローン」を組んだ場合について考えていきます。

【前提条件】

借入時年齢 35歳(65歳定年とする)

借入価格 4,000万円

適用金利 1.5%

金利種類 全期間固定金利

ボーナス払い なし

30年ローン 35年ローン
毎月返済額 13.8万円 12.2万円
年間返済額 165.7万円 150万円
定年時(30年後)残高 なし 707.7万円
総返済額 4969.7万円 5143.9万円

千円以下四捨五入(以下同じ)

この条件で30年ローンであれば、漫然と返済していっても定年時(30年後)に住宅ローンが完済できます。

一方35年ローンでは、定年時(30年後)の残高が約708万円です。総返済額でも、30年ローンのほうが約174.2万円小さい金額です。

毎月返済額の負担はやや重くなりますが、「総返済額の安さ」「定年時に住宅ローンが完済できること」を重視するなら30年ローンのほうがお得になります。

しかし30年ローンの毎月の負担が重い世帯では、無理は禁物です。例えば今後15年程度は教育費の負担が重いような家庭が、30年ローンでさらに毎月返済額を増やすのは得策ではありあません。

35年ローンを組む場合は、30年後の段階で約708万円残高が残りますが、その額を返済できる見通しがあればいいのです。

「教育費の負担が終わったら繰上返済資金を準備していく」「退職金が〇〇円なので、そのうち△割を住宅ローンにまわす」など住宅ローンを完済させるプランがあれば問題ありません。

4,000万円の住宅ローン 40代の場合

続いて40代のケースです。住宅購入の主流は30代ですので、ここでは世帯主の年齢を40歳とします。

【前提条件】

借入時年齢 40歳(65歳定年とする)

借入価格 4,000万円

適用金利 1.5%

金利種類 全期間固定金利

ボーナス払い なし

25年ローン 30年ローン
毎月返済額 16万円 13.8万円
年間返済額 192万円 165.7万円
定年時(25年後)残高 なし 797.5万円
総返済額 4799.2万円 4969.7万円

40歳での借入ですので30代の事例より短めの25年・30年ローンでシミュレーションしました。定年時(25年後)の残高は25年ローンだとゼロ、30年ローンでは797.5万円残ります。30代の時と同じく、定年時の住宅ローン残高には留意しなければなりませんが、40代で住宅ローンを組む場合定年までの期間が短い分、老後資金にも注意が必要です。

25年ローンを組み住宅ローンが完済できたとしても、定年後の資金が足りなくては生活が困窮してしまいます。

子供が幼い場合は、教育費も同時に用意していかなければなりません。

40代で子供を授かる夫婦は近年めずらしくなく、子供が大学を卒業するのは世帯主が定年後になる世帯もこれから増えてくるでしょう。

単純に「返済できる額」ではなく、老後の生活費や教育費などの「自己資金を確保しながら返済できる額」を見極めて住宅ローンの返済年数を考えたいですね。

4,000万円の住宅ローンは統計からいうと「高額」な印象

実は4,000万円の住宅ローンは、やや高い借入水準になります。既出の「2017年度 フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)」によると、融資金の2017年度平均は以下の通りです。

【融資額 2017年度全国平均】

・土地付き注文住宅 3448.4万円

・注文住宅 2663.4万円

・建売住宅 2847.1万円

・分譲マンション 3476.2万円

上記の通り、借入額は全ての物件種類において4,000万円を下回っています。これらは全て新築であるため、中古物件の借入水準はさらに低くなります。

やや高い借入水準であることを踏まえると、住宅ローンの返済が苦しい場合にどういった備えや対処法があるかも知っておくべきでしょう。

住宅ローンを楽にするための消極案は、借入額の圧縮です。マンションや分譲住宅であれば物件を見直しますし、注文住宅であれば家の広さを縮小したり、設備のグレードで調節したりします。

夫婦で譲れないポイントを1.2個挙げ、優先順位の低い項目は思い切って除外します。

多少条件で妥協しても、優先順位の高い家が手に入れば、満足度は高いはずです。

なお、借入額を「3,500万円」「3,000万円」としたときの毎月返済額は次のようになります。

【前提条件】

適用金利 1.5%

返済期間 35年間

金利種類 全期間固定金利

ボーナス払い なし

借入額 毎月返済額 総返済額
3,500万円 10.7万円 4500.9万円
3,000万円 9.2万円 3858万円

35年ローンであることを差し引いても、かなり返済の負担が小さくなります。返済計画に不安がある場合、まっさきに考えたいのは価格見直しによる借入額の圧縮となるでしょう。

価格を落とせないなら、稼ぐ力を増強したい

どうしても立地やグレードで妥協できず、借入額が圧縮不可能な場合は、返済力をアップさせることになります。

事例で挙げた30代・40代ケースであれば、ある程度勤続年数があり「年収を大きく増加させるのは難しい」人が多いかもしれません。

その場合は世帯主だけでなく夫婦間で協力して世帯年収を上げたり、働く期間を長くしたりする方法があります。

特に返済までの期間が短い40代では、定年後も継続して働けると心強いです。

とはいえ、単純に定年の遅い会社(=長く働ける会社)がいいわけではありません。

長く働いても、加齢により収入がダウンしてしまっては、結局住宅ローンの返済は苦しくなってしまうかもしれないからです。

生涯年収の面からキャリアプランを構築しましょう。

住宅ローン返済の安全性を高めるには、支出の圧縮も有効です。

いくら長く働けるプランを練っても、健康状態によって働けなくなってしまう事態も考えられます。

経済力のアップだけでなく、支出を見直しして家計面から住宅ローンの返済を楽にする作業も並行して行っていきましょう。

住宅ローンの借入時は長期的な完済プランを見通そう

4,000万円の住宅ローンは借入額が大きいので、完済までの道筋を立てておくことが特に大切です。

「漫然と返済し定年までに返済を終える」「それとも定年時に一括繰上返済をする」「定年後の収入を確保して定年後も返済を続ける」など、複数の方法があります。

もちろん見通し通りに返済が進むとは限りません。

ですが大まかでも返済プランを持っておけば、状況が変わったときに、そのつど対処法を考えることができるはずです。住宅ローンの出口戦略を持ったうえで、借入に臨みましょう。

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