(文・構成=編集部 住宅ローンアドバイザー・山知)
住宅ローンを借りるには大きく2つのルートがあります。
住宅供給事業者と提携している金融機関の住宅ローンで借りる(提携ローン)
自分で探した金融機関の住宅ローンで借りる(非提携ローン)
提携ローンと非提携ローン、それぞれにどんなメリット・デメリットがあって、提携ローンしか検討しなかった場合にはどのように損をする可能性があるのでしょうか?
「提携ローンの金利って本当に一番低いの?」「もっと他に条件の良い住宅ローンがありそうな気がする。自分で確かめてみないと気が済まない」とモヤモヤしていませんか?
人生の一大イベントである住宅購入・・・どうせなら「提携ローン」と「非提携ローン」の違いをしっかり理解して、お得に住宅ローンを借りましょう!
提携ローンと非提携ローンの違い
提携ローンとはハウスメーカーや不動産会社などが金融機関と提携を行い、一般的な住宅ローンよりも有利な条件で貸し出す住宅ローンのことを指します。
提携ローンと非提携ローンの違い | ||
---|---|---|
提携ローン | 非提携ローン | |
金利 | 一般的な金利よりも低金利の場合がある | 全ての金融機関を比較して選ぶ事が可能 |
審査 | 物件に対しての審査が済んでいる事が多いので、比較的審査が早い | 物件と人物に対しての審査が行われるため、提携ローンと比べると時間がかかる事がある |
手数料 | 金融機関に支払う融資事務手数料の他に、ハウスメーカーや不動産会社に払う手数料が発生する場合がある | 金融機関に支払う融資事務手数料が必要 |
手続き | 不動産会社の担当が審査手続き等を行ってくれる | 申し込み手続きを自分で行う必要がある |
ローン特約 | 対象となる | ほとんどの場合対象とならない |
ローン特約とは
ローン特約とは、予定していた条件で住宅ローンの融資が受けられなければ、物件の売買契約を解除できるという特約です。
絶対に提携ローンで借りないといけないの?
全ての物件において、提携ローンだけしか使えないという事は絶対にありません。
不動産会社のアドバイスに耳を傾けながらも、他の条件の良い住宅ローンもご自身で情報収集し比較してみる事が必要です。
提携ローンのメリット
提携ローンは自分で銀行に直接申し込みをする場合よりも、低金利で借りる事ができる可能性があります。
住宅ローンの審査は、人物に対しての審査と物件に対する審査の2つが行われますが、物件に対しての審査が済んでいる事が多く、人物に対しての審査だけで済むため、比較的審査期間が短いというメリットがあります。
また、審査などの申し込み手続きに関しても、ハウスメーカーや不動産会社の担当が一部手続きを代行してくれます。
そして最大のメリットとして、住宅ローンの融資が受けられなければ、物件の売買契約を解除できるローン特約があります。
もし売買契約後に住宅ローン審査に通らなかった場合には、住宅の購入をする事ができません。
売買契約後に購入できないという事は、契約不履行という事になり、手付金の没収や違約金を請求されてしまう可能性もあります。
これらの事からも分かるように確かに提携ローンはメリットが多いです。
しかし、なぜ提携ローンで人任せにしていてはいけないのでしょうか?
提携ローンは事務代行手数料が高い
審査などの申し込み手続き代行は、多忙な人やどうしても面倒な人にはメリットであると言えますが、通常住宅ローンの手続きは自分で行うものです。
また、その名目もローン事務手数料や、事務手数料、ローン斡旋手数料と、金融機関に支払う融資事務手数料と混同するような名称にしてある事があり、混乱しやすいです。
さらに代行手数料が非常に高く、金額の相場は10万円程度が最多です。
例えば、事前審査〜融資実行までにかかる全ての手続きの工数を、多めに見積もって24時間かかったとします(実際はそんなにかかりません)
代行手数料に10万円かかるとして、時給換算すると4,000円という計算になってします。
これを自分で手続きすればムダなキャッシュアウトをしないで済みますね。
提携ローンの金利が最安とは限らない
販売業者は教えてくれませんが、提携ローンの金利が最も低いとは限りません。
ひと昔前は、提携ローンといえば最優遇金利でしたが、現在は他にも安い住宅ローンが増えています。
販売業者も「こちらの住宅ローンの方がお得です!どうなさいますか?」と提携金融機関以外の住宅ローンをおすすめしたりはしません。

住宅関連会社は、あなたが住宅ローンを返済していけるか?という事は実はどうでも良くて、住宅ローン審査に通るかを重要と考えています。
提携ローンは契約者側にもメリットは有りますので、この事自体は決して悪い事ではないのですが、ここで思考を停止してしまい提携ローン一択としてしまうと、他の条件の良い住宅ローンを見過ごし大きな損をしてしまう可能性があるという事です。
人生で住宅のような大きな買い物は、1度か2度で、そうそうある機会ではないと思います。
そのため、どうしても契約者側の知識量が圧倒的に少ない状態で話が進んで行きますので、住宅関連会社が節度のない利益追求に走るような道徳的危険が起こりやすい状況でもあります。
面倒なのでとりあえず提携ローンで借りて、後々借り換えをすれば良いと思うかもしれませんが、借り換えにもそれなりの手間と安くはない手数料が発生します。
金利が0.1%違うだけでこれだけ差が出る
金利0.7%時と、0.8%時の毎月返済額、総返済額の概算を求めてみると以下のようなシミュレーション結果になりました。
金利や借入期間、借入額によって異なりますが、0.1%の違いでこれだけ差が出てしまうのですから、金利がいかに大切かお分かりいただけるかと思います。
金利が低ければ、それだけ借入可能額が増えたり、返済負担を下げる事ができます。
借入条件
借入額:3000万円
返済期間:35年
返済方法:元利均等返済
ボーナス返済:なし
金利0.7%
毎月返済額 ¥80,550 総返済額:¥33,831,000
金利0.8%
毎月返済額 ¥81,930 総返済額:¥34,410,600
不適切なセールストークに注意
住宅金融支援機構が実施した「利用した住宅ローンを選んだ決め手になったのは?」という調査では、1位:金利が低こと に次いで、2位:住宅・販売事業者(営業マン)に勧められたからという結果が出ています。
利用した住宅ローンを選んだ決め手になったのは? | ||
---|---|---|
1位 | 金利が低いこと | 69.7% |
2位 | 住宅販売業者(営業マン)に勧められたから | 24.1% |
3位 | 諸費用(融資手数料、団体信用生命保険特約料が)が安かったこと | 16.0% |
4位 | 将来金利が上昇する可能性があるので、将来の返済額をあらかじめ確定しておきたかったから | 14.5% |
5位 | 保証料が安かったこと | 12.9% |
この調査結果を見ると、住宅供給事業者の勧めが決め手になっていることが多いと考えられますが、全てが優良な事業者というわけではないです。
住宅ローンの商品性リスクや、金利上昇リスクに対する説明責任は金融機関側にあると考え、不適切なセールストークや紹介を行う事業者もあります。
悪いセールストークやあっせんの事例
メリットのみを強調して早期申し込みを迫る
借入条件などは気にせず、融資実行が早く融資率100%の住宅ローンを紹介
住宅ローン借入希望者の収入状況等を考慮しないまま紹介
借入希望者の要望に応じず、提携ローンのみを紹介
提携以外の住宅ローンを探す方法
提携ローンで審査を通しておいて、他の有利な住宅ローンを自分で探すのがベストな選択といえます。
もしも他の有利な条件の銀行の審査に通ったら、金利の引き下げ交渉をできる可能性もありますので、全ての金融機関を対象に条件の良い住宅ローンを徹底的に探してみましょう。
ただし、金融機関によって審査基準や金利、サービスはさまざまです。
例えば、保証料はかからないが手数料が高額であったり、金利は低いが審査が厳しかったり等、業態ごとの傾向があります。
業態別住宅ローンの傾向 | ||||
---|---|---|---|---|
業態 | 金利 | 審査金利 | 保証料 | 手数料 |
メガバンク | 低め | 3.1〜4%程度 | 必要 | 事務手数料 |
地方銀行 | 低め | 3.5〜4%程度 | 必要 | 事務手数料 |
ネット銀行 | 低い | 3.5%程度 | 不要 | 事務手数料(融資金額の◯%など) |
信用金庫・労働金庫 | 普通 | 適用金利で審査 | 必要 | 事務手数料 担保取扱手数料 |
1.比較サイトなどを利用する
今はネットにこれだけ情報が溢れている時代です。
信頼できる比較サイトなどを利用し金利と諸費用など条件の良い商品を探してみます。
ここで「信頼できるサイトで探す」というのがポイントで、比較サイトの中には紹介報酬目当ての偏った情報を多く載せた比較サイトもありますので注意が必要です。
調べる際には、金利の低いものからチェックをしていくようにしますが、金利だけに注目するのではなく、保証料の有無や手数料等の諸費用も確認して総合的に判断をするようにしましょう。
いくら金利が低かったとしても保証料や、事務手数料他の諸費用が高ければ意味がありませんので、必ずトータルコストで判断するようにしましょう。
もしかすると、「提携ローンが一番条件が良かった」という事にもなるかもしれません。
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2.利用条件を確認する
いくつか条件の良い住宅ローンをピックアップしたら、その商品の住宅ローン商品概要説明書を確認し、詳細な利用条件等を確認してみましょう。
商品概要説明書とは、年齢や年収などの利用条件に加え、保証料の有無や、手数料はいくらか、担保等の条件が記載されたものです。


各銀行のホームページでPDF形式などで公開されていますので、確認をしてみましょう。
3.事前審査に申し込む
提携ローンは一般的に審査が早いと言われていますが、現在銀行各社では顧客争奪戦が繰り広げられています。
審査に多くの時間を費やし顧客獲得の機会を逃してしまうのは、企業にとって大きな痛手になりますので、各社、審査にAI(人工知能)やRPA(機械学習)などを導入しながら、審査回答までの期間短縮に力を入れています。
早い金融機関では、即日事前審査の回答が出る場合もあります。
また、非提携ローンは、ハウスメーカーや不動産会社の手続きサポートが受けらず、自分で続きを進めなければいけないため不安に思うかもしれませんが、
金融機関側がしっかりとサポートをしてくれますので、特に難しい事や、不安に思う事はありません。
申し込み手続きも金融機関に一度も足を運ばずにネットで手続きが全て完結する金融機関も増えて来ています。
ぜひ、ご自身で条件の良い住宅ローンを探してみましょう。
まとめ:自分で探すとおトクな住宅ローンが見つかるかもしれない
提携ローンの金利が最安とは限りません。
提携以外の条件の良い住宅ローンを自分で探してみたいという人は、まずは比較サイトなでどで条件の良い住宅ローンを探してみましょう。
その結果、提携ローンの条件が一番良ければ、そのまま迷わずに提携ローンを利用すれば良いでしょう。
もし、他に好条件の住宅ローンが見つかりそうなら、取扱い金融機関のHPで商品概要説明書を確認し、まずは事前審査に申し込んでみましょう。


不動産会社の営業トークに惑わされることなく、大切な家族を自分で守れる人になれますように。
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住宅ローンアドバイザー
借りれる額よりも、返せる額という視点でのアドバイスをモットーとしています。趣味はギターと食べ歩き。ディズニーとテクノロジー好きの30代。無料住宅ローン相談や、寄稿も行っています。得意分野はFintech関連。詳しいプロフィールはこちら